表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の十一年  作者: 赤蜻蛉
2/3

衝突と撤退

カラシニコフを抱えた仲間が階段を降りて来た。何世代も前の銃だが、この組織が元々支配下に置いている工場の技術ではこのぐらいしか作れない。あと偉い人が設計図が何だのと言っていたが、詳しくは知らない。

「ホントに撃たれたの?」

「マジ。音は小さくて変わってたけど。ほら外の柱を見ろ。穴空いてるでしょ。射線が通らないようにこっちの壁の陰からな。」

「俺達だけで行くの?」

「いや、助けがたくさん来るよ。呼んでおいた。」

「で、敵はどこ?」

一息ついてから話した。

「まだわからん。そこに穴が空いてるから坂の上だと思うけど。あと、火炎瓶の蓋を開けておけ。ライターも取りやすいポッケに移してね。」

「こんなん使うの?」

「…この道で君たちよりは長くやってるから言っておくと、強い奴から見つかったら負けだ。互いに見える前に投げ込める何かがあるといい。」

その時外で銃声と悲鳴が響いた。


逃走が確定してラジオと予備の弾をリュックに戻して反対側の谷を見下ろして道を考えていると、すぐに敵の応援が来た。無線の連絡の時には走り出していたらしい。驚きはしたが、早くに気づけたおかげで最も得意な距離で戦えそうだった。予備の弾だけズボンのポケットに詰め込んで二脚を立てて石のブロックの後ろに立てて伏せた。ゾロゾロと来ていて、敵の後続が高速道路に隠れてまだ見えていなかった。堂々と駆けて来る姿は素人そのもので無線の用意周到さとギクシャクとしていて釈然としなかった。一応先頭集団は道の右端壁沿いを走っているが、後ろの人になるにつれて車道を走る人が多かった。橋の下から出て来る列が途切れた。20人は居ないが十分に多い。しばらくして開けた場所におびき寄せてから時に引き金を引いた。

『テテテテテ…』

流石にプレートアーマーは入れていないらしく、バタバタと倒れた。本当なら捕虜も取りたいが、大人数相手だとそうはいかない。手加減する余裕は一切ない。車道の敵はほぼ一掃したが、先頭の数人は交差点を曲がって隠れてしまった。交差点の建物の角から顔を出すのを待ち構えた。一人が顔を出したので数発軽い音を鳴らして撃ち込んだ。どこに当たったかはこの距離からは分からないが、彼は頭しか出していなかったからそういう事なのだろう。しばらく互いに何もしない時間が続いた。

『パーン、パーン、パーン、パーン』

甲高い銃声の直後に路面が光って、アスファルトが飛び散った。隣の交差点まで裏を通って動いていたみたいだった。二、三人物陰から撃って来ているようだった。視界の左端の方で何かが動いた。一階の窓から続々と建物から脱出していた。牽制で数発撃つと、直ぐに右から撃ってきた。急いで狙わずに撃ったから左側にある装填架の重さで狙いが狂ってしまって当たらなかった。右の人達はともかく、左の建物から脱出した人達には裏取りされる恐れもある。これ以上は無理そうだった。無理はしないに限る。装弾不良が無いのを確認して、熱くなった銃身を皮のカバーの上から掴んで一目散に逃げた。

今居た大通りは行かない。曲がりくねった小道に入った。街の中心部に向かって路地を走っていると、前の方から誰かが走って来る足音がした。もう裏が取られていたのだろうか。この短時間で自分が挟撃されてしまう相手の小隊長か分隊長の巧みな作戦に舌を巻いた。取り敢えずゴミ箱の陰に身を隠した。身を寄せた建物には半地下の玄関があった。そこに入ってゴミ箱の角から出て来た敵を決め撃ちできるように構えた。足音は角を曲がって来たのかどんどん大きくなっていく。

ゴミ箱から影が出て来た瞬間に体を捻りながら撃った。

『テッ』

間の抜けた発砲音と共に敵はその場に倒れた。

「よしっ」

軽機関銃なら苦手な接近戦を制して喜んだのも束の間、兵士が持っている銃と服装を見て青ざめた。

「衛、士?」

紺の防弾チョッキにM4カービン。一方だけでも衛士と分かる物だった。たまたま一緒に転移していて街にあっただけだが、今は制式採用されていてその他の人が持つ事すら禁止されている。つまり、偽物ではなく、間違いなくこの小柄な兵士は衛士だという事だった。

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

揺さぶっても反応が無い。脹脛に弾が当たったようだった。タオルを軽く膝上に巻いてその上からベルトできつく縛った。止血をしてから足を見ると、6.65mm弾自慢の貫通力で弾は足に残っていないみたいだった。呼吸は浅いがしていて、脈もあった。鼻と口を覆っているスカーフを外してみると、綺麗な顔が露わになった。

「ん⁉︎」

女子の衛士は見た事がない。しかし目の前で制服を纏っているのはどう見ても女子だった。もしもそんな衛士が居たら話題になっているはずだった。確かに衛士には表に出ない特殊部隊も存在しているのではないかと噂されているが、証拠も無く、都市伝説ぐらいだと皆思っている。彼女をそう決めつけるのはいくら何でも尚早だと思った。

しかしこの後どうするべきか。病院に連れて行ってしまっては間違いなく自分が捕まって処刑されてしまう。

傷の保護をさっとしながら呟いた。

「家か…」

街の外れにのびのびと過ごす為の別荘を持っていて、ここからなら人目を避けて行ける。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