14: 巨大オーク(2)
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成長はやっぱりみんなでする方が良いと思う。一人取り残されて孤独を味わうことがなくていいから。
仲間なら猶更だ。みんなで傷を分かち合い、着実に成長する。そうやって本当に信頼できる仲間はできていくんだと思う。
それがかわいい女の子となんだから、オレのテンションも爆上がりだ!
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門前で巨大オークのウワサを聞いてから数日間、オレたちはいつものように依頼をこなしていた。オレたちがパーティーを組んで以来、かなりのFランクの依頼を達成してきたと思う。そのほとんどが採集の依頼ばっかりだったが、毎日真面目に取り組んできたオレの姿勢はギルドにも伝わっていると思うので、そろそろEランクにランクアップしても良い頃合いかもしれない。
そんなことを思いつつ、今日もオレたちは依頼を受けるためにギルドを訪れていた。今日もギルドは冒険者で溢れている。オレたちは多くの冒険者で全く見えなくなっている掲示板の方に行き、後ろの方からその群衆を眺めつつ、今日はどんな依頼を受けるか話し合う。
「アレン、今日はちょっと王都から離れた依頼にしない?」
「いいけど……どうしてだ?」
「そろそろアレンもEランクにランクアップするころだと思うの。
Eランクの依頼からは王都からちょっと離れる依頼も多いから、その時の練習をしときましょうよ」
「そう言えばそうだったな」
ルナリアの提案はオレたちの今後を考えると、当たり前のことだった。今後、オレのランクが上がるにつれて、オレたちが受けることができる依頼が増える。それに伴って、オレたちの活動範囲も自ずと広がってくる。Fランクまでは王都にすぐに帰ってくることができる場所までだったのが、Eランクになると少し党ですることも多くなるはずだ。その時に必要になってくる野宿のスキルなどを今の内から習得しておくのは得策だと思う。ただ、野宿にはそれ相応の危険も伴うので、軽い気持ちではダメだと思うが。
オレはルナリアと同じで、王都から離れた依頼を受けることにメリットを感じているので賛成だが、リーフィアはどうだろう? 前に恐ろしい体験をしているんだ。あの出来事が起きてからまだそんなに経っていないから、しばらくは王都から離れたくないかもしれない。そんなリーフィアを無理やり連れて行くのは必ず何かトラブルが生じるだろうし、そもそも、オレはリーフィアにもう二度とあんな思いをしてほしくない。
オレはリーフィアの方に身体を向けつつ、リーフィアの意志を聞くために尋ねる。
「リーフィアはどうだ? ちょっと王都から離れる依頼を受けてみるか?
ちなみに、オレは受けてもいいと思っている。ルナリアが言うように、そろそろEランクになれそうだし、今のうちに受けておくメリットは大きいと思うから」
リーフィアはオレの問いにニッコリと微笑みながら答えてくれた。
「はい……私もいいと思いますよ。
そろそろ、そんな頃だと思っていましたから」
リーフィアは口ではオレとルナリアの提案に乗ってくれている。だが、オレは見逃さなかった。一瞬、リーフィアが口ごもったことを。それに顔は微笑んではいるが、彼女の手は微かだが震えていた。まだまだリーフィアと長い付き合いとは言えないが、それでも彼女が無理をしていることぐらいわかる。おそらく、本音では行きたくないが、オレたちパーティーの事を考えて提案に乗ってくれているんだろう。そんな彼女の健気さに感謝しつつも、オレは彼女の本音を聞くために、少し優し気な口調でもう一度尋ねる。
「なぁ、リーフィア、何も今すぐ行かなきゃいけないってことはないんだから、怖かったら断ってもいいんだぞ。あの時はリーフィアが一番の被害者だったからな。
もう少し、間を置いてもいいと思うし……」
「ありがとうございます、アレンさん。
でも、私は受けても良い――いえ、受けたいです!」
リーフィアの返答はオレが予想していないものだった。普段おっとりしている彼女の顔つきからは考えることができないくらい真剣な表情をしている。その二つの瞳はまっすぐにオレを捉えていて、揺らぐことがない。彼女の瞳は彼女の決意の固さと覚悟をオレに伝えていた。
「心配してくれているのはうれしいです。でも、私はあのことを乗り越えなきゃいけないと思うんです。あのことを恐れているばかりじゃ、私たち――いえ、私は今の場所から一歩も成長ができないままだと思います。そんなのはイヤです! 二人が成長しているのに、私だけ取り残されるなんて……そんなのガマンできない! 私も二人と一緒に成長したい!」
