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悪役令嬢たるもの  作者: 藤原ライカ


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第26話 第二王子の使者



翌日――


イザベラは王都にいる両親とロザリンデに手紙を書き、庭園のガゼボでパトリシアとマリアベルとの御茶を楽しんでいた。


そこで今朝、王都から第二王子クリストファーの使者がやってきたこと、パトリシアから知らされた。


「まったく! 朝早くからやってきて迷惑な輩ね。門前の遥か先で追い払ってやったわ。そう簡単に、我が家に足を踏み込めると思ったら大間違いよ。おほほ」


「イザベラお姉様、ご安心ください。国王陛下直属の使者以外は、当家の門前どころか門々前々払いせよと、お父様が通達をだしておりますので、使者どころか手紙すら届きませんわ! うふふ」


この話しぶりからして、自分とクリストファーことは、すでにパトリシアとマリアベルの耳にも入っているのだろう。


「ご迷惑をおかけします。騒ぎになる前に、クリストファー王子殿下との婚約を円滑に解消するのが目的だったのですが……」


「迷惑だなんて、そんなことあるわけないじゃない! イザベラが気に病む必要なんて、これっぽっちもないわ! うちのバカ息子が、慌てふためいて会いにいったせいで、あなたとガルディア公爵令嬢の計画が台無しになったらしいじゃないの」


マリアベルの目も、吊り上がった。


「本当にもう、お兄様は! 戦場では血も涙もない、って言われるくらい冷静沈着なのに、イザベラお姉様のことになると、てんでダメ!」


「まったくだわ。でも、さすが、ガルディア公爵令嬢ね。うちのバカ息子の暴走にも臨機応変に対処されて、あっという間にイザベラを王都から引き離してくださったんだもの。ああ、そうそう、これも伝えておかないと。正式発表はもう少し先になるだろうけど、第二王子殿下とイザベラの婚約が一時保留になったことで、新たな第二王子妃候補を選定することが決定したそうよ」


過去には、現ロマリア国王の妃候補として、イザベラとおなじく城内で妃教育を受けていたパトリシア。王宮の内部事情には詳しい。


「わたしの予想では選定が終わって、新たな候補となる令嬢の発表をもって、イザベラとクリストファー殿下の婚約解消を成立させるでしょうね」


「こちらに第二王子殿下の使者が訪れたのは、そういう理由からですね。わたしがオルフェス大公家の政務官に任命されたことを知ったのでしょう」


「そのとおりよ、イザベラ。いまさらになって自分が失ったものの大きさに気づくなんて……うちの息子もバカだけど、クラリスの息子はそれ以上だったわね。おほほほほ―ッ!」


「まあ、お母様、そこは感謝しないといけませんわ。うちのお兄様以上の考えなしだったおかげで、いまこうしてイザベラお姉様と楽しく御茶ができているのですから。うふふふふ―ッ」


そこに、騎士団の訓練を終えたジークバルトがやってきた。


「母上とマリアベルの品のない笑い声が、遠くまで聞こえてきたぞ。城内とはいえ、だれに聞かれているかわからないってのに」


「品の欠片もない息子が、何を言っているのかしら。わざと聞こえるように言っているのよ。まあ、オルフェス(うち)に潜り込ませるほどの手練れを、第二王子殿下がお抱えしているとは思わないけれど、行商人のふりをした使者を潜りこませるくらいはするかもしれないでしょう。牽制しておかないと」


「サイモンが、馴染みの商人以外の立ち入りを制限しているのは、そういうことか」


「あらもう? いつもより動きがいいじゃないの……って、シレッとイザベラのとなりに腰掛けるなんて、油断ならないわね」


「お兄様、せまいわ! わたしとイザベラお姉様の間に割り込まないでちょうだい。自分が、人より図体がでかいことを、いまだに知らないのかしら?」


イザベラとマリアベルが座っていた長椅子に、強引に割り込んだジークバルトは、となりの空いている椅子を指差した。


「文句があるなら、そっちに座れ。イザベラがいるときは、そのとなりは俺のものだ」


「偉そうに!」


兄妹喧嘩を見ながら、イザベラがクスクスと笑いだす。


「ほらみろ、マリアベルがキャンキャン犬みたいに吠えるから、イザベラが笑っているぞ」


「わたしじゃなくて! お兄様の子どもじみた独占欲に、イザベラお姉様は苦笑していらっしゃるのよ! 見てわからないのかしらっ! ああ、お兄様のせいで、一気に喉が渇いてきたわ」


「それなら、御茶をいれなおしましょうか」


イザベラが長椅子から立ち上がり、ティーワゴンのそばで御茶を淹れはじめる。


その美しい所作に、オルフェス家の三人は見惚れつつ、周囲に鋭い視線を走らせる。


「ジークバルト、朝からウルサイ蠅がきたから、イザベラに余計な気を遣わせないように、さっさと対処しておきなさいよ」


「それは、もちろん。騎士を数名、イザベラの護衛として配置しています。あのクズ野郎には、イザベラに謝罪する機会さえ与えない。懸念としては、弟に甘いルイスが余計な手助けをする可能性があるかもしれない。しばらくは城館の警護を最高レベルまで引き上げます」


「いくらでも引き上げなさい。ジークバルト、わかっているでしょうけど、もう二度とロマリア王家に出し抜かれることがないように。ただし、イザベラに窮屈な思いはさせないようにね」


東方帝国の第二皇子ユージーンから贈られた最高級の茶葉で淹れた御茶を、イザベラが白いティーカップに注いでいく。


「ああ、なんて良い香りなのかしら。イザベラお姉様が淹れてくれる御茶は最高よ。いいことお兄様、この幸せな時間を死守するのよ。なんなら、わたしがロマリアの王城に潜入してきましょうか」


「やめておけ。俺よりも暴れそうだ」


心地よい風が吹く庭園で、御茶会はつづいた。





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