可愛い娘のために
俺の娘は可愛い。
まず顔立ちが整っているし、俺のことを心から愛してくれている。
その美しい顔でにっこりと笑って俺を見つめ、
「ありがとうパパ、大好き」
などと言われた日にはもう、たまらない。
「お前は本当に可愛いなあ。お前のためなら何でもできるよ」
いつの間にかそれが俺の口癖になっていた。
将来の夢はパパのお嫁さん。
初めてそう言われた時は嬉しかった。
思春期を迎えてまでそんなこと言ってるのはヤバいんじゃないの、などと妻は言うが、きっと焼きもちを焼いているのだろう。
親子の仲は、悪いよりは良い方がいいに決まっている。
しかし、父娘の仲が良い我が家も、母娘の仲は最悪だったようだ。
ある日、娘がカッターで妻の首を切った。
大量の血が噴き出す非現実的な光景を、俺は呆然と眺めてしまった。
そんな俺に、娘は血塗れの顔でにっこりと笑いかけた。
「邪魔者は消えたよ。死体を隠すの手伝って。……私のためなら、何でもしてくれるんでしょう?」