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廃墟にて

 二章目です。これからもコツコツ頑張っていきたいです。

 「ピッ、戦闘終了。装備解除」

 装着した時と同じように体が光に包まれる。光は左腕に集まって腕輪型の装置に変わった。

 変身が解けると感覚が元に戻り、急に疲れが押し寄せてきた。

 「はー、疲れた」

 とりあえずその場に座り込んで一息つく。向こうから翔也がやってくるのが見えた。


 「大丈夫か、優太」

 「ああ、とりあえずけがはしてないよ」

 手をついてゆっくりと立ち上がる。とりあえずどこにも問題はなさそうだ。

 「お前いつから変身なんてできるようになったんだよ?」

 「いや、さっきが初めてだよ。俺にもよくわからない」

 「結構なれた動きで戦ってたようだけど?」

 「ナビゲート機能が付いてた。それより、ヒーローの四人はどこに?」

 そう言って周りを確認する。


 四人はさっきのボマーとの戦闘から立ち直り、こっちに向かって歩いてくるところだった。変身は解いていないのでどんな人たちなのか、まだよくわからない。

 俺たちと向き合ったヒーローたちは腕の装置を操作する。さっきの俺と同じように体が光に包まれて、装置の中へとおさまっていく。


 あらわれた四人はそれぞれ特徴はあるものの一見したところ普通の日本人のようだった。ブルー、イエロー、グリーン、の三人は男性、ホワイトが女性だ。

 正直想像を絶するような変な人たちだったり、言葉の通じない外国人だったらどうしようかと考えたが見たところその心配はなさそうだ。


 そう安心できたのは少しの間だけだった。

 「返せ、それはお前が持っていいものじゃない」

 変身が解かれるのと同時にブルーはいきなりそう言うと、俺の左腕にある腕輪型の装置を指さした。口調もあまり好意的とは言えない。

 突然の状況にどう対応していいのか分からなくなった。場の空気が緊張する。


 「まあまあ、落ち着けって。いきなりそれじゃ意味わからねーだろ」

 そう言って俺とブルーの間に割って入ったのはイエローだ。張りつめていた雰囲気が少しましになる。

 「とりあえず説明します。立ち話じゃなんですから落ち着ける場所に行きませんか?」

 丁寧な口調でグリーンが言った。

 「「はい、お願いします」」

 グリーンの申し出を俺たちは素直に受け入れる。

 このまま帰ることなんてできない。

 今日、ここで見たことがいったい何だったのか、教えてもらわないことには気になって夜も眠れそうにない。

 


 案内されたのは崩れた建物の隣にある倉庫だった。窓からは少し西に傾いた太陽の光が入り部屋の中を明るく照らしている。廃墟とは思えないほど整頓されているのは彼らがここで生活していたからだろうか。

 「なんもないとこだが勘弁してくれ、爆破された隣で生活してたんだよ」

 イエローはそんなことを話しながら俺たちが座るための丈夫そうな木箱を持ってきてくれた。俺たちが座るとヒーローたちもそれぞれ自分たちの好きな場所に移動していく。


 すぐ目の前の箱に座っているのはブルーだ。歳はたぶん俺と変わらないくらいだろう。茶色い髪に三白眼気味の目、アイドルか何かかと思うほど整った顔をしている。だが、今は眉間にしわが寄り、目つきと合わさってかなり不機嫌そうな表情だ。


 その横で壁に寄り掛かっているのはイエローだ。長めに伸ばした金髪とつり目によって一見したら怖い不良のお兄さんだ。さっきの明るい笑みと口調がなかったらかなり接しにくいと思う。しかしそのおかげで四人のムードメーカーを担っているようだった。


 その後ろでどこからか持ってきた鍋にお湯を沸かしているグリーンはかなり年下に見える。学ランを着ていたら高校生だと言われても違和感が無さそうだ。黒髪に黒眼、いつも楽しそうな、落ち着いた笑顔を浮かべている。


 そして、窓際で外を眺めているのが唯一女性のホワイトだ。四人の中でもかなり目立っていた。肩まで伸びた黒髪には日本の女性独特の物がある。が、肌の色は透き通るように白く、瞳の色は外国人を思わせる青色だ。顔の輪郭は丸みがあり大きな瞳と合わさっていとてもかわいい。煙草(のように見える)を吸っているがあまり似合っていない。


 「どうぞ、簡単なものですけど」

 グリーンがカップを手渡してきた。どうやらさっきのお湯でコーヒーを作ったらしい。ほかの人達にも配っているようだ。

 「あ、どうも」

 受け取って一口飲む。コーヒーの香りと温かさのおかげで少しだけ緊張を和らげることができた。


 「さて、飲み物も回ったことだしそろそろ説明をはじめましょうかね」

 イエローが軽い口調で話をきりだす。

 「まずは自己紹介からだな、俺は緒方一樹(おがたいつき)、23歳独身。よろしく!」

 イエロー、改め緒方一樹が冗談を交えてあいさつし、目くばせをする。次はグリーンだった。

 「六木陽(むつきよう)です。よろしくお願いします」

 丁寧な、落ち着いた口調でそう言うと軽く頭をさげた。

 「辻本誠史(つじもとせいじ)だ」

 ブルーが不機嫌そうに言った。こっちと目を合わせようとしていないのがよくわかる。

 最後に残ったホワイトがこっちを向く。

 「村田葵(むらたあおい)

 無表情に、必要なことだけをしゃべった。どうやらかなり無口で、感情を表に出さない人らしい。


 こうしてヒーローたち四人の名前がわかり、俺たちの番になった。翔也がそのコミュニケーション能力で先にしゃべり始める。

 「俺は三宅翔也だ。Gooっていうインターネットの会社に勤めてる。で、こっちが」

 「浅葱優太です。武術の師範みたいなことをやってます」


 挨拶の終わった室内は急に静かになってしまった。お互いに知り合ったばかりの相手とどう接すればいいのかを考えているようだった。

 話を切り出したのは翔也だ。

「紹介も終わったことですし早速説明してもらえませんか。さっきのロボット? やらあなたたちの正体とかを」

 こんな状況でも持前の人懐っこさを発揮してくれる翔也は頼もしかったが、その顔は楽しそうに笑っていて、「興味津津」と書かれている。野次馬根性も全開のようだ。

 もちろん俺も興味がないわけじゃない。ずっと憧れていたヒーローと言える存在が目の前にいる。いったい彼らはどんな人物なのか、知りたくてたまらない。


 緒方がコーヒーを一口飲んで、少し考え込むような様子を見せる。

 「これから言うことは信じられないかも知れないんだが、本当のことだから素直に受け入れてもらいたいんだ」

 さっきまで軽かった口調も真剣になった。

 そこまで言うヒーローたちの正体とは、いったいどんな答えが飛び出すのだろうか。


 言葉が選ばれるまで、十秒ほど沈黙が流れる。緒方が決心したようにまっすぐに俺たちの目を見る。そして、はっきりとした声で言った。


 「俺たちは今から300年後、西暦2315年の日本からやってきたんだ」

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