4話 敵地占領時期
天挟暦1993年。
今から二年前の事である。
ロシア国はウラジオストク。
ここが丸ごと宇宙船の不着陸ポイントになり、地区の九割は火の海と化した。
全て焼却された訳でなく、地球文化の文献は遺っていた。それも図解資料としてだ。
文字文化は月日が経過して習得出来た。が、図解で知識した文化様式はすぐに吸収して、船員全員に教養させた。
すると、地球文化人と同化するフリをして、交渉の立場を利用するため、文化交流場の交易国を日本にすると決めた。だが、日本政府は、ウラジオストクを占拠した宇宙人と見做され交易は失敗。
日本国の要とも言える武装強化特殊教育に興味を示した宇宙人側は、これを利用すべく交易国指定の対象を壊滅する計略を立てた。
その為の協力者は同国のロシアだ。その科学力と文明能力を超速で吸収した宇宙人たちの学習能力は、戦闘機器の技術をも掌握。これを機に、戦争行為を図る気でいっぱいになった。
そうしてその2年後の現在、数体のドッグスレーヤーを量産させる準備まで整いつつあった。
首謀者サイドの血族は、拉致日本人を初陣にする為、その対象をエリートパイロットに仕立て上げ、彼を将来の長女の婚礼相手とする。つまり、拉致日本人男をおいおい王として祀り上げて組織を固める統治計略だ。
これを阻む者は、地球人誰一人生かしてはおけない。それが宇宙人の堅い意志なのだから。
そうなのだ。つまり、亡命を遂げた娘というのが将来の婚礼相手を拉致られた日本人の妻になる者、リャーシュア本人である。
その陰謀内容を盗聴してしまった夜に脱走して、旧ウラジオストク区を後にし、大陸を密入国するための渡航を果たし、透明化利用して窃盗行為を繰り返し、今現在に至る。
内矢附麻の身柄は、今や敵地の不夜城で丁重に管理されて久しい。
本来ならば内谷月真が代わって不夜城内で扱われているはずに違いなかった。
天挟暦1995年現在――。
月真は、翌日の実技カリキュラムの授業後に、実技講師に自分の意志を伝達した。
「オレ、その友人、殺すつもりで挑もうと決めました。覚悟は堅いです」
「そうか。ならばその意気込みで友人を倒す覚悟で訓練せよ。オレが特別メニュー立てて教えてやる。良いな‼」
「はい‼‼」
と、月真は数倍のやる気で陰謀に立ち向かうという気合いを胸に立ち上がった。