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刀子月譚  作者: どるき
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ニュービー

「おほん。そろそろ本題に入ってもいいですか? 神官長」


 事情を説明してもらったのでもういいだろうとサカマキは咳払いをした。

 こういう行動は教官を名乗るだけあって先生らしい。


「そうだったなサカマキくん」

「では早速……修練場に集まっている諸君! 神官団から知らせがある!」


 マイクのようなものをサカマキが手にもって語りかけると、皆が手を止めてこちらを注目し始めた。まるで全員に声が聞こえているかのようだ。


「本日、二十日ぶりに新しい転生者が濁拷会に入り序列登録を行う意思表示を示した。よって講習会を明日から一週間開催する。序列下位の駆け出しや序列志願者(アマチュア)はもちろんの事、中級以上のメンバーも基礎のおさらいとして気兼ねなく参加してほしい。特にカーマ六位! 卿は必ず参加するように」


 サカマキの連絡が終わると周囲はざわつき、どうやら講習会について参加するかを仲間内で相談しているようだ。

 続けてマイクらしきものを袖の下に収納したサカマキはこめかみを指で擦りながら話を続ける。

 なにか言いにくい事でもあるのだろうか?


「最後に……諸々の手解きは明日からの講習会でするとして、今日はこれから貴女が生活する家を探してもらいたい。男だったら問答無用で三階の合同宿舎に入ってもらうのだが、あそこに女性一人でと言うのはお勧めできない。四階の神官団宿舎なら個室なので心配はないが、そちらはルールとして神官見習いでなければ入れるわけにはいかんのだよ」

「まあひとまずは四階の空き部屋に仮住まいでも良いではないですかな。男臭い三階には女の子は似合いませんよ」

「しかし女性だから気を使うのと特別扱いは違いますよ。そこの線引きは間違えてはいけません」

「あの……神官見習いというのは普通のギルドメンバーとは違うのですか?」

「神官とは八柱神に仕える為に人間のしがらみを捨てて初めてなれる存在だ。貴女が神官になりたいと志すのは自由だが、神殿勤めの見習いになるだけでも一筋縄ではいかないんだ。だからこそ貴女を特別扱いもできない」

「なるほど」

「ゲイリーとアスホルトがいれば三階でも問題ないのだが、ちょうどあの二人が遠征中とは間が悪い。とにかく支払いエーテルは神官団で立て替えるからこの近くで宿を探しなさい。イッチ! ちょうど良いから卿は彼女を案内しなさい」

「わかりました」

「それではトーコさん……明日からの講習会には私は参加しませんが、サカマキくんにしっかり鍛えてもらいなさい」

「講習会は朝の九時からここで行う。ノートとペンと眼鏡も必要だから、その準備はイッチに任せる。しっかりエスコートしてみなさい」


 用件を伝え終えた神官長とサカマキは踵を返して去っていき、修練場にはボクとイッチ、それにキブが残された。

 決闘の様子を見ていたギルドメンバーの何人かはボクに興味をもって話しかけてきたので色々と自己紹介や情報交換をしてみたが、濁拷会には思ったよりも様々な人々が身を寄せているようだ。

 ボクのような異世界からの転生者はもちろんとして、近隣の村や街から魔物や剣邪を倒して名を上げようと功名心から立ち上がったお伽噺における冒険者とでも言うべき者、魔物に大切な人を殺されたりそれに近い辛い経験から戦いを選んだ復讐者、八柱神信仰の延長として神の敵と戦う使徒や神官見習い、そして戦う力はないが思いを同じにして裏方仕事をしている弱き者たち。

 漠然とお伽噺の世界だと思っていたボクとしても、その認識は甘いのだろうなと彼らとの触れ合いで肌で感じ取った。

 イッチのおかげで諸々の下準備を整えたボクはパブで夕飯を食べて素泊まりの格安ホテル「ニュービー」で一夜を過ごした。

 新参者とはなかなかに洒落た宿だと思いつつ、冷や水を一杯引っ掻けてから眠りにつく。

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