幕間 見習いメイドの成長日記(1)
「いいですか?
メイドたるもの、主人が今何をしたいのか、何をすれば主人の役に立つのかを常に考えてなければなりません」
真剣な表情で語るイザベルさんに、私も思わずゴクリと息を飲む。
「主人から命令されてからでは遅いのです。常に主人の同行を把握し、一歩前からサポートする。これがメイドに求められることです」
じゃあ時々イザベルさんがゴルギアスさんのことをぞんざいに扱うのも、ゴルギアスさんがそれを求めているから? こどもの私には分からないけど、大人はそれが普通なのかな? 私もご主人さまにやってあげた方が良いのかもしれないけど、もし嫌われたらどうしよう。
「そのためにも、私たちメイドに求められるものは多岐にわたります。
礼儀はもちろんのこと、主人を如何なる危険からも守り抜く戦闘力、主人が最適な判断が出来るようにあらゆる情報を提供する幅広い知識、主人のために泥を被ることが出来る奉仕の心など、挙げれば切りがありません」
今の私には全く足りていないものが多く、ちゃんと一人前のメイドになれるのか少しだけ心配になってしまう。
でも、私だってご主人さまのためならなんだってすることが出来る。その思いだけは誰にも負けない。
「一人前のメイドになるには並大抵の努力では無理です。それに加えて、あなたはまだ子供。他の者たちより厳しい道のりであることは確定しています」
そんなこと分かっている。それでも、私には譲れないものがある。私の生きる理由、私はご主人さまのお役に立ちたい。
「それでもあなたはメイドを目指しますか?」
イザベルさんが真剣な眼差しで私を見つめる。
私はその視線から逃げることなく真っ直ぐに見つめかえす。
「はい!」
イザベルさんは私の反応に満足げに微笑んだ。
「では、始めましょうか」
こうして、私の見習いメイド生活が始まった。
読んでいただき、ありがとうございました。