志乃と哲二
哲二目線──
「くっそ…」派手にやられた。
あいつら、袋叩きにしやがって。
とりあえず歩道橋の階段でうずくまっている。
門限も過ぎたな、罰則かよ…
10時すぎ、人さえ通らないこんな道を一人の自転車にのった人が通る。
「大丈夫、ですか?」
声かけられた…
中学生?
「大丈夫っす。」
「血出てますよ…ちょっと待っててください。」
路地に入っていったと思ったらすぐ何か持ってきた
「染みますよ」
治療してくれる。
なんだ?この人は?
「君、友愛園の子でしょ?」
「」
ほら、こうやって俺の園のとこに連行するつもりだ。
「送るよ、園まで。立てる?」
「なんで優しくしてくれるんすか?」
「んー、なんとなく気になっただけ。うちの名前は府中志乃。名前は?」
「橋本哲二」
「じゃあてっちゃんだね!」
「てっちゃん…」
「嫌?」
「園では哲二って呼ばれてるから、てっちゃんはちょっと…」
「じゃあてつ!よろしくね!」
なんだか不思議だ。
園帰ると職員にケンカと門限を破ったことを怒られる。
でも志乃さんがなんか言ってくれてたみたいで罰則はつかなかった。
「くそ…」
「哲二、派手にやられたねー」
というのは相部屋の北野大和。
「あいつらタイマン張れねぇのかよ…」
「弱いから哲二と一対一なら殺されちゃうからね、僕も哲二と朔とはケンカしたくないかな…(笑)」
「何いってんだ、一番強いくせに」
「そーだ、なんか女連れで帰って来たらしいじゃん?」
「どっから聞いたんだよ!」
「見えた。だれ?女?」
と窓指しながら振りかえる大和。
「ちげぇーよ、俺が死んでたら消毒してくれて送ってくれたんだよ。名前は…府中志乃。」
「ふーん、府中志乃ね。うちの中学じゃ聞いたことないな。」
「あいつ隣の中学の学区だよ。」
「ふーん、そうかぁ。」
「大和気になんの?」
「そりゃなるさ、友愛園って分かってて不良の僕らに優しくする人なんてレアでしょ?お礼も言うべきだしね。」
「まぁな。」
そういう律儀なところは大和らしい。
俺は純粋に会いたいとは思うけど。
「哲二、またケンカしたの?」
「そうだよ。柚木なんだよ」
こうやって不機嫌そうな感じで聞いてくるのは同級生の柚木 桜。
こう見えて女。男にしか見えない。
「勝手にケンカしないでよ。」
「なんだよ、いいだろ。」
「柚木は心配してるんだよ、哲二。」
俺の向かい側に座るのは大和。
「おー、派手にやられたな。」
と軽いノリで柚木の向かい側に座るのは同級生の高幡 朔。
四人とも同じ中学の同級生。
「うるせー、俺だからこれで済んだし。朔と柚木なら病院送りだぞ?」
「俺なら袋叩きになるなら上手く逃げるさ。そしてこっちを万全にしてから抹殺だから。」
「朔、朝からそんなこという前にご飯早く食べないと怒られる。」
「はーい。」
ふと外を見るとウザイくらいにいい天気。
はぁ…今日も学校か。