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9. 28-Dec.

*登場人物*

アンガス…主人公の少年

アル(アルフレッド)…アンガスの友人の大学生

レオ…ストリートギャングのボス

チャド…売春宿の主人

マリア…アルの彼女

ジム…アルのルームメイト

ビリー・マックス…アンガスのストリートキッズ仲間

JJ…レオのボスである叔父

 取引は、ロンドン郊外の工業地区の倉庫で夕方に行われる。

 その倉庫はしばらく使われておらず、敷地内は雑草が生い茂っていた。日曜日と言うこともあり、人影もまばらで、車の往来すらない状況だった。その倉庫から少し離れた高台に一台のレンタカーが駐車している。木々が車を隠していた。少し開かれた車の窓から丸いレンズが覗いている。

「ベストポジションだな。ここからだとあのでっかい倉庫の窓から中の様子が分かるし、昨日、下見に来てよかったぜ」

 ジムは望遠レンズ付きのカメラのファインダーから倉庫の中の様子を覗いている。木々の隙間から倉庫の様子がよく見えた。使われていない倉庫の割には、人相の悪そうな人間達が出入りしており、ジムは自分の情報にさらに自信を持った。

「なぁ、おかしくないか?」

 助手席のアルフレッドが覗いていた双眼鏡から顔をあげ、ジムに言った。

「どうして警察がきてないんだ?」

「こういった場合は、隠れていて、決定的瞬間に登場するものなんだよ」

「そうか…」

 確かに隣の工場やところどころに建てられたプレハブ小屋には人が隠れられそうなポイントではあった。

 アルフレッドはまた双眼鏡を覗き、真実を探していた。

 これが自分の知りたい真実は異なることはわかっていた。

 でも、なぜか、何かに導かれるように来てしまった。

 アルフレッドの瞼の奥には、雪の中に消えたアンガスの後姿が未だに残っていた。


 その倉庫に2台の車が向かっていた。先頭を行く車にはレオがボディガードとして選んだ男

が3人。いずれもアンガスの知らない顔ぶれだった。アンガスを襲おうとしたのは、よっぽどの下っ端だったのだろうか。その3人はひどく大人で落ち着いて見えた。そして、その後を追うように走る車にはレオとアンガスが乗っていた。運転するレオは助手席のアンガスをちらりと見て、聞いた。

「アンガス。本当にいいのか?」

 車に乗ってからでも、3回目の確認である。

「レオがやめないなら、仕方無いだろう?」

「俺は、JJが決めたことに逆らえないんだ…。でも、アンガスが来ることはない」

「もう遅いよ。こんなところまで来て、まだそんなことを言っているのか?それに悪いが俺は先頭を走っている奴らより強いよ」

 昨夜、JJと別れた後、さんざん話した結果だった。

 アンガスはこの取引をなんとか止めさせようとレオを説得しようとした。あまりにも危険で、違和感を拭えなかった。

 チャドが殺された時、アンガスはあることに気づいた。チャドのオフィスの新聞や雑誌だった。そのオフィスが散らかっているのはいつものことだったが、その雑誌や新聞の内容が偏っていたのだ。企業家のギルバード・バローの記事が目立っていた。だから、昨夜、JJにカマをかけた。今回の取引の大物スポンサーは企業家のギルバートだろう。チャリティや慈善活動で世間の目を誤魔化しているが、何かときな臭い人物と有名である。そして、彼らがさらに知られることを恐れたのは、「その先」にいる大物政治家、トム・R・マクガイアである。これもギルバード・バローの記事に混ざり、チャドのオフィスにばら撒かれていた。アンガスは昨日のやり取りで、ギルバード・バローとトム・R・マクガイアが今回の黒幕であることを確信した。

