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刀子月譚  作者: どるき
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ザクの杖術

 昼食後、カーマから教えてもらったザクの戦闘スタイルはたしかに凄まじいモノだった。

 あの人が天才を自負して二面性のある人格になったのも納得がいく。

 だがその子細を説明するのは戦いの最中に取っておくとして、時間を一気に決闘直前まで飛ばそう。


「それでは午後一時、これから決闘を開始します。準備はよろしいかな?」

「「エイサー」」


 まずは今回の決闘における取り決めのおさらいだ。

 使う武器は木刀、木剣、杖などの刃物を持たない武器に限る。

 これは決闘で取り返しのつかない怪我をしては一大事ということで、よほどの事がなければ標準(デフォルト)教典(ルール)として濁拷会教典にも定められているものだ。

 一本勝負で相手の気絶あるいはギブアップが一本の条件なのでこれも標準教典のまま。

 標準教典と異なる点は「魔法を使用禁止とし、審判が魔法を使ったと判断した時点で失格負け」という点だ。

 ボクはもとより魔法を習得していないので関係ないがザクは神官として一通りメジャーどころは習得しているのでいわゆるハンデ。なのだが彼の戦闘スタイルとしてはボクと同様に今回においては意味をほとんどなさない縛りであろう。


「胸をお借りします」

「よろしい。キミがそこまで私の力を体験したいというのなら、こちらも手加減しませんよ」


 今回ボクが選んだ装備はシンプルな木刀一振り。

 対するザクはボクの木刀より拳二つほど長い杖なのだが、これは彼が普段から使っている愛用品なので獲物はボクがやや不利か。

 ボクが正眼に構えるとザクも同じ構えをとり、ボクらは一刀足の間合いで向き合った。

 いつでも始めてかまわないのだが、まるで「ボクが腕試しでザクに挑むために影打を隠している」という態度はなんだかもどかしい。


「では……決闘(デュアハ)開始(スタート)!」


 今回は片方が高位神官と言うのもあり、審判は恐れ多くもマラガス神官長だ。

 カーマから「ザクは初見の相手には十中八九見から入る」と教えてもらっているので先制はボクからだ。

 剣術では先に相手を動かしてから返し技を決める、いわゆる後の先が強い。

 あえてそのセオリーを破るからには───


①相手に反撃させない。

②返し技の返し技を決める。


 このどちらかが必要だ。

 さすがにザクは演劇の斬られ役のように一方的に薙ぎ倒せる相手ではないので、①の方法は難しい。

 かといって②も初手からやるのはだいぶリスキー。

 ではどうするか?


「せい!」


 答えは③、「返しにくい攻撃で畳み掛ける」だ。

 振り下ろすよりも速い喉元への突きでボクは間合いを詰めた。

 ザクも当たり前に杖で弾くが、突きの利点はそこから反撃に転じるのが難しい点。何度もやれば見切られるであろうが、そのぶん先手にはもってこいと言うわけだ。

 カン! カカン! と、ボクの連続突きを弾く乾いた音が綺麗に鳴った。

 そろそろ四回連続では「ザクの戦法」を踏まえれば見切られているだろうと想定し、ボクは右足を一歩引く。


「にっ!」


 ザクの方はボクの突きを想定通り見切ったのだろう。

 三発目の突きを弾いた時点で右足を踏み込んでいたので、そのまま体重を前に落としながらボクのお腹に肘を入れる。

 だがボクは前述の通り突きのあと一歩下がっていたのでこれは空振りだ。

 そのままザクが左手で杖を突き立てて来ないよう、殴るように木刀を落とすと彼も下がって仕切り直し。

 ボクとしては腕を押さえてそのまま押し切りたかったが、さすがは教導武神官様。一筋縄では行かないのも当然か。


「(さて……次は彼から仕掛けてくる。どんなアレンジを入れてくるか先を読むんだ)」


 ここでザクの戦闘スタイルをネタバラシ。

 彼が天才と言われる由縁は類い稀なる学習能力にあった。

 相手の動きを見切り、模倣し、アレンジを加え、対策法まで考える。十の手本を十一や十二にして上回ってやり返すのが彼のやり口だ。


「せい!」


 掛け声まで真似てきたザクの突き。

 獲物がボクよりも長いので一歩遠い間合いから喉を狙う先端を弾いてとりあえずのガード。

 さきほどの攻防を攻守入れ替えた状態なので、ザクが動くのも恐らく次か。

 ボクが三度目の突きを弾くと、ザクは左手を離して手首を捻る。

 杖は刃がついていない代わりに「突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀」と言われる万能の武器だ。

 坂巻もそうだが武神官がこれを愛用するのはエーテルによる攻撃力補強を考えれば利にかなっているのだろう。

 手首を捻ったことで柄がボクを向いたところで左手で杖の中間を持ち右手を離せば、たちまち太刀は手槍に早変わり。

 そのままボクを突くつもりか。

 だがボクはあえてさきほどザクが使った肘打ちに移行していた。ザクからしたらしめしめとほくそ笑むのを百も承知で。

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