ここまでリーフィアが感情を剝き出しにしてきたことなんて、今まであっただろうか。多分、オレと出会う前からなかったのかもしれない。事実、リーフィアの隣にいたルナリアもその顔に驚きの色を浮かべている。
「……いいのか?」
「はい、もちろん怖いのは怖いです。
でも、今回はしっかり準備します。
それに、アレンさんもいますしね」
リーフィアはどこかおどけた口調でオレに語り掛けてきた。緊張した表情から一転して、彼女は無邪気な笑みを浮かべていて、オレのことを信頼してくれていることがわかる。その表情のギャップにオレは心を奪われ、言葉を発することができなかった。
「――ちょっと、リーフィア、私のことも忘れないでよね。
私もリーフィアを絶対に守って見せるわ!」
「ふふ、ルナリアもありがとう。
期待しているわね」
長いこと会話に加わることができなかったのが不満だったのか、ルナリアが自分の存在を主張するように、リーフィアに抱き着く。リーフィアはそんなルナリアを優しく抱き返し、ルナリアの髪の毛をなでる。
その姿はまるで妹をあやす姉のようで、日頃とは立場が逆転している光景はオレに新鮮さを感じさせた。
「――わかった。
じゃあ、そろそろ依頼を見に行こうか」
オレたちは冒険者がまばらになった掲示板の前へと歩み寄った。
「セレナさん、こんにちは」
「あっ、アレンさん、こんにちは。
今日も依頼ですか? 精が出ますね」
今日も変わらず美人なセレナさんに依頼の手続きをしてもらう。オレが冒険者になって以来、毎日、セレナさんにお世話になっているので馴染んできたんだろう、セレナさんとも大分打ち解けてきた。
「あれ、今日はちょっと遠出するみたいですね。
何かあったんですか?」
「いや、そろそろオレもEランクにランクアップする頃だと思うので、その練習をしようかと」
「なるほど、良い判断だと思いますよ。
冒険者は何といっても経験がものを言いますからね。
今のうちに慣れておくのは賢明だと思います」
「はは、ありがとうございます」
「それに、魅力的な女の子が近くにいても我慢する練習にもなると思いますから……頑張ってくださいね」
セレナさんはルナリアとリーフィアには聞こえないように、オレに顔を近づけ小声でからかってきた。セレナさんは面白いものを見つけた時のような表情をしていた。
オレはセレナさんの言葉に恥ずかしさを覚えつつも、感情を顔に出さないように何とか頑張ったが、無駄だったようだ。セレナさんは我慢しているオレの表情を見てクスリと笑っている。
オレはセレナさんから逃げるように二人を連れて、ギルドから足早に出て行った。
日はかなり傾き、空を真っ赤に染め上げている。もう一時間ほどで完全に日は落ちてしまい、暗くなってしまうだろう。そんな中、オレたちは目的地へ向けて歩いていた。
今回オレたちが受けている依頼は、Fランクには珍しく討伐系の依頼だ。オレたちが出会った例の森から野道に出てくるゴブリン五匹以上の討伐。最近、頻繁に野道にゴブリンが出てくるそうで煩わしいらしい。
オレはあの森にもう一度行くことにどこか運命を感じつつ、目的地に向かっている。もうすぐ例の森の入り口に着くころだ。オレは緊張しつつも、どこか安心感を抱いていた。今回のオレたちは万全の準備をしている。オレは言うまでもなく、ルナリアとリーフィアも『魔法の鞄』の中に使えるものをいっぱい入れている。これで何があっても大丈夫だと思う。それは二人も同じみたいで、周囲を警戒しつつも和やかに会話をしている。
「――でも、リーフィア、私はラビットよりもオークの方がおいしいと思うわ!
何というか、モンスターならではの濃い味がいいと思うの」
「私はやっぱりラビットの方がおいしいと思うわよ。
やさしい繊細な味がするもの」
今は好みの肉について話し合っているみたいだ。そろそろ晩飯時だからかもしれない。ちなみにオレはラビットの方が好きだ。確かに、オークの肉もおいしいのだが、何といっても、初めて自分で狩った野生のラビットのおいしさを忘れることはできないし、未だにあれ以上の感動を味わったことはない。若干、思い出補正が掛かってしまっているのかもしれないが、まだまだあれを脅かす肉は現れていない。
そんなどうでも良いようなことを考えながら歩いていると、不意に、オレたちの目的地である森の方から男の悲鳴が聞こえた。
「――アレン!」「――アレンさん!」
「わかってる!」
オレたちは一瞬顔を見合わせ、すぐにその悲鳴が聞こえた方へと走り出した。
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