3話 お忍び同居
冗談じゃない。
なんで個人寮にリャーシュアとかいう幼女的な女子がいるのか?
寮母に取り次いだが幼女という影は一切知らないらしい。ちゃんと存在証明を見せたって、何にも映ってないの一点張り。
つまりは、宇宙人は内谷月真しか認識されない仕掛けが施してあるらしい。
「せっかく個室寮暮らしを楽しむ学生の自由をだな、お前の為に台無しだ‼」
「ワタシは、亡命者。もうあの占領地に戻れない。怖いし、戦争は嫌い」
「ううむ。あのねぇ。色々事情あるかもだけど、拉致られた日本人を取り返したり、戦争を止めるのは軍属のプロだけだから」
「アナタのスクールはプロの登竜門と聞いた。だから、ドッグスレーヤーは同型機が倒さねばならないの」
「日本軍だってスレーヤーマシンは持ってる……いや、待てよ。よく考えたら、ドッグ機体は軍は管理してなくて、ウチの高校の戦闘指揮総合基地部が預かっていた。うう、これでは、オレがこのフザケた事実を隠さないといけないのか?」
「ワタシは普段、見えないが、あの時のスモーク内ではガードマンの目に映ってしまった。あれは誤算だったな」
「ナニを呑気な」
と月真とリャーシュアの漫才トーク的なやり取りを中断させたのは、隣室のクラスメートだった。
「よお、迎えに来たぜ。ナニ、独り言ぶつくさ言ってんの? アンタ面白いからウチの友達になってくれんかな?」
「ナニ勝手に決めて……まぁ良いや。お隣さん、もとい、篠丘、ガッコ行こうぜ」
「おう‼ お隣さんとか、ウチはアンタの旦那か奥様かな?」
「キモいな、その言い方やめろよ」
「ハハハハ……」
挾東私立機甲高等学校。1学年棟の施設内。
学年別に棟内部にはカリキュラム用の実技演習グランドが設置されてある。ドッグスレーヤーの同型演習機体プロトスレーヤーで、実技授業を受けていた月真のいるクラスだった。
「授業も基礎教材暗記の直後に実技講習はキツいよな、相棒〜」
「オレは相棒じゃねぇ。篠丘は少し黙ってて」
「なんか、連れないね〜」
実技講師が私語学生を注意してきた。
「おいっ、そこのお前とお前、私語厳禁。グランド50周させるぞ」
「ウチら? す、すいません‼」
「……(オレもか? チッ)」
結局は、二人共グランド周回走行で、篠丘はラストを切るなりバタンキューした。
月真は、粗い息継ぎが止んだ後、講師に尋ねた。それも、授業がもう終わったタイミングなので気楽に話せるらしい。
「講師、オレはドッグスレーヤーの戦士になったかも知れない相手に挑戦されたんです。でも、相手は幼い時の馴れ合いでして、対立したくないんです。でも挑戦を受けないと絶交と言われて」
「覚悟が足りない甘ったれだな。もう20周走るか? それとも、お前を2階級特進させよとか? フン。そんな小細工はしたらその命はすぐに尽きる。覚悟ないなら挑戦の約束なんかするな」
「しかし、講師‼」
「この世はだな、やらねえ奴がすぐに尽きる仕組みさ。やって後悔するなら覚悟ある奴なんだ。やる前にピーピー騒いでる奴に覚悟があるとは思えん。どうなんだお前、その挑戦受けたいのか? 中途半端な気持ちで覚悟の言葉吐くなら、この学校なんか辞めちまえ。嫌ならばな、てめえで決めるんだ。期間は一日だ。決めたら教えろ。そん時、覚悟とは何かオレがイチから叩き込んでやらぁ」
「講師……」
「判ったら教室戻って帰宅の準備しとけ」
月真は心の闇の中を整理してみた。実技講師の言うとおり、覚悟を決めて、拉致られた附麻を救わず、倒すつもりで挑もうと考え改めた。
「へえ、その講師さんが言ったんだね。じゃ、覚悟して挑戦しないと」
リャーシュアは、人の気も知らずに簡単に説法しだした。
それだけならまだしも、月真の顔面いっぱいに青痣があるのが不気味だ。
帰宅したタイミングが悪かったのだ。それはリャーシュアの着換え中の姿を目の当たりにしたからであった。




