表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

no.12

「うん――まさかそこまでするとは思ってなかったんだけど……

もし、嫌だったらここで終わりにしよう。

井上さんに危害があったら困るし。

私のことは『振った』って事にすればいい。

そうすれば多分大丈夫だと思うから」

「いいえ! 」

 アタシは彼の提案を即座に却下した。

 篤武さんは驚きの表情を浮かべる。


「そんなことで怖気づくようなアタシじゃありません!

アタシは篤武さんのことが好きなんです。

好きな人が困ってるのに、知らん振りなんかできないです!! 」


――あ――


 アタシ、今勢いに任せて、何かとんでもないことを言ったような気がする。

 だってほら、篤武さんが驚いた表情のまま固まってるし。


「えーと、つまり。

井上さんは俺のこと、恋愛対象で見てるって事? 」

 篤武さんは頭の中を整理するように、アタシに質問する。


「はい。好きなんです」


 アタシははっきりと言った。

 でも、告白するときって、こんなもんなのかな?

 もっと、素敵なシチュエーションで、とか思ったりしてたけど、実際はテンパってるし、

 全然素敵じゃない。

 てか、これじゃ勢い任せだよね……。


 アタシ、頭わる……。


「俺、井上さんが思ってるほどいい奴じゃないよ。

歳だって、かなり離れてるし」

 篤武さんは頭をがりがりと掻きながら言う。

「歳の差なんて、そんなの全然気にしないです!

篤武さんは、アタシの事嫌いなんですか? 」

 篤武さんはアタシの目をまっすぐに見て言う。

「いや、嫌いじゃないよ」

「なら!

なら、アタシと付き合ってください!

それからちゃんと付き合うか、付き合わないかを決めたっていいじゃないですか!

婚約者との話も無くなるだろうし、アタシはそれで全然かまわないです!! 」


 アタシはもう自分で自分の暴走を止めることが出来なかった。

 でも、もうそれでもいいと思った。


 自分が納得できればそれでいい。


 何も言えないまま終わってしまう恋ほど、くだらないものなんてないもの。

 

 篤武さんはしばらく黙ったままだった。


 呆れているのかもしれない。

 コウコウセイの戯言だと思っているのかもしれない。


 アタシはまるで刑を言い渡される囚人のような気持ちで、彼の言葉を待った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