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血に塗れた銀狐が自身の幸せを見つけるまで  作者: 骸崎 ミウ
新たな同胞との出会い
19/33

2ー1

炎帝国軍南方山岳支部には毎年恒例の訓練がある。



極寒の雪山の中での対大型ヴィラン想定の防衛訓練だ。簡単に言うと3つの拠点に分かれて防衛して、防衛対象を守り切ると言う内容だ。



「よしお前ら!!気合いはいいかッ!!今年こそ勝てなければテメェらと俺の財布すっからかんになるからなッ!!」



『『オォーーーーッ!!!』』



と声を張り上げるのは熊顔の五十嵐 玄角陸軍大佐であり、それに応えるのは支部に配属されている屈強な軍人だ。両者の顔には必死さが見受けらる。



「………………たかが訓練でここまで気合い入れるもんか普通」



と集団の中で比較的年若い男がそうぼやいた。



「なんだお前、これが初めてか?」



とその年若い男にくたびれた中年が話しかけた。



「え、えぇ、そうですが。そもそもヴィラン役って誰がするんですか?」



「五十嵐大佐と暮らしてる第5世代だ。人数は2人で1人は身体強化系、もう1人は金属系だ。2人ともめちゃくちゃ強くてなぁ………。連携もエグくて俺たちは何度も負け越しているんだ」



くたびれた中年は遠い目をしてそう言った。



「そ、そんなにですか…………」



言わずもがな、炎帝国軍南方山岳支部に配属される者はある意味エリートである。鍛えに鍛え抜いて、一流と呼べる集団が負け越しているとは考えられない。



「お前らッ!早く配置に付けッ!"猛獣共"が来るぞッ!!もたもたするなぁ!!」



と玄角の怒声が響き渡る。それに彼らは慌てて配置につき、山岳支部恒例の極寒訓練が始まった。




***




私が燐と出会って3年が経過した。



今思えばあっという間だった。



山狩りや山菜採りに行ったり、燐と修行したり、玄角さんに怒られて2人共々追いかけられたりと色々あった。



燐とは随分と仲が良くなって、今では無くてはならない存在だ。なんというか、安心するという感じだ。



「ぶぇっくしょん!!……………うぅ、寒い。ねぇ、小鈴ぅ。異能使っていい?」



と隣の燐が大きなくしゃみをして私に聞いてきた。



「駄目だよ。相手が温度感知(サーモグラフィー)使っているかもしれないし、まだ始まって無いんだよ?我慢して」



「えぇーーー……………」



現在私達は軍の対大型ヴィラン想定防衛訓練のヴィラン役として事前に作ったかまくらの中で待機している。



もちろんこれは相手の軍人さん達には知られていない………筈だ。



この辺りは冬になると一面銀世界となり、それはそれは綺麗な場所になる。けれど、日中でも気温がマイナスが当たり前で夜には高確率で山から大風が吹雪いて極寒の地獄となる。



そんな場所で行われる防衛訓練は苛烈極まるのだ。



「小鈴ぅ〜、尻尾貸してよ〜」



と燐は弱々しい声で私に言ってきた。



燐は猫系の外見異能の為か寒いのが大の苦手だ。冬になると1日を炬燵の中で過ごすなんて当たり前で頭だけを出してのほほんとしているその姿はまさに猫である。



私の場合はもふもふマシュマロ冬毛状態となり、手入れが大変となる。あとは寒い中でも問題なく活動できるということか。



「またぁ?………はいどうぞ」



私は渋々といった感じで尻尾を1本貸し出す。この3年で燐は定期的に私の尻尾を求めてくる様になった。



基本的には枕か何か嫌なことがあった時に抱きついてくる。寒い日は湯たんぽ替わり。何度も貸し出した結果、もう慣れてしまった。あ、燐以外の人には絶対に触らせないから。



「はぁ〜〜、あったかい」



「そりゃどうも」



そうして私たちはのんびりと過ごしていると。



『ーーー燐、小鈴!聞こえるか!応答しろ!』



と隠れる前に手渡された通信機から玄角さんの声が聞こえてきた。



「聞こえるよ玄角さん。準備はできたの?」



私は通信機を手にして応答する。



『おう!準備は出来たぜ。今回はお前達にサプライズがあるから楽しめよ!始めるのはいつでもいいからな!』



とここで玄角さんからの通信が途切れた。



「…………サプライズ?なんのことだろう」



「別にそんなの気にしなくてもいいよ。ーーーーさぁて、狩りの時間だよ小鈴?」



燐はそう言ってその群青色はギラギラと輝き、荒々しい猛獣の様な気配を滾らせた。



「ーーーーそうだね。やろうか」



私は身体の内側が冷たくなって、感覚が研ぎ澄まされていくのを感じながらそう答えた。



さぁ、狩りの時間だ。

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