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ギルド社畜の転職日記  作者: 森永 ロン
第六章 社畜、貴族になる
178/180

31.5: 褥

「――ひさしぶりに会いに来てくれて嬉しいわ」


 うっすらと汗が浮かんだ柔肌がオレの疲れた身体を包み込む。安心感を抱かせるとともに、オレの中の抑えがたい衝動を強烈に刺激する。もう一度、もう一度この衝動を目の前の女性に開放したい。


「ふふ、元気ね」


 オレの中の再び男としての本能を暴れさせたい衝動に気が付いた女性――『楽園の女神』のヴァネッサさんは、優しく微笑みながらも、強烈な色気を醸し出して妖しくオレを誘惑する。その姿にオレの身体を走る血液の流れがどんどん速くなり、もうそのことしか考えられないようになってしまう。


「ほら、おいで」


 腕を開いてオレを迎え入れようとするヴァネッサさんに我慢の限界がきたオレは、その甘い誘惑に素直に従い、その柔肌を思う存分に堪能する。


「お友達がいるのに悪い子ね」


 オレの耳元でヴァネッサさんが艶めかしい声で何かしらをささやいたようだが、オレの頭にはもうすでに入ってこない。オレに組み敷かれている女性を蹂躙することに夢中になっていた。


 ルナリアたちが王女の旅行について説明した後、準備を終えたオレはルナリアたちに『散歩してくる』と告げ、多くの娼館がひしめく花街へと足を運んでいた。


 多くの魅力的な娼婦がオレの事を誘惑してくる中、迷いながらもオレは『楽園の女神』へと入り、オレの初めてを捧げたヴァネッサさんを指名した。ヴァネッサさんを待っている間、久しぶりなのでヴァネッサさんがオレの事を覚えているか不安であったが、オレを見たヴァネッサさんはすぐにオレの名前を呼んでくれた。そのことが嬉しくなり、有頂天になったオレは、そのまま部屋に移動するや否やヴァネッサさんに襲いかかってしまった。


 オレがこうしてヴァネッサさんの下に訪れたのは訳があるのだ。王女との旅行はオレ以外全員女性。それもみな平均以上の美貌の持ち主たちだ。そんな中でオレの若い肉体に眠る性欲を抑えることは難しいと思ったのだ。もし王女に何かしでかしたらオレの首なんて簡単にとんでしまうだろう。あの王女なら笑って許してくれるかもしれないが、許すのと引き換えに絶対にオレが嫌がる条件を提示してくるはずだ。ただでさえ近衛騎士になってしまって困っているのに、これ以上面倒が増えるとオレの容量が崩壊してしまう。


 それを解決するためには、一度スッキリしてしまえば良い。そうすれば万が一もなくなるだろう。


 そう思ってウキウキ気分でヴァネッサさんの下に足を運んだが、オレの考えは大正解。こんなにもヴァネッサさんを堪能することが出来るなんて。


「もう、そんなに情熱的にされたら、こっちまで我慢できなくなるじゃない」


 鼓動がさらに速くなる。


 ヴァネッサさんはモンスターと化したオレを誘導し、手の上で転がしている。それがオレの自尊心を兆列に刺激し、一矢報いたいと意気込むが、経験値が圧倒的に劣っているオレではどうにもできない。オレが主導しているようで全てヴァネッサさんに操られている。


 オレは悔しさを感じつつも、甘く走る刺激に身を任せてヴァネッサさんに欲望をぶつけるのであった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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