ヒーローあらわる
光の中から現れたのは5人のヒーローだった。
赤、青、黄、緑、白の5色に塗り分けられた特殊スーツを着て、マスクをかぶったその姿は、誰もが一度は見たことがある戦隊ヒーローだ。
一般市民の手に負えない強力な悪人を、その特殊な装備と力で倒し、平和を取り戻す。今もっとも必要な存在だった。
「ジャスターズ! お前らの悪事もそこまでだ!」
レッドが仮面の男に向かって宣言する。男が彼らのほうを向き、相変わらずのきざな口調で言った。
「ほう、貴様らは一体何者だ」
「俺たちは時空警備隊だ。レンジェンス、お前には時空混乱罪で逮捕状が出ている。おとなしく捕まってもらおう」
「そんな説明で私が捕まってやると思うのか?」
「無理、だろうな」
向かい合う彼らの間には緊張が漂っている。周りが一瞬の静けさに包まれた。
「行け、ロバット!」
レンジェンスの合図とともに、何十体ものロボットがヒーローたちに襲いかかる。ヒーローたちもそれぞれ武器を持って応戦する。
「スラッシャー!」
レッドの手に握られたのは2本の剣だった。
素早く動き、次々と敵を切りつける。横にいるブルーも同じように剣で戦っている。
「スマッシュグローブ!」
イエローは両手に着けた大きなナックルで敵を殴り飛ばす。
「シューター!」
グリーンとホワイトは拳銃を構え、レーザー弾で撃ち抜く。
警察が束になって何も出来なかったロボットたちを、たった5人で次々と倒していった。
「覚悟しろ、レンジェンス!」
レッドが乱戦から抜け出し、仮面の男に切りかかる。男もサーベルを抜き、応戦する。
レッドの剣が踊るように、男へ襲いかかる。
鋭く縦に振られた右手の剣を男は右へと避ける。そこへレッドが左の剣で突きを放つ、男はサーベルではじくと剣の刃を滑らせて、レッドへと切りつける。それを右の剣が防ぎ、つば競り合いになった。
「ほう、なかなか楽しませてくれるじゃないか」
「余裕があるのも今のうちだぜ!」
レッドが剣を強くぶつけて、男との距離をとる。
そして再び接近し、激しい戦いが始まった。
「これでおわりだー!」
レッドと男の戦いが始まって3分、イエローが最後のロボットを吹き飛ばした。
「レッド! 大丈夫か!」
ブルーがレッドに呼びかける。二人の戦いはこう着状態だった。
5メートルほどの距離を置いて、二人がにらみ合っている。
「今のところは大丈夫さ」
レッドがブルーに答えた。男はロボットが倒されて、自分が不利になったことに気づいた。
「次で、最後にしよう」
「ああ、これで決めよう」
二人はそれぞれの武器を構え、力をためる。すべての感覚を研ぎ澄ませる。風が二人の間を吹き抜ける。
まるで、すべて決められていたことのように、二人が同時に飛び出した。
風が止んだとき、一瞬の戦いの決着がついていた。
「ぐあ!」
レッドの剣が男の右肩に深く刺さっている。男の手からサーベルが抜け落ち、乾いた金属音をたてる。
しかし男はあきらめなかった。左手でマントに隠していたレーザーガンを取り出し、至近距離からレッドの胸へと打ち込んだ。
「うわ!」
レッドは後ろへ吹き飛ばされる。
「レッド! しっかりしろ!」
すぐに仲間達が駆けよる。レーザー弾は特殊スーツに穴をあけ、レッドの体を貫いていた。
仮面の男はよろけながら立ち上がると、ヒーローたちをにらみつける。
「今日のところは引くとしよう。だが、我々ジャスターズの日本占領計画は始まったばかりだ。次に邪魔するときは全員あの世へ送ってやる!」
そう言うと男は丸いカプセルを取り出し、地面に投げつけた。
閃光がまき散らされ、一瞬視界をさえぎる。次に見た時には、男の姿はそこにはなかった。
「くそ、逃げやがった!」
イエローが悔しそうに言う。
「とにかく僕らも移動しましょう。レッドさんの手当てが先です」
グリーンの提案に全員がうなずく。ブルーがレッドを抱え上げた。
そうして、ヒーローたちも現場から走り去って行った。