1.プロローグ
「お前のような悪女とは婚約できない!婚約破棄だっ!」
目の前には婚約者であったルティナ・ケイティーン公爵令嬢がぽかんとした表情でこちらを見つめていた。
ハーディス王国王太子であるこの俺、ディアス・ハーディスは卒業パーティーで婚約者である悪女ルティナを断罪し、横に居る天使、セルーデ・ノイトン男爵令嬢と婚約するのだ!
セルーデは可憐で優しく天使だ。
そのセルーデを蔑み、虐め、殺人未遂までしたこの悪女であるルティナ・ケイティーンを一刻でも早く排除したい思いであった。
「待ってくださいませ、殿下!!」
そう言ってルティナが私の腕を掴む。
往生際の悪い悪女だ。
その手を振り払おうとした時、バランスを崩し
俺とルティナは台座より転げ落ちる
ふ…不敬罪で処刑してやる──!!!
痛みを感じつつ、目を開け立ち上がろうとした瞬間
自分の身体に違和感を感じる──。
は─…?
なんだ、この圧迫感…。
きつく締め付けられる衣装に甘い香水の香り
そしてどぎつい縦ロールの髪─…
「は…──?」
自分の置かれている状況が呑み込めずにいると、隣で一緒に台座から落ちたはずであるルティナがすくっと立ち上がり俺に跪く。
「先程の婚約破棄を撤回します。私、ディアス・ハーディスは婚約者であるルティナ・ケイティーン公爵令嬢を生涯をかけて愛しぬくと誓おう──」
そう言って俺の手の甲に誓いの口付けを落とす。
その姿は
王太子である…ディアス・ハーディスであった。
「は───っ!!???」
高貴な身分である王族の俺は…この日
悪女であるルティナ・ケイティーン公爵令嬢と
入れ替わってしまったのだった──