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〜side日暮 燐〜
「うわっ………すんごいことなってるわ」
鬼娘との激闘の末に勝利した私は小鈴の援護に行くべく爆音がなる方へと向かった。するとそこには世界の終末かと思える様な悲惨な現状があった。
吹き荒れる氷柱と剣の豪雨にそれらがぶつかり合い弾けて爆発する音。そしてその中央には体長10メートルはあるだろう金属と氷の怪獣が噛み付いたり引っ掻いたりと怪獣戦争をしていた。
「おぉーー…………アルジェも楽しそーなのだ」
と私の小脇に抱えられている鬼娘こと柊木 彩芽は気怠げそうにそう言った。
彩芽はどうやら酒類を摂取する事でそれを起点に身体能力を強化する異能を持っているみたいだった。ただ、流石に限度があるみたいで先程テキーラをラッパ飲みした瞬間、ぶっ倒れた。
今は随分と回復してきた様で会話くらいなら可能だ。
「アルジェって、あの氷の怪獣?」
「そーそー、アルジェは氷系統の異能使いの元傭兵で戦闘狂なんだー。だから、強い人には片っ端から喧嘩ふっかけてるのー」
「元傭兵って………ガチのやつじゃん。大丈夫なのかなぁ」
助太刀に行こうにも2人とも完全に周りが見えていない様であの間に入ったら最後巻き込まれるのは確実だ。ーーーとそのとき、後ろから複数の足音が聞こえてきた。
振り返るとそこには2人の少女達がやって来ていた。
1人は背が130センチと少しくらいで赤の癖っ毛を肩口まで伸ばして後ろに束ねている。容姿は人懐っこい猫の様な感じで背も相まって幼く見える。そして、背には身の丈以上のでっかい旗を背負っており、旗の部分には『常在戦場ッ!!!』とでかでかと達筆に書かれており、頭には丸みのある小さな狸耳に腰からは太くて丸い尻尾が生えている。
もう1人は背が170センチと高く、ストレートの漆黒の髪を腰まで伸ばしている。容姿は人形の様に無表情でハイライトの無い金眼が少し不気味である。服装も真っ黒で一切の露出は無い。背には錆色の2メートル以上ある鋏を背負っており、耳は尖って腰からは黒い鰐の様な尻尾が生えていた。
「どーもどーも!こんにちはー!あ、私たち戦闘能力あんまり無いからドンパチやる気ないよ〜」
とたぬきっ子がそう言った。それに準じる様に鰐?娘が頷いた。
「了解。………んで?君たちもゲンさんが言っていたサプライズの要因?」
「ゲンさん?………あぁ、あの熊の人か。そうだよ〜、私たちが今回その人の上司である龍善さんに送り込まれた第5世代。私は葛葉 姫乃でおねーさんが抱えている酒飲み鬼のパートナー。で、隣のはノワールっていってあそこで怪獣戦争している氷の怪獣のパートナーだよ」
「…………………よろしく」
とたぬきっ子………葛葉は隣のノワールと一緒に自己紹介した。
見た目通りの明るい性格の葛葉に対してノワールは物静かな様だ。
「自己紹介どうも。私は日暮 燐っていうの。で、あそこの金属の怪獣が私のパートナーの小鈴っていうの」
「ほうほうそれはどうも。しっかし、あの狂犬とやり合うなんてかなりの実力者だね〜。見た感じ、金属系統の異能使いかな?で燐は身体強化系?」
「まぁ、そんなところ。貴女達は?」
「私は補助系だよ。旗を振り回して全体を鼓舞したり、周りの人の自然回復を強化したりする根っからのサポート役。で、ノワールは…………なんだっけ?」
「………………私は影。影に潜り、奇襲をかける。…………あとは影を実体化させる」
とノワールはそう言うと自身の影を起き上がらせて形だけ同じ人型を作った。
「おぉ………それは。私のは熱による身体強化と体液を可燃性の液体に変換させる異能だよ」
「なるほどねぇ…………。じゃあ、こんな寒い場所だとホッカイロになるわけだ!」
「いやそれがねぇ?この異能、私自身には適応されなくて寒いままなんだよ。周りは熱くなるけど」
「へぇ、そうなん『ドガーーーーーンッッ!!!!』ッうへぇ!?なになに!?」
と葛葉と話していたら急に大爆発が起きて山が揺れた。爆発のした方へ見てみるとこちらに向かって全速力で走ってきている2匹の怪獣。
『良かった近くにいて!早く乗って!』
「え、ちょっと小鈴っにぎゃああ!?」
酷く慌てた様子の小鈴に首根っこ掴まれてそのまま背に乗せられた。
『シスター!早くしないと!』
『わかってるよ!しっかり掴まってて!』
とそのまま小鈴は私たちを背に乗せたまま横方向に向かって走り出した。
「ちょっとちょっと!小鈴一体どうしたの!?」
『雪崩起こしちゃった!だから逃げる!』
「はぁあああああ!?!?何やってんの!?」
そうして私たちは迫り来る雪の波から逃げた。




