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序章

その男は戦士だった

四〇年以上前の夢、それを果たさんとするには

この世は進みすぎたのだ。

以前熱く燃え上がった闘志は未だ心に燻っている

それが権力と政治事情の名のもとに叩き潰されたあの時も

それが論理的に否定された今も 変らずに。

落人は盲目になるには目が冴えすぎていた

敗者は聾者と成り果てるには耳が良すぎた

老兵は唖者を道化するには弁が立ち過ぎた


されど時は遅すぎた

夢を果たすには莫迦共の目は開け過ぎていた

同志が齎した数々の所業はそれを為して余り有る愚行であり

彼を夢から引き離し嘲笑うように蛮勇から引き裂いた

男は痛みと焦燥に似た絶望とともに知恵の実を食らわされたのだ


男は夢に置き去りにされた残骸だ

安寧を蹂躙せし猪武者は太平の世には居られない

さりとて自身のこころは変えられぬ


夢を継ぐ者共の蒙昧さを

共に語らった者共の軽薄さを

何より己の阿呆さ加減を


解する程度の脳髄を既にして手にしてしまっていたのだから

そうであっても世を許せぬ

敵と認めた狼藉共がのうのうと

呼吸し拍動し思考し幸福せしこの繁華を認められぬ


男は回転式拳銃を手にとった

「生きられぬ」

これは逃避だ 敗北だ 狂いし おのが世への怨嗟だ


撃鉄を起こし銃口を咥え引き金を引いた


爆ぜる音と共に弾丸は頭蓋を、脳髄を華の如く散らした

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