 チャドはチャイニーズマフィアとの縁が深い。もしかしたら、その線で、チャドが今回の取引を知ったとしてもおかしくはない。チャドは有能な情報屋だった。JJとギルバート・バローの繋がりを掴んだのだろう。そして、その秘密を知ったチャドはギルバート・バローの殺し屋に殺され、証拠隠滅のためにオフィスが放火されたのだ。情報屋としても有能だったチャドはその有能さゆえに殺されたようなものだ。アンガスはチャドに連絡を入れなかった事を悔やんだ。チャドを殺したのは、ある意味、こちら側の人間なのだ。これだけの取引を警察が尻尾つかんでいるかどうかわからないが、もし掴んだとしても大物政治家トム・R・マクガイアが捻りつぶすだろう。

 腑に落ちないのは、これだけ今日の取引の情報が流れているにもかかわらず、取引をしようとするJJの意図だ。政治家が警察を抑え込んでいるにしても、チャイニーズマフィアの動向も気になる。確たる理由などないが、どうも腑に落ちない。だから、アンガスはこの取引に乗り気ではなかった。

 そして、アンガスは自分の膝の上に乗った薄めのサラミックケースを見下ろした。自分の手首とセラミックケースは手錠でつながれている。この中には、総額200万ポンド相当の10カラット前後のダイヤモンドが数個入っているらしい。ここに来る途中で直接JJからレオに渡されたのだ。アンガスは中を見ていない。鍵を持っているのもダイヤルナンバーを知っているのもレオだけだ。相手先はもちろん鑑定士を呼んでいるはずである。ダイヤモンドなら持ち運びやすく、現金化しやすいのだ。

 太陽は徐々に沈み始めていた。

 先頭の車両に続き、レオの運転する車も倉庫に入った。待ち合わせ時間きっかりの5時である。先方は先に到着しているようである。南米系の顔をした見張り役が倉庫の傍に数人立っている。レオとレオの仲間と3人が車から降りると倉庫に向かった。


 その様子を、車の中から、ジムとアルフレッドは見下ろしていた。

「あれは、ソーホーで俺を襲ったやつだ!」

「アンガス…?」

 車から出てくる男たちの一人にアルフレッドは目が釘付けになった。


 使われなくなった木製のコンテナが所狭しと並べられ、倉庫の中は狭く感じられた。高い位置にある薄汚れた窓から西日が差しこみ、宙の舞う埃を浮かび上がらせていた。その中央部分にわざと作ったようなスペースがあり、工場の事務所から持ち込まれたような古いデスクが二つ並べられていた。そのすぐ脇で、折りたたみ椅子に座っていた一人の男が、レオ達を見つけ、立ち上がるとにこやかに挨拶をした。

「やあ。レオ。何日ぶりかな?」

 スペイン語訛りの英語だった。30歳前後の男は、浅黒い肌で黒い革のスーツを身につけ、後ろに4人のボディガードと、鑑定士らしい中年の男を従えている。

「やあ。アントニオ。5日ぶりじゃないかな?」

 二人は握手を交わし、いくつかどうでもいい話をしてから、アントニオの方から本題に入った。

「さて、と」

 そう言って、アントニオが顎で後ろに控えている男たちに指示すると、両脇の男たちは、それぞれ50KG相当のトランクをデスクに乗せた。2つのトランクの蓋が開かれる。

 1KGずつ袋詰めされたコカインがそれぞれのトランクに50袋ずつ入っている。

「サンプルで確かめたと思うが、かなりの上物だ。遠慮なく味見してくれ」

 レオは、トランクの中の袋を一つ取り出し、慎重に破った。そして、デスクの埃を払うと、その白い粉でデスクに白い線を描き、鼻で一気にすすった。しばらく目をつむり、パッと目を見開いた。

「だろ?」

 アントニオはにやりと笑う。

 それから、レオはアンガスの方に向いた。アンガスは黙って、ケースの手錠を外すと、レオの前に置いた。レオはジャケットの内ポケットから小さな鍵を取り出し、差しこむとカチッと小さな音をたてた。それからダイヤルを右と左に数回回したのち、ケースが開いた。中には10個のダイヤモンドの裸石が黒いベルベッドの肌の上で輝いていた。

