no.12
「うん――まさかそこまでするとは思ってなかったんだけど……
もし、嫌だったらここで終わりにしよう。
井上さんに危害があったら困るし。
私のことは『振った』って事にすればいい。
そうすれば多分大丈夫だと思うから」
「いいえ! 」
アタシは彼の提案を即座に却下した。
篤武さんは驚きの表情を浮かべる。
「そんなことで怖気づくようなアタシじゃありません!
アタシは篤武さんのことが好きなんです。
好きな人が困ってるのに、知らん振りなんかできないです!! 」
――あ――
アタシ、今勢いに任せて、何かとんでもないことを言ったような気がする。
だってほら、篤武さんが驚いた表情のまま固まってるし。
「えーと、つまり。
井上さんは俺のこと、恋愛対象で見てるって事? 」
篤武さんは頭の中を整理するように、アタシに質問する。
「はい。好きなんです」
アタシははっきりと言った。
でも、告白するときって、こんなもんなのかな?
もっと、素敵なシチュエーションで、とか思ったりしてたけど、実際はテンパってるし、
全然素敵じゃない。
てか、これじゃ勢い任せだよね……。
アタシ、頭わる……。
「俺、井上さんが思ってるほどいい奴じゃないよ。
歳だって、かなり離れてるし」
篤武さんは頭をがりがりと掻きながら言う。
「歳の差なんて、そんなの全然気にしないです!
篤武さんは、アタシの事嫌いなんですか? 」
篤武さんはアタシの目をまっすぐに見て言う。
「いや、嫌いじゃないよ」
「なら!
なら、アタシと付き合ってください!
それからちゃんと付き合うか、付き合わないかを決めたっていいじゃないですか!
婚約者との話も無くなるだろうし、アタシはそれで全然かまわないです!! 」
アタシはもう自分で自分の暴走を止めることが出来なかった。
でも、もうそれでもいいと思った。
自分が納得できればそれでいい。
何も言えないまま終わってしまう恋ほど、くだらないものなんてないもの。
篤武さんはしばらく黙ったままだった。
呆れているのかもしれない。
コウコウセイの戯言だと思っているのかもしれない。
アタシはまるで刑を言い渡される囚人のような気持ちで、彼の言葉を待った。




