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血に塗れた銀狐が自身の幸せを見つけるまで  作者: 骸崎 ミウ
銀狐と炎猫の出会い
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あれから1ヶ月経った。



身体の傷は叔母の異能で治してもらい、あとは私の異能の精密検査をしていた。



叔母の異能は全異能の中でも稀有な『完全治癒』であり、どの様な傷でも瞬時に癒すことができる。ただし、対象に意識が無いと効果が無く、部位欠損レベルの治癒には激痛が伴うそうだ。



精密検査は私の異能である『金属を操る能力』がどこまで適応されるかというものだ。



結果として、1番安定したのは私の元の異能で作った武器類でこれは自分の手足の延長の様に自由自在に操作できた。砕いて鉄粉にして纏ったり、拘束したりとなんでもできる。また、金属によって操り易さも変わり、鋼や鉄などよく見かける金属は粘土みたいにグニャグニャに操れて、貴金属類は砂状でしかならなかった。



また、金属に不純物(非金属)が含まれているほど操り難くなり、金属の割合が全体の半分以下になると浮かせて飛ばすくらいしか出来なくなる。まぁ、それでも凶器になり得るのは変わりないが。



ちなみに生物に対しては何故か血液中の鉄分を分離して操るという、どこかで見たことある様な形になっている。



こうして新しい異能に慣れてきた頃、祖父がこんな事を言い出した。



「ーーーー他の第5世代と暮らす?」



「そうじゃ。そろそろ、お前もパートナーを見つけて行動せねばならんのじゃ」



祖父の話によると現在、この国の軍隊はワンツーマンを基本とする10人編成でヴィランの討伐や犯罪の抑圧を行っている。このご時世、警察は軍に吸収されて軍警となって、私はそこの配属の予定になっている。



「でも、なんで第5世代と?別にパートナーなら第4世代でもいいんじゃ………」



「パートナーはその者同士の力が釣り合う事が前提条件じゃ。故にお前は儂が保護しておる第5世代と組むことになっておる。なに、心配するな。お前のパートナー候補は同性じゃ」



「いや、別にそこが心配じゃないんだけど……」



まぁ、いつかパートナーが出来るのはわかっていたけど、………………怖いと感じてしまう。



"あの日"、私が第5世代に覚醒した日。私は大好きだった姉に刺されて殺されかけた。



あの状況を客観的に見れば、姉の行動は別に責めるものではない。だから、私は姉を恨まないし憎まない。姉は"私"という脅威から自分の身を守っただけなのだから。



けれど、"拒絶された"ということが私の内側にあの時刺された剣になって突き刺さってジクジクと痛んでいる。



他人と深く関わるのは怖い。拒絶されたら、自分を否定されたら怖い。



だから、目が覚めた日に姉に出会った時、異能力が暴走して姉を襲った。拒絶されたから、また拒絶されて否定されるのが心底恐ろしかったから。



あの時鳴った"あの音"はあれからも鳴り続けている。決まって私の精神が乱れた時にだ。そうなれば私はまた暴走してしまう。誰かを傷つけてしまう。



それゆえに私は他人と距離を置いて、深く関わらない様にしている。



「移動は明日じゃ。お前の荷物は既に準備しておるからの」



祖父はそう言って、私の頭を撫でて去っていった。



……………その日の晩。私はぼんやりて月を眺めながら明日に会う予定のパートナー候補について考えた。



一応、資料を手渡されているからどの様な異能を持っているのかわかる。



ーーーー日暮(ひぐらし) (りん) 16歳。



私の1つ歳上で外見異能は黒猫から転位した『猫又型』。内面異能は『自身の体液を発火性の高い液体に変換する能力』と『熱を発生させて身体能力を強化する異能』。《魂武具(ソウルウェポン)》は確認数が非常に少ない『機械型・大型チェンソー』。



元々、孤児であり12歳まで孤児院で暮らしていたが、国の精密検査で第5世代と発覚し保護された。現在は祖父の部下の指導の元、人里離れた山中で伸び伸びと暮らしているらしい。



祖父も時々会いにいくそうだが、非常に明るくハキハキとしていると言っていた。



私とは正反対な性格だ。



一体、どんな人物なのか…………




***




〜とある山中の家屋にて〜



「おい燐!話があるからちょっとこっち来い!」



「ん〜?話ってなにさ、ゲンさん」



「明日、お前のパートナー候補が来るからな。今度はちゃんとしろ」



「またぁ?もう何回目?いくら第4世代で強くても割に合わないの、上の爺さん達はいつになったら気づくのさ」



「まぁ、お偉いさんも第5世代としてのお前の力が欲しいからなぁ。だが、今回はそのお偉いさんからの差金じゃねぇ。本条の爺さんからだ」



「え!マジで!?じゃ、じゃあもしかして……」



「あぁ、明日来るのはお前と同じ第5世代だ。なんでも爺さんのお孫さんらしい。ほらこれが資料だ」



「なになに?…………おぉ!すっごく可愛い子!この子本当に本条爺ちゃんの孫!?すっごくいいッ!!」



「大声出すなって、………ったくよぉ。あぁ、それと本条の爺さんがその子について言っていたんだが、その子ちぃと問題を抱えていてな」



「ん?問題?異能力が暴走しやすいとか?」



「いや、異能力に関しては優秀だ。ただ、精神的にアレでな。………お前、1ヶ月くらい前にあった軍の暴走は聞いたよな?」



「そりゃあ、聞いたけど、…………まさか、その軍を全滅させたのって、この子?」



「あぁ、そうだ。異能力も《魂武具(ソウルウェポン)》も使う暇もなく全員ミンチにされててな。あれほど苛烈なのは見た事無かったぞ。お前と良い勝負していたなぁ。………まぁ、それも実の姉を守る為だったらしいが、その実の姉に拒絶され殺されかけてな。以来、人と関わるのを避ける様になったそうだ。加えて、元々自虐的で自分を過小評価する性格だったから、余計に自分の殻に引き篭もるようになったわけだ」



「つまり私はこの子の信用を勝ち取ればいいというかわけだね!」



「まぁ、そういうことだな。……………できるか?」



「それはわからないよ。信用するかしないはあの子が決める事だから。私はこの子を裏切らない様にするだけ」



「そうか…………なら、頼んだぞ」



「了解ですっ!」


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