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「は~~~いこんにちわ~~~あなた死んじゃいました~~~!!」


朗らかで可愛らしい声、でも無駄にデカい音量にはっと気が付くと、わたしは

それまで眠っていたこと、そして今、目覚めたのだと瞬間的に理解した。

でも今までどうしてたんだろう。全く記憶がない。


「ここ、どこ?」


はっきりしない頭で回りを見渡すが、少なくとも知っている場所ではないようだ。

とりあえず直前にデカい声が聞こえたから、誰かいるだろうとは思ったのだけれ

ども・・・・・・あ、いた。

どうも寝てたらしいわたしが起き上がると、頭の位置の後ろ側に金髪のきれいな

女の人・・・いや、女の子かな?が立っていた。


「どうも~~~」


金髪の女の子はニコニコしながら手を振ってくる。けど知らない人だし、

とりあえず会釈だけ適当に。


「目が覚めたみたいですね、愛野茉美さん。あなたは死んでしまいました」

「はぁ」


死んでしまったそうだ。何で死んだんだっけ?


「交通事故です。不幸な事故でした」

「そうなんですか・・・」

「なんかね、イヤホンで音楽聞きながらスマホいじってた宅配自転車に引かれて、

頭打って死んじゃいました!」

「そう・・・なんですか・・・まあわたしがアイツら嫌いなのは確かですけど、

あなたもですか」

「いいえ!私は別に嫌いなわけじゃないですよ!ここまで運んでこないのは

どうかと思いますけど!」

「そりゃ、来れないでしょうね・・・というか、ここ、どこですか?」


死んじゃったらしいけど、病院ではなさそうだ。

なんかどことなく『学校』みたいな風情がある。


「ここは天界の外れにある『天界相談所』ていう建物です!簡易裁判所みたいな感じですかねぇ」


裁判所行ったことないと思うので分からないけど、こういう感じ・・・

いや、違うんじゃないかな。記憶にないけど。

建物の内装だけ見ると、昭和50年代に建築されました、的な佇まいというか、

築年数を感じる。

内装は普通のオフィスの応接室みたい。築40年でところどころリフォームされてる感がある。

でもこのフロアには、カーペットが敷かれた床以外、他に特に何もない。

部屋の端っこに机が置いてあるだけだ。

私はその床に寝ていたらしい。


「不幸な事故で人生を終えてしまった可哀想なあなたに、ボーナス特典として、

これからは新しい人生を送ってもらおうと思います!」


女の子はスマイルを浮かべながら、変わらないテンションで要件