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悪役令嬢たるもの  作者: 藤原ライカ


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第24話 オルフェス大公国

 


 東方帝国に3日間滞在したあと。


 イザベラとジークバルトは、オルフェス大公国へと向かっていた。


 黒竜の背で、イザベラは不安を口にする。


「心配になってきました。任命の書状があるとはいっても、いきなりわたしが大公家にいって、政務官として受け入れてもらえるでしょうか」


 それを聞いて、イザベラの頭に頬をこすりつけながら笑うのは、身体をピッタリと寄せて抱き寄せている大公家の嫡子ジークバルトだ。


「面白いことを言う。ロマリア王国一の才媛がやってくるというのに、受け入れない国などない。とくにオルフェス(うち)のような属国は、万年、人手不足だからな。イザベラが来ると知ったら、サイモンなんかは泣いて喜ぶだろう。おそらく、東方帝国に行っている間に王都から通達があるだろうから、今ごろ歓迎の準備でもしているはずだ」


 ジークバルトから懐かしい名前がでて、イザベラの顔が明るくなる。


「サイモン卿がいらっしゃるのですね」


 サイモン・ガーフイールドは男爵家の三男で、イザベラが王太子妃候補だったころ、王宮で執務官をしていた人物だ。


「オルフェス大公国に引き抜かれたと、噂では聞いていたのですが……知っている方がいて良かったです」


「なにが良かった――だ? 俺がいるのに、どうしてサイモンなんかを頼りにする?」


 一気に不機嫌になる大公子の相手も、だんだんと慣れてきたイザベラは、鍛えられた胸に頬を寄せる。


「ジーク、だれよりも、あなたを頼りにしています。だからこそ、周りにも認めてもらいたいのです。わたしが、オルフェスの大公子のとなりに立つにふさわしいと……それには、王宮と大公家での執務のちがいを説明できる人物が必要になります。つまりは……そういうことですよ。ご理解いただけましたか」


「くそっ……」


 頬を赤らめたジークバルトは、さらに強くイザベラを抱きしめた。


「安心しろ、イザベラ。今のところオルフェスでは、俺の方がおまえにふさわしくないと思われている。父上も母上もだが、リカルドとマリアベルもだ。とりあえず俺は、あの家では散々な扱いをされているからな。着いたらきっと、驚くぞ」


「オルフェスの死神が、そんなひどい扱いを? それは楽しみになりました。大公夫妻にお会いするのも久しぶりですが、公子殿下と公女殿下に会うのは……5年ぶりでしょうか。大きくなられたのでしょうね」


 双子の弟と妹であるリカルドとマリアベルに会ったのは、ふたりがジークバルトといっしょに王城にやってきた10歳のときだ。


「ふたりとも相変わらず、うるさいぞ。とくにマリアベルは、イザベラがきたら大騒ぎだろうな」


「お会いするのが楽しみです。ありがとうございます。ジークのおかげで、だいぶ気が楽になりました」


 陽の光に煌めく蒼銀の髪を手に取ったジークバルトが、今日も5度目となる「愛してる」と告げながら口づける。


「誓ってもいいが。たぶん城では、イザベラが考えている数倍の歓迎を受けるだろうから、覚悟しておけよ」


「まあ、それならもっと手土産を持参すれば良かったです。東方帝国の茶葉だけでいいと、ジークが言うから」


「いいんだよ。大公家(うち)は、あそこの茶葉が好きなんだ」


「わたしも、誕生日にロザリンデから贈ってもらって大好きになりました。それでしたら、わたしが皆さまにお茶をお淹れいたしますね」


「それは、俺も嬉しいが、父上あたりは泣いて喜ぶだろうな。俺も他人(ひと)のことは言えないが、母上とマリアベルが淹れた茶はどうやっても渋くなるからな」


「そんなことを言っているから扱いがひどくなるのですよ。それにしても、かなり茶葉を買いましたね」


 黒竜の背には、大きな木箱が二つも積まれている。


「半分は、ロザリンデ様行きだ。ユージーンのヤツが最高級の茶葉を用意したからな。これに、オルフェス産の最高級のコーヒー豆も追加して、明日にでも送る予定だ。今回のことは、さすがに感謝している。御礼をしないとな」


「大喜びするでしょうね」


「だろうな――イザベラ、ほら、オルフェスに入るぞ」


 眼下に見えてきたのは、歴史あるオルフェスの街並み。


 城下を見下ろす小高い丘に、周囲の風景に溶け込むように建てられた城館が見えてきた。


 城門の前に広がる庭園に、黒竜がゆっくりと降下していく。


 その庭園には、多くの出迎えがいた。大公家の騎士たちが整列し、家令やメイド、庭師たちまでいる。全員が温かな眼差しを向けてくれている。


「ほらな、俺の言ったとおりだろ」


 ジークバルトに笑顔を向けられて、イザベラの胸が熱くなる。


「ジーク、わたしはオルフェス大公家のために、政務官として誠心誠意、務めさせていただきます」


「それは頼もしいな。でも、頼むから俺にもかまってくれ。溜まりに溜まった長年の想いが、決壊寸前だったからな。これでもかなり抑えている方だ」


「それは重そうですね」


 イザベラが笑うと、額に口づけが降ってきた。


「かなりだ。おそらくイザベラが考えている数十倍……いや数百倍、俺の愛は重い。がんばって、受け止めてくれ」


「望むところです」





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