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柚木の進路
柚木目線──
"桜ちゃん"
いつも私の名前を呼ぶ名前の知らない人。
昔別れたお父さんだと勝手に思ってる。
本当のお父さんとの記憶はほぼない。
唯一あるのは観覧車に乗った時の記憶だけ。
でももうあの遊園地もないんだっけな。
どっかで甘えたいとか守られたいとか思いながら現実は甘くない。
人が嫌いな私は就職とかいう話の前に人と関わるのさえ嫌だ。
未来が見えない。
でもお兄ちゃんみたいに優しい大和、弟みたいに元気な哲二。
二人と同じ高校なら行けるかもと思った。
「ゆずは国語の小説が苦手かな…」
そうやって見てくれているのはあねご。
私のことを"柚木"でもなく"桜"でもなく"ゆず"と呼ぶのはこの人だけ。
ある意味特別。
そして女の子扱いをしてくれる。
他の人なら嫌なんだと思う。
だけどこの人の女の子扱いはきちんと私を見てくれている気がして嫌な気はしない。
文章を読むのが遅い私に小説を貸してくれた。
恋愛もの…(笑)
流石にそれは違うかなと思いながらあねごの選ぶ本はとても面白くだんだん国語の話も読めるようになってきた。
「よし!合格が見えるぞ!」
「うん…!がんばる!」
絶対合格したい。