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未来から来た

章のタイトルを変えました。しばらくは説明の話が続くかも知れませんのでどうかよろしくお願いします。

 300年後、2315年。つまり彼らは未来の世界から時間旅行をしてきたと言っているんだ。


 「はあ、」

 あまりに現実離れした答えにどう応じていいのかわからず、間の抜けた声が出てしまった。緒方は困ったような顔になる。

 「まっ、普通信じろって方が無理があるよな。」

 「ちょっと考える時間もらえますか?」

 今日はわからないことが多すぎる。このままだと頭が働かなくなりそうなので今の状況を一度整理することにする。


 もしかしたらこれは夢なんじゃないか? そんなことを考えて逃避しようとする自分を無理やり連れ戻す。今目の前にある状況は明らかに夢とは違う。

 次に考えたのは大がかりなドッキリだ。これもまたありふれた考えかただな、と自嘲する。

 さっき俺たちを正面から見ていた緒方の目は明らかに嘘を言っている目ではなかった。演技の可能性もあるかもしれないが俺はそれなりに格闘技をやってきた経験がある。心の読みはたいてい当たる自信があった。

 やっぱり彼らの「未来からやってきた」というのは嘘ではないのだろう。さっきの特殊スーツと言い、怪物と言い、少なくとも俺が知っている知識ではそんなものを作れる科学力は2015年にはない。


 そこまで考えをまとめても、今ひとつ受け入れることができない自分がいた。それを見た六木が俺たちの前に来た。

 「本当の話なんですよ。これ見てください。300百年後の日本です」

 そう言ってスイッチを押すと、機械から空中に映像が投影された。たぶんホログラムか何かだろう。今の時代とは比べ物にならない高さのビルが密集して立ち並んでいる。道路を走る車も見たことのないものだ。

 もう一度スイッチが押される。暗い背景に数え切れないほどの星が映し出される。宇宙の映像だろうか。画面が横に動くと写真でしか見たことのない巨大な惑星、土星と映画に出てきそうな巨大宇宙船が映った。人が作業している様子も見える。俺が見た限りでは作りものには見えない。


 「信じるしかないかな、まだうまく呑み込めてないけど」

 翔也が半分あきらめたような口調で言った。俺もうなずいて同意する。このまま疑っていてもらちが明かない。

 「それで何で未来の人が300年もあとの世界にやってきたんですか?」

 話をもとに戻すために自分から質問する。

 「ああ、それなんだよ」

 さっきのように緒方が説明を始めた。どうやらこう言う話し合いは彼に任せられているらしい。


 「俺たちは未来の警視庁で働いている警察官でな。時間移動の技術を悪用して歴史が変わってしまわないように取り締まる部署、時空警備隊なんだよ。そしてさっきの奴らは最近現れた「ジャスターズ」っていうテロリストなんだ。

 奴らは政府の政治が正しくないと言って日本政府の転覆を狙っていたんだが、警備の厳しい未来の世界じゃそう簡単に政府を倒せるわけがない。そこで過去の世界だったら簡単にできると考えタイムワープしてこの時代にやってきた。奴らを捕まえるのが俺たちの任務なんだ」

 一通り話を終えた彼はコーヒーで飲んで、大きなため息をついた。


 「これでわかっただろう」

 今まで黙っていた辻本が話に入ってくる。

 「未来の道具を過去の人間に持たせたら問題が起こる。さっさとチェンジャーを返せ」

 そう言って腕輪型の装置を示した。


 俺は迷っていた。

 頭の中ではこれは返さなければいけないと思っている。俺は全くの部外者で、彼らの言うような歴史をかけた戦いには手を出してはいけない存在なんだ。

 でも、同時にこのまま装置を返してしまったら俺はもう「正義のヒーロー」になるチャンスはないかもしれない。そうも思ってしまったのだ。


 「その必要はないよ」

 腕に付けた装置から声が聞こえてきた。確認しようと目の前に持って来ると、ホログラムが浮かび上がる。

 写っているのは40代後半の男性だった。恰幅の良い体型をして、威厳を感じるような白服を着ている。頭にはベレー帽のようなものをかぶっていた。

 「私はロン・リング。彼ら時空警備隊の指揮を行っている者だ」

 少し大きめの人形のようなサイズのホログラムが礼儀正しく礼をする。

 「えっと、どうも」

 一瞬迷ったがこっちも装置が傾かない程度に礼を返した。

 突然現れた上司にヒーローたちは敬礼をする。ばらばらで全くまとまりがないが……。

 ホログラムからの返礼を確認した後、すぐに辻本が司令に質問をする。

 「チェンジャーを返す必要がない、というのはどういうことでしょうか?」

 腕輪型の変身装置はチェンジャーと呼ばれているらしい。ロンが彼の方を向いた。

 「先ほどの戦闘で、彼の戦闘能力が今までにないほど高い値であることがわかった。そのため上層部の会議で不在のレッド、青島賢二に代わって彼を迎え入れようという話が決定した」

 「そんなこと納得できません! 過去の人間ですよ、何か問題が起こったらどうするんですか!」

 辻本が強い口調で反論する。表情もさらに険しくなり、とても怒っているのがわかる。

 しかし、ロンは全く動揺せず、先ほどと同じ口調で言った。

 「これは上が決めたことだ。そう言った問題も考慮されている。君に決定権はない」

 「しかし、われわれは」

 辻本は一瞬戸惑った表情をしたが、まだ食い下がろうと言葉を探す。それをロンが先ほどよりも大きな声で制した。

 「君たちはそちらでまだ結果を出していない。レッドを失ったショックはわかるが状況を受け入れてくれ」


 言い争いが終わると、やけに静かな時間が流れ始めてしまった。そんなときに、何を思ったのか翔也が口を開いた。

 「あの、前のレッドの人、青島さんでしたっけ? なぜ不在になったんです?」

 さらに深い沈黙の後、ロンが言った。

 「彼は、レンジェンスとの戦闘で重傷を負って、今朝死亡した」

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