 後ろに下がっていた中年の鑑定士らしき男が前に進み出ると手袋をした手で恭しくダイヤモンドを持ち上げ、ルーペを覗き込んで西日の光で鑑定している。

 しばらく沈黙が続いた。

 鑑定士の男は、ダイヤモンドを元に戻すと、アントニオの耳元で何かを囁いた。

 その瞬間、アントニオの眼光が鋭くなり、ジャケットに手を突っ込んだかと思うと、レオに銃口を向けた。それに倣うようにアントニオの手下はレオ達に、レオの手下はアントニオ達にお互い銃口を向け合う。

 アンガスもまた条件反射でアントニオに銃口を向けていたが、レオだけが銃を構えることもなく、呆然とアントニオに聞いた。

「どういうことだ?」

「それはこっちのセリフだ」

 アントニオはレオに冷たく言ったものの、レオがあまりにも無防備にこちらを見ているので、少し戸惑っているようだ。

 ダイヤモンドは偽物だったということだ。

 アンガスは悪い予感が当たり、横目でチラリとレオをみて、苦々しく言った。

「俺たちは、どうやらはめられた様だ…」

「嘘だ!」

 レオが唇を噛みしめている。アントニオは追い打ちをかけるようにレオに言い放った。

「JJか…。食わせ者だったな。恐らくここはヤツに包囲されているだろう。レオ。お前はどうやら、捨て駒だったらしいな」

 アントニオが諦めたように呟くと同時に、まわりから足音が一斉に響きわたった。軍隊のような訓練された動きだった。一部は後ろのドアから入り入口を塞ぎ、一部はガラス戸を割って木製のコンテナの上から自分たちに銃口を突き付けていた。全部で10人程度だが、統一した黒の戦闘服にサブマシンガンが相手では戦う意欲も失われてしまう。

 これだけの準備をしていたとなれば、いつ秘密が取引相手にばれるか知れない。だから、JJは取引を延期するわけにはいかなかったのだ。

 アントニオはレオに銃口を向けたまま、苦々しく言った。

「ここで、お前を人質にしても、俺らは助からないということだな…。JJの言葉にうまくだまされたよ。起死回生をはかり、危険を承知で大西洋を越え、100KGのコカインを持ちこんだ結果がこれか?おい!JJ。いるのか?最初から取引なんてするつもりはなかったんだろう?」

 姿の見えないJJに向かい、最後は怒鳴るように言った。

 すると、戦闘服に身を包んだ男たちの後ろに、同じく戦闘服を着たJJが現れた。

「メジシンカルテルは、もう終わりだからな…。今後、お互い有効な取引はできないと判断したんだよ。だったら、いただくのがマフィアの流儀だろう?」

「くそっ。レオはアンタの甥だろう?いいのか死んでも」

 アントニオはレオに銃口を突き付けたまま、苦し紛れに怒鳴った。レオは、コカインを本物と確認した後、用済みとなったのだ。盾に使われたのだ。取引には信頼関係が必要だ。特に血のつながりを重く考えるマフィアにおいては、甥であるレオは、JJの代理人として適任だった。そして、何も知らないレオは、相手に信頼を与えるに十分だった。

