2.5ー4
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…………………………?
備えていた衝撃が来ない。不審に思って閉じていた目を開けると…………
「ーーーーぇ?」
目の前には金属の化け物がいて、ヴィランの攻撃を防いでいた。そして、金属の化け物はヴィランの脚に噛み付くとそのまま持ち上げて投げ飛ばした。
『ルアアァァァ!?』
ヴィランは驚愕の念の混じった叫びを発して木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされていった。
その金属の化け物は体長は10メートルを超える九尾の様な見た目をしており、全身はよく見るとナイフなどの凶器で出来ていた。そして9本の尾の先は大鎌の様な凶悪な物になっている。
(………………な、なんで、なんでここに?)
その金属の化け物には私には見覚えがあり過ぎた。でも、なんで……
『ギィヤヤヤヤヤヤッ!!!』
金属の化け物は私を庇う様に前に出るとヴィランに向かって咆哮し、体勢を立て直したヴィランに向かって躍りかかる。
そこからは蹂躙だった。
金属の化け物はヴィランの翼を力任せにもぎ取り、動けなくした後に喉元を噛み砕きズタズタに切り刻んでいった。
そしてヴィランは絶命のサインである赤黒い液体へ変わり果てた。
「ーーーね、ねぇ?小鈴、なの?」
私は返り血の様な物を浴びた金属の化け物に向かって聞いてみた。
『…………………』
金属の化け物は何も言わず、ただジッと私の方を見ている。ゆらゆらと揺れる尾は何やら不安がっている様だった。
「ねぇ、答えて?こすッーーー」
もう一度問おうとした時、首筋に鋭い痛みが走ったかと思うと途端声が出なくなった。そして、何故か身体が石になった様に動けなくなった。
「ーーーやっぱり来たねぇ、銀狐?」
バサリッという音と共に現れたのは真っ黒な衣装の夜神隊長だった。
「あぁ、ちょっと薬を打ち込んだよ。なぁに、少し身体が麻痺するだけだ。それより……よく場所がわかったねぇ、小鈴?」
「……………貴女に私の異能で作った金属粉を纏わせた。私はそれを追ってきただけ」
夜神隊長に名前を呼ばれた小鈴は金属の化け物の外殻を粉状にして消して現れた。
「なるほど………そういう使い方もできるんだねぇ。あぁ、もう私は何もしないよ。君が来た時点でもう終わったからね」
そう言って夜神隊長は手を叩くと周りの景色はぐにゃりと歪み、いつも目にする住宅街へと戻った。そうして小鈴は私に近づくと動けない私を背負って歩き出した。夜神隊長もそれに続く様に歩き出した。
小鈴の身体は服越しでもわかるくらい引き締まっていた。
「………ボス。いくらなんでもアレはやり過ぎです」
「悪かったよ。まさかあの個体が出るとは思わなかったからねぇ。一応、危険ならちゃんと止めようとはしたよぉ?」
声に棘がある小鈴に対して夜神隊長はどこ吹く風の様にのらりくらりとしている。
「というか小鈴。君、お姉さんの家わかるのかい?」
「祖父に教えてもらいました。1ヶ月前に聞いたというか聞かされた情報ですので引っ越したりしてなければ3年前から変わらず実家暮らしの筈です」
「ふーん…………そうなのかい?」
と夜神隊長が聞いてくる。身体が痺れて動けない私にどう反応すればいいのか……。ちなみに私は実家通いだ。
「ふむ………どうやら変わっていないみたいだね。さぁ、行こうじゃないか」
どういうわけか夜神隊長は私の言いたいことがわかったみたいだ。
そうして私は小鈴に背負われて帰路についた。




