表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

フェレット

作者: ParticleCoffee

 同棲中の彼女とケンカをした。

 理由は晩御飯に関するものだと思ったが、いまとなっては思い出すことができない。

 それほどにささいなことだ。

 その場は『なあなあ』ですませてしまい、そのままいっしょのベッドで眠った。

 朝、目を覚ますと、隣で眠っていた彼女がフェレットになっていた。

 フェレットになるほど怒ることでもないだろう。

 そう言ってはみたものの、すでにフェレットになっている彼女は聞く耳をもたなかった。

 白をベースにしたほんのりと茶色い彼女の毛並みは美しいの一言に尽きる。

 彼女をヒザに乗せてなでていると妙に指をかんでくる。

 そういえば、自分も彼女も朝御飯をまだ食べていない。

 ケンカの原因となった晩御飯のせいで冷蔵庫もカラになっていた。

 とりあえず、コンビニで朝御飯を買ってこよう。そして、なにか美味しいものでも買ってきてご機嫌をとろう。

 そう思い立ち、彼女を神棚のうえに乗せて部屋を出た。

 住んでいるマンションの一階がコンビニになっているため、買い物はすぐに終わった。

 自分にはポークリブのレーションとペットボトルのお茶、彼女にはフェレット用のエサとペット用のミルクを買った。

 マンションの階段を上がり、自分の部屋のある階にたどり着いた。

 なぜか自分の部屋の前に男が立っている。

 肩にフェレットを乗せて男はこちらをにらんでいる。

 その男とフェレットには見覚えがあった。

 彼女の両親、自分にとっては将来の義父と義母にあたるふたりだ。

 義母は、彼女と違って輝きにも似た白色の毛並みをしている。

 はたして彼女もこの義母のようになってくれるのだろうか。

「用件はわかっているね?」

「はい」

 わからないがとりあえずそう答えた。

 ドアのカギを開けると、ボクを押しのけるようにして義父は無理やり部屋へ上がり込んだ。

 彼女は、ソファーのうえのお気に入りのクッションに丸まっていた。

 彼女の姿を見たとたん、義母は義父の肩から駆け下りた。

 遮蔽物をすべてかわし、飛ぶような勢いで彼女目がけて体当たりをする。

 ソファーから跳ね起きるようにして彼女は回避した。

 互いに間合いをとりながら威嚇しあっている。

 しばらくそうしていたが、焦れた彼女が義母に襲い掛かる。

 それは、あまりにも半端な攻撃だった。

 義母はすこし身を引いただけでそれを避け、長い首と胴体を駆使して彼女を押さえ込む。

 完全に押さえ込まれる前に、義母の下で彼女はねじるようにして自分のカラダを反転させる。

 仰向けで押さえられるカタチになった彼女は後ろ足を使い何度もケリ上げた。

 たまらず義母の拘束が緩む。

 そのスキをつき、彼女はするりと逃げだした。

 ふたたび距離を取り、にらみ合い威嚇しあっていた。

「母さん、そのぐらいでよさないか。母さん」

 義父が棒読みでとめにはいる。

 それをながめながらボクがペット用ミルクを飲んでいると携帯電話が鳴った。

 画面に表示された発信者は彼女だ。

 しかし、彼女は、いまも目の前で義母と取っ組み合いをしている。

 おそるおそる電話に出てみる。

 通話状態になった電話の向こうからは「キュキュ」というフェレットの鳴き声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