 レオは悲しいほど、唇をかみしめながら、JJを見ていた。

 JJは、そんなレオに語りかけた。

「レオ…。本当にお前は人がいいよ。人をすぐに信じていたのでは、ギャングにはなれない。お父さんそっくりだ」

「え?どういうこと…」

 レオの顔が苦痛に満ちていく。

「まさかっ。お前、親父をっ」

 そう言って、動こうとすると、銃弾が一発、レオの足元に落ち、レオの足を止めた。サイレンサー付きのサブマシンガンのため音が静かだった。JJはさらに言葉を続けた。

「レオ。お前は、せめてアンガスの半分の賢さを持っていたなら、使い道があったかもしれん」

 アンガスはいきなり自分の名前を出され、気分が悪くなった。

「だが、アンガスは頭の回転が速すぎる。それは逆に我々にとっては危険だ。チャドを盗聴した限りでは、アンガスに「彼ら」の名前は伝わってはいない。チャイニーズマフィアですら、「彼ら」と俺達の関係は知らなかった。しかも、チャドを殺した奴らの話では、オフィスでその情報を仕入れる時間など十分なかったはずだ。だから、最初は、見逃したものを…、だが、あの状況で、いろいろ悟り過ぎたようだ。しかし、私にその名前を確認したのがアンガスの最大のミスだな」

 冷静な軍師のような口ぶりだった。

 JJを見ていたレオが、アンガスに向きなおる。

「アンガス…」

 頼りない声がレオから漏れた。

「ごめんな…」

 濡れた黒い瞳で見つめられ、アンガスは、綺麗な瞳だな、と考えていた。


「このやろうっっ」

 アントニオは、レオに向けていた銃口の方向を変え、JJに向けて発砲した。

 それが、合図のように銃弾の雨がアンガスたちに降り注いだ。

 

 そこからは、スローモーションだった。

 アントニオが、頭を打たれ、次に胸を、腹を、のけぞって床に倒れた。

 アンガスは、レオにそばの木製のコンテナとコンテナの間に押し込まれた。

 そして、レオは、アンガスに倒れこむように覆いかぶさった。

 静かだが鋭い銃声が幾重にも重なるように聞こえる中、一人、また、一人と、悲鳴とともに撃たれていった。

 アンガスは、「レオ…」と小さな声で自分に覆いかぶさっている男に声をかけた。

 返事はなかった。


 アルフレッドは、ジムの借りたレンタカーのドアを開けた。

「助けないと!」

「バカか!!!」

 ジムは必死でアルフレッドを止めた。

 力では叶わないはずのアルフレッドに振りはらわれ、結局、行かせてしまった。

 ジムはなすすべもなく、銃弾のふる倉庫に向かう友人を見送った。

 最初、取引は順調に進んでいるように見えた。だが、3台のランドローバーが静かに工場近くに止まると、黒い戦闘服を着た男たちが、外で見張りをしていた男たちを次々に倒し、あっという間に工場を包囲した。そして、暫く中の様子を窺っていたかと思うと突撃していったのだ。その間、5分もかかっていない。どこか近くで盗聴し、タイミングを見ていたのだろう。 ジムは昨日もさすがに盗聴機を仕掛ける勇気などなく、まわりを窺っただけだった。だから、中での詳しい状況はわからないが、順調な取引ではないことだけはわかった。

