no.1
アタシは頭を抱えて、問題集とにらめっこする。
全然わかんない。
アタシはシャーペンをくるくると回して、出来もしない問題と格闘する。
毎週日曜日に、アタシは県立図書館に来るようになった。
別に勉強が好きで来てるわけじゃない。
大体にして、アタシは勉強は嫌いだ。
問題を見ていると、途端に頭が痛くなるほど嫌い。
でも、
アタシは毎週日曜日に、大嫌いな勉強をする為、図書館に来る。
それは、アタシの愛する彼――篤武に会うため。
アタシは篤武の横顔を、うっとりと眺めた。
――かっこいい――
さらさらの髪、少し切れ長の目、すっきりと整った顔立ち。
アタシの好みにドンピシャの篤武。
無理やり付き合うことになったけど、
篤武はアタシのこと、どう思ってるのかな?
毎週日曜日、せっかくのお休みの日。
なのに、アタシの赤点のせいで、デートは『勉強会』になってしまった。
アタシがもうちょっと頭よかったらな。
そう思っていたときだった、
「こら、何やってんだ。
さっきから10分も経つのに、何にも進んでないじゃないか」
こつん、と彼の手で小突かれた。
アタシは彼が触れたところをそっと手で押さえ抗議した。
「だって――全然わかんないんだもん」
アタシは上目遣いで篤武を見る。
大概のオトコなら、アタシのこの上目遣いで思い通りになる。
でも――
「どこが解らないんだ? 」
アタシの上目遣い攻撃も、篤武には全く効かない。
あっさり無視されるのはいつものことだけど、
やっぱりアタシの小さなプライドに、ちょっとした引っ掻き傷を付ける。
「どこが解らないかが、わかんないんだけど……」
アタシは口を尖がらせて、もごもごと言った。
篤武はふっと笑って、新しい参考書をアタシの前に出した。
「じゃあ、とりあえず、これやってみろ」
見ると『ばっちり解る きらきら中学英語―基礎編―』と書いてある。
「ちょっと! アタシ、コウコウセイなんですけど?! 」
アタシは抗議した。
だって、中学英語なんて――ばかにしてるとしか思えない!
「お前、分かってないな。
どこで躓いてるかわかんないってことは、基礎がちゃんと出来てないからだ。
とりあえず、この一冊をがんばってみろ。
これが終わったら、次もあるからな」
篤武は鞄をぽんぽんと叩いて、にやりと笑った。
くっ!
ずるい!!
あんな顔するなんて!
馬鹿にされてるのは分かってる。
分かってるけど、やっぱアタシは篤武が好きで、
彼の人を小ばかにしたあの表情でさえ、
アタシの胸をどきどきさせるには十分だった。
「わ、わかったよ。
見てなさい! こんな問題集すぐ片付けてやるんだから!! 」
アタシは問題集のページをめくる。
篤武は、アタシが問題に取り掛かるのを確認すると、
何か難しそうな小説を読み始めた。