4.俺より王太子っぽくないか?
「これは、どういうことですか」
王宮の一室で二人っきりになった瞬間に、『俺』に入ったルティナは不機嫌そうに話す。
ふふふ、俺の変貌に驚いたことだろう!!
「美しいだろう!俺にかかればこんなもんだ!!」
「私の縦ロールを奪うなんて……化粧もこんな薄くして…」
「お前に昔言った言葉は、昔のことだ!!今の俺はこういうのが好みなんだよ!よく覚えておくんだな!!」
くっと黙ったルティナを見て気分が良くなる。
俺がこの身体に居る以上は縦ロールは封印されたと思うのだな!!
「それに…この未処理の書類は…。全く、期限が今日までのものばかりじゃないですか。ああ、もう全てかしてください」
昨日の書類を全て取り上げられて、一瞬で処理していくルティナを見て…
上がった気持ちがへこんでいく…
こいつ…
俺より王太子っぽくないか…──?
「これからは私が全て処理します。そう文官にも伝えましょう。殿下は微笑んでお茶でも啜っててください」
戦力外通告をされ、いつもなら喜べるはずなのに…
何だかむっとしてしまう。
「お、俺だって手伝える!!」
普段なら絶対に言わないセリフにルティナが目を丸くする。
そしてふっと微笑む──
「そのお気持ちだけ頂いておきます。手伝いたいのなら、殿下はもっと色々学ばなければなりませんね」
「な…!!俺だって家庭教師に色々教わってるぞ!」
「実になっておりません。わかりました。この機会に色々お教えしましょう」
そう言ってルティナが近づいてくる。
ああ、『俺』はこんな表情もできるのか…
妖しく微笑む美青年な『俺』の顔が近づいてくる──
「色々─…ね─」
ちゅっと口付けされて、真っ赤になってしまう。
こいつ…女のくせに…何故こんなに色気が漏れてるのだ!!!
「俺の身体で変なことするな──っ!!」
「変なこととは、心外ですね。夫婦となるのですから今から慣れておかないと」
「お前とは絶対に元に戻って婚約破棄してやるからな!!」
「ふふ。それは楽しみですね──」
不適に微笑む『俺』に入ったルティナに何故か負けたような気持ちになる。
いいや、決して諦めない──
ルティナと元通りになって…俺はセルーデと結ばれてみせる!!
そ、そう言えばセルーデはあの後どうなったのだろうか…
内密に調べて誤解を解かなければ…
今頃不安で泣いているかもしれない愛しい人…
俺の天使はセルーデだ…!!決して目の前の悪女ではない!!
必死に心の中に入ってこようとするルティナを追い出すのであった。