「あの戦闘服集団は何だ?警察は…?」

 ジムの顔にじっとりと汗が滲んだ。

 深呼吸すると、車を発進させ、警察に電話するため、公衆電話を探した。


 倉庫の中は、まだ銃弾の雨は止んでいない。

 アンガスの場所はコンテナでうまく敵から視界が隠されていた。

 アンガスはレオを体からそっと退かした。

 レオは、ゴロンと転がり、横になった。

 それから、ちょうど戦闘服の男の後姿が視界に入った。

 アンガスは手に持っていた銃で男の首筋を狙った。

 命中した。

 それを機にアンガスを隠していた木製のコンテナは集中砲火を浴びた。

 木製のコンテナが音をたてて崩れていく。

 しかし、その時、戦闘服姿の男が、反対方向の場所で撃たれた。

 集中砲火は一斉に方向を変えた。

 アンガスはその隙に、倒れた男からサブマシンガンを取り上げた。

 そして、コンテナの影から出ると、中央部のデスクの回りに、アントニオをはじめ数人の男たちが倒れ、血の海となっているのが見えた。

 アンガスは、コカインが置いてあるデスクに駆け上がり、戦闘服の男たちに向かってサブマシンガンを闇雲に撃ち始めた。


 アルフレッドは必死で走った。

 あの倉庫にアンガスがいる。

 ジムは、あれはソーホーのストリートキッズのボスだ。と言った。

 それは間違いないだろう。

 グラマースクールに通う13歳の男の子が来る場所ではない。

 それでも、あれはアンガスだった。

 倉庫の窓から、アンガスの姿が見えた。

 真っ赤な血の湖の中で、顔から体中を真っ赤に染め、サブマシンガンを撃っている姿だった。


 アンガスは、自分が何をしているのか冷静にわかっていた。

 冷静な頭で、考えていた。

 逃げるべきだと思った。

 だけど、自分は逃げても行くところがなかった。

 チャドが死んだ。

 レオが死んだ。

 ならば、すべて壊れてしまえばいいと思った。

 もう、行く場所なんて、この地球上に存在していない。

『ブラックホールは今まで理論上だけのモノだったけど、近年の天体観測技術の向上によりクエーサーのような天体が発見されたんだ。前にも話したかもしれないけど、クエーサーっていうのは銀河の百倍以上のエネルギーを放出している天体で、普通の恒星はこれだけの量のエネルギーを放出する核融合はしていないんだ。だから、そのエネルギー源はブラックホールではないかと考えられるんだ』

 何故かアルフレッドの言葉を思い出した。

 ブラックホール…

 そうだ。そのエネルギーは、ブラックホールなのか…

 何もかもを飲み込むエネルギー…

 ならば、自分はブラックホールだ。

 何もかもを破壊する。

 そして、最後には自分自身をも破壊し、飲み込む。


 アルフレッドは、息をのんだ。

 瞼に残る白い雪に消えた白い天使と、顔も全身も真っ赤に染め、サブマシンガンを撃ちまくるその少年が重なった。

 それは、真っ赤な天使。

 そして、魅せられ、引きつけられるように中に入って行った。

 早く彼を助けなければ、

 壊れてしまう。

 あの赤い天使を…

 僕の天使を…



 

 Ave Maria, gratia plena

 (慈悲に満ち溢れた聖母マリア)


 Dominus tecum

 (主はあなたとともにいます)


 Sancta Maria

 (聖母マリア)


 benedicta tu in mulieribus

 (あなたは祝福されたのです)


 et benedictus fructus ventris tui, Jesus

 (あなたの子、イエスも祝福されています)


 ora pro nobis peccatribus

 (罪深い私達の為に祈って下さい)


 nunc, et in hora mortis nostrae Amen.

 (今も、死を迎える時も。アーメン)



 そして、アンガス瞳がアルフレッドを捕えたのと、アンガスの銃口がアルフレッドを捕えたのは同時だった。



 Ave Maria,Maria, Maria….

 (聖なるマリアよ、マリアよ、マリアよ)





 アルフレッドが胸を押さえた。

 胸から血があふれ出ている。

 アンガスは、自分がアルフレッドを撃ったことを瞬時に悟った。

 サブマシンガンを投げ出すと、デスクから飛び降り、アルフレッドの元に駆け寄った。

「アル!!!!」

 アルフレッドは地面に倒れこんだ。

 アンガスはアルフレッドを抱きかかえた。

「やあ…。アンガス…。ゴボッ」

 アルフレッドの口から血が溢れた。

「あぁ…、ダメだ。話してはダメだ」

 アルフレッドはアンガスの血だらけの頬に血だらけの手を伸ばした。

 アンガスはその手を握り締めた。

「どうして…、どうして…、こんなところにアルがいるんだよ!」

「…アンガス。君はやっぱり天使なんだよ…。だから、助け…」

 アルフレッドの手から力が抜けた。

 アンガスは、絶叫した。


「アル!!!!!!!」


 銃弾は止み、周りには、死体だけがあった。




  聖なるマリアよ、わたしたちのために、祈りたまえ

 

  マリアよ







 



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