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第58話「フォート・ラグダ攻防戦(白兵戦)」


 キーファは存外善戦している。

 

 …しているのだが───


 際どい一撃を紙一重でかわしているのか、装着している軽鎧の金属部分から火花が散っている様が良く見えた。


 このまま放っておけば、多分やられだろう。


 別にキーファには何の恩義も無ければ義理もない。

 …むしろ落とし前があるくらいだ。


 特に助けるわけでもなく、バズゥがフォート・ラグダの支援に徹している内に、キングベアの一撃がキーファではなく、騎乗している馬に命中。


 ──致命傷ではない様だが、爪に抉られた肉片が飛び散るのが生々しくうかがえた。


 それでも、馬は耐えている。

 並みの馬ではないのだろう。激痛にも関わらず主人の動きを阻害しないように暴れもしない。

 そこらの馬なら、一撃を喰らえば後ろ足で棒立ちになり、主人を振り落としているに違いない。


 …いや、それどころかキングベアと対峙することすらできない。


 だが、馬にも限界がある。

 あれ以上に、細かいケガが蓄積していたのだろう。

 見るに動きが鈍り、動きに精彩さが失われていく───徐々にキーファも異変に気付いたが…


 時すでに遅し──


 声を荒げて愛馬を叱咤しているが、動けないものは動けない。

 馬は…あれで、全力でよく主人を支えていたと思う。


 その間にもバズゥは狙撃を続ける。

 キーファ側の戦闘も気になるが、フォート・ラグダ側も決して楽観できる状況ではない。


 それを重々承知しているがために、バズゥはキングベアを狩り続ける。

 キングベアの咆哮ほうこうと、城壁の攻防で──発砲音はデカいものの、かき消されているようだ。

 おかげで好き放題に撃ちまくれるが、五感に優れたキングベアが意識を向けさえすればすぐにバズゥの居場所はバレるだろう。


 それに…

 ほとんど外すことなく撃ちまくっているが、弾丸もそろそろ心許こころもとない


 一応異次元収納袋(アイテムボックス)には予備の紙薬莢ペーパーカートリッジ早号はやごう、火薬、弾丸は入っているが取り出すには少々時間がかかる。


 もう少し異次元収納袋(アイテムボックス)の所持数に余裕があれば弾薬専用なんてのも作っても良かったのだろうが───

 雑多な物資に、キングベアや地羆グランドベアの首まで入っているのだ。その中から弾薬のみ選別するのは少々困難に過ぎる。


 装着している早号はやごうも、手持ちをすべて使い尽くすわけにはいかない。


 そのため、腰の物入れから、予備に準備している弾丸を直接使用。

 早合はやごうと違い、多少時間は掛かるが仕方がない。



 キーファ…もうちょい耐えな。






 ───すぐに援護してやる!!!






 バズゥが曲芸師のような動きで、馬鹿長い猟銃をぶん回して装填している間に、キーファは馬を捨ててキングベアと対峙していた。


 最後まで主人に尽くしていた馬は、致命的な一撃を受けてせている。

 死んではいないが、動くことができずに荒い息をついて横たわっていた。

 

 白い息が立ち昇っているが、段々弱々しくなっていく。



 うぉぉぉぉ! と、キーファが剣を振りかざし、華麗なステップを踏みスキルと共にキングベアに切りかかっている。


 馬を失って尚…闘志は失せていない。

 

 やるじゃないかボンボンよぉ…

 どこかエルランを彷彿ほうふつさせるキーファ。


 真っ向からキングベアと切り結ぶが、分厚い毛皮に阻まれて攻撃が通っていない。


 眼にもとまらぬ剣戟と、それを防ぎきるキングベア───!!


 うっとおしいわ! と、

 カウンター気味のファングがキーファを襲う!


 ガキン───!


 キーファにして素早く反応してみせ、カウンターに見事に合わせるが…──刀身で受け止めたものの、勢いは殺せない。

 「ぐぉ!」とうめくキーファが、面白いくらい吹っ飛び、崩れた農家に激突する。


 土煙の中、ヨロヨロと起き上がったものの…かなりのダメージを負ったのが遠目にもわかった。


 それを、仕切り直しとして…

 激しい戦闘音が止み、キーファとキングベアが距離を置いて睨み合う。

 



 ふぅーふぅーふー……


 グルルルルルル…




 キングベアは───

 ザスザスっと、

 片前足で地面を掻き突進の構え。

 その質量は数トンは下らない衝撃となって襲う。


 スキルなんて関係ない。単純な質量兵器だ。

 瞬間的な攻撃力なら、攻城兵器である破城槌のごときだ。


 対するキーファは、業物の剣を正眼に構え───

 バチバチバチとスキルを剣にまとわせる。


 両者、睨みあう中…


 城壁での小競り合いが遠くの音に聞こえる。


 ……


 …



 ッ!!



 キーファとキングベアは向かい合うと、互いに一撃を繰り出す。



 うぉぉぉぉ!!!!!

 グォォォォ!!!!!



 キーファは───!

 ダンと、勢いよく一歩を踏み出し、姿勢を低く…───低く低く低くぅぅ!!


 滑るような動きで姿勢を低く、突き出した剣と自分の突進方向のベクトルを合わせて人と剣が一体になったような鋭い一太刀。

 狙う先はキングベアの心臓部分!

 真っ赤に輝く刀身から、何らかのスキルを付与したことがうかがえる。

 上級職の面目躍如めんもくやくじょと言わんばかりに、一撃が恐ろしく高度な技であることがけて見えた。


 対するキングベアは、頑丈な頭骨を盾に一直線に突進。

 4足歩行であるが故の速度と体位の低さを存分に発揮し───


 キーファのそれは低く鋭い一撃だが、───キングベアのそれは低く重い衝撃力!



 しかもぉぉ───…



 キーファの剣がキングベアに接した瞬間、奴は頭をかちあげる。

 真っ赤な刀身から発せられた稲妻のような光がキングベアの体表を走り毛を焼き焦がすが、それはわずかな面積のみ。

 本来の一撃は空中へ逃げ、無理やりベクトルを変えられた剣戟は勢いを失う。


 …それどころか、キーファの手首から生々しくも乾いた音が響く。


 バギャ!

 ぐぁぁぁぁっぁ!!!


 と、


 鋭い悲鳴が上がり、キーファが突進の衝撃のまま地面に激突し───ガリガリガリィィィと、顔面で地面を掘削くっさくしていく。


 ズザザと土埃が立ち、キングベアの鼻先に墜落するキーファ。

 頼みの剣は、かちあげられた衝撃と共に空中を舞っていた。


 ヨロロと見上げる表情は絶望そのもの…

 そこに鼻先を近づけ、食いちぎらんとする『王』───



 あぁ、


 死ぬ、


 死ぬ───



 ……


 …




 スーーーーー…ジャキ!




 ───いい足止めだったぜ…キーファ・グデーリアンヌぅぅぅぅ!!!




 グワバッ、とキングベアが爪を振り上げ…キーファにとどめを刺さんとする。


 だが、

 すまんな『王』よ……





 横槍よこやり───御免ゴメンッ!





 『急速装填』『冷却促進』『姿勢安定』『反動軽減』『鷹の目(ホークアイ)』『刹那の極み』『鷲の爪(イーグルタロン)』──────『速射』ぁぁぁぁっ!!!






 ズッギャアアアアアアァァァァッァァァァァッァンンン!!!



 


 ……


 …


 ブシュ……


 、


 、


 キーファが死を覚悟して目をつむった時…異変が起こる。


 獣臭の中、


 キーファの嗅覚に届く敗北の香り…


 土と、

 血と、 

 鉛と、



 鉛…?



 血と焦げた鉛の臭いが…



 ゴフッ……


 ボタタタタと、熱い液体が顔にかかる。

 何だと、ようやく目を空けると血を吹き出し苦悶の表情そのもののキングベアが爪を振り上げたまま硬直している。


 グルルルルル…


 うなりを上げる口からは先ほどと同じように真っ赤で熱い血がボタボタと零れている。


 そして、その凶悪な視線は、キーファを見ていない。

 視線の先…


 先ほど確かに聞こえたあの銃声───


「ば、バズゥ……ハイデマン…───」


 ……


 まるで、キングベアが───

 キーファの声を理解したかのように、バズゥの名前に反応する。


 そして、


 『王』は───




 グゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!









 恐ろしい咆哮ほうこうをあげる…───







戦闘は続きます…

相変わらずの遅筆で遅い展開…申し訳ない;;






ちょこっと見てやってくださいb

まだ少な目です。

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