変身! レッドVSボマー
「ピッ、生体反応確認。使用者認証を開始します」
突然剣から音声が流れだし、持ち手にある丸い装飾が光りだした。
「使用者認証完了。オールオーケー。特殊スーツ装着開始」
剣が光になって消え、体全体をおおっていく。
ここまで来ればだいたいわかるだろう。
おそらくさっきの剣は不在だったレッドの剣だ。そしてなぜだかわからないが俺を所有者《レッド》と勘違いしていわゆる「変身」が発動してしまったらしい。
光が足の方から特殊スーツに変化していき、装着される。最後にマスクが形成されて顔を覆った。
「装着完了」
さっきの音声がすぐ耳元から聞こえた時、俺は新聞の写真に写っていたレッドと同じ姿になっていた。
赤を基本にして、ところどころに白のアクセントの入った特殊スーツ、自分では見えないがマスクも同様にレッドが付けていたものだろう。
「うわ、まじかよこれ……」
予想もしていなかった展開をうまく飲み込むことができない。しかし、そんなに長く戸惑う時間はなかった。
「ん、レッドか。遅いお出ましだったな! すぐにお前も片づけてやる!」
ボマーに気付かれたからだ。
左の銃口がこっちに向けられる。
「え、ちょっ、うそだろ!」
俺はがれきを飛び越えて全力で走りだした。
このまま撃たれるわけにはいかない。あそこに撃たれたら翔也が巻き添えを食らうことになる。
左手から砲弾が次々発射される。
特殊スーツのおかげでいつもよりも速く走れるのでどうにか逃げることができる。
「ハッ! 逃げているだけか」
ボマーが馬鹿にしたような口調で言ってくが攻撃しようにもさっきの剣も持ってないしどうしたらいいのかもさっぱりわからん。とにかく逃げるしかない。
「うぉりゃー!!」
さっきの威力からして当たったら確実にやられる。爆風の中をとにかく全力で走る。
「そこだ!」
しかし、おれの動きが単調だったらしくすぐ目の前に砲弾が撃ち込まれた。
この速度では今から止まることも、突っ走ることもできない、終わりか……
「ピッ、攻撃確認。攻撃データ取得。回避願います」
突然、さっきの声が聞こえてきたと思ったら頭の中に回避の動きが流れ込んできた。
右足を滑らせて、速度を落とす。そのまま低い姿勢から真横に飛ぶ。
砲弾が地面にあたり爆発した。
空中で一回転して爆風を受け流し、煙の中へ着地する。
普段ではとてもできないような動きが、今はとても楽にできた。
ボマーからの追撃はなかった。煙のせいでこちらが確認できないからだろう。
「ピッ、攻撃開始。装備、ライトスラッシャー」
声と同時に左の腰にさっきの剣が出現した。
どうやらこのスーツには戦い方をナビゲートしてくれる機能があるらしい。
「そう言うことなら!」
右手で剣を引き抜けき、指示された方向に跳躍する。10メートルはあった距離を一瞬で詰めて、真上から剣を振り下ろす。突然の反撃にボマーの対応が遅れた。が、当たる直前で受け止められる。
「ピッ、装備、シューター。フルオート」
左の腰に出現した銃を取り、引き金を引く。
連射されたレーザー弾がボマーの装甲に穴をあける。ボマーがひるみ、2歩後退する。
「どりゃー!」
その隙を見逃さず渾身の蹴りをくらわせる。数百キロはあるはずのボーマの体が後ろに3メートルほど飛んだ。
「ピッ、武器換装、レフトスラッシャー」
左手の銃が光包まれ、右よりも少し短い剣に変わる。
「ピッ、ファイナルスキル使用可能。コールすることで使用できます」
俺は剣を握りなおし、起き上がろうとしているボマーとの距離を詰めた。
ファイナルスキル、言葉の響きからして必殺技のことだろう。だったら使わない手はない。
立ち上がったばかりのボマーに二本の剣で突きを入れる。
「ぐわっ!」
ひるんだすきを逃さずに、必殺技を発動する。
「コール! ファイナルスキル!」
地面をけった瞬間、今までとは比べ物にならないスピードが出た。周りの景色に焦点が合わない。
しかし、すぐに景色は元に戻り、今度はスローモーションのようになる。
格闘技の試合で、集中力が最高になったときに似たような経験がある。脳の処理能力が上がって、自分の見ている世界だけが遅くなっている。
「イクスディバイド!」
振り上げた二本の剣を同時に振りおろし、Xの軌道を描いてボマーを切る。
横をすり抜けて、そのまま5メートルほど駆け抜ける。
必殺技のすべての動きが終わったとき、
「ぐわ―――!」
ボマーが最後の叫びをあげながら爆発した。
とりあえず一章分を書き終えました。
これからこんな調子で書いていきたいと思いますのでどうかよろしくお願いします。