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血に塗れた銀狐が自身の幸せを見つけるまで  作者: 骸崎 ミウ
銀狐と炎猫の出会い
7/33

07

そこは真っ暗な場所だった。



自分が立っているのか座っているのかはっきりとしない。



ふと、視線を感じて振り返る。



そこにはいつか見た身体が剣の寄せ集めで出来た獣がいた。



「やっぱり、ひとりぼっちになっちゃったよ」



私は独り言の様に獣にそう言った。すると、獣は側に近寄って、カチカチと音を鳴らした。そして、刃のない鼻先で私の頭に擦り寄った。



「慰めてくれるの?………………ありがとう」



私は怪我しない様に獣の頭を撫でる。ひんやりとしていて気持ち良かった。



「ねぇ、貴方は私の側に居てくれる?」



私がそう聞くと獣はこくりと頷いた。



カシャン、カシャン……………



そして、そのまま獣はそう音を鳴らしながら私の中に入っていき、そこで意識が途切れた。




***



暖かな日差しが瞼を指して目を開けるとそこは真っ白な天井だった。



…………身体がうまく動かせない。



身体を少し起こすだけでもひりつく様な痛みが全身に走った。見ると私はベッドに寝かされていた様だ。白くて清潔感のある部屋に全身を包帯を巻かれた私。



そこは病室だった。



「………………あぁ、そっか」



私はここにいる前のことを思い出した。



あの時、私は異能力を解放して頭の中がぐちゃぐちゃになって、けど、それでも姉を守ろうという感情だけが残っていて、それで………………



「お、気がついたのね。調子はどう小鈴ちゃん?」



と入り口から声をかけられた。



顔を上げるとそこには母によく似た女性がいた。ただ、母は吊り目であるに大して、彼女は垂れ目で雰囲気が穏やかだ。



それもそのはず。彼女の名前は本条 千尋。母の妹でつまり私の叔母だ。彼女は何故か私に対して優しくしてくれる。



「…………叔母さん?でも、なんで」



叔母は軍医をしている為に民間の病院にはいない筈だ。それなのに、何故ここに?



「それはここが軍属病院だからよ。貴女、1週間も昏睡状態だったんだから」



叔母にそう言われて、さっきから感じる身体の気怠さに納得した。けど、何故軍属病院?



そして、ふと右手に違和感を感じてシーツから出して見た。私はその右手を見て頭が真っ白になった。



「ーーーーーーーーえ?」



その右手はファンタジー物の黒騎士の籠手の様に鋭く、やけに金属質でゴツゴツと角ばっていた。例えるなら金属の甲殻を纏った化け物の手ッーーーー。



とそこまで考えていたら部屋中にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。



「小鈴ちゃん!小鈴ちゃんッ!!しっかりして!」



「ーーーーッハァッ、ハァッ、ハァッ」



気づいたら私は過呼吸になっていた。



頭の中がキリキリと鳴っていて、身体中が熱くなってッ……………。



「ーーーー小鈴ッ!!」



と入り口からお爺ちゃんの声が聞こえてきた。



「お、爺ちゃ、ん?」



「小鈴、何も考えるな。頭を空っぽにして息を整えるのじゃ。今はそれだけ専念しなさい」



お爺ちゃんはそう言って私の肩に手を添える。



意識が朦朧とする中、何も考えない様にしていると。



カシャン、カシャン……………



夢で聞いたあの音が聞こえてきた。その音を聞いていると不思議と気持ちが落ち着いてきた。さっきまでバクバクとうるさかった心臓の鼓動が収まっていき、呼吸も安定してきた。



「ハァ…………ハァ…………」



「ゆっくり深呼吸して。大丈夫だから、大丈夫だからね?」



「………………もう、大丈夫。落ち着いた」



私は深呼吸して冴えた頭で考えて、今の私の身体の変異について1番よく知っているだろう2人に向かって「説明して」と短く言った。



「…………わかった。だが、ここでは駄目じゃ。場所を移す」



「私、動けないんだけど」



「車椅子で運ぶから」



叔母はそう言って、近くの備え付けの車椅子を出して私を抱えて座らせた。その時、ふと視界の端に写った髪が白くなっているのと腰から生えている尾が大きくなり、数が増えているのに気づいた。



「…………………………」



私、どうなっちゃったんだろう。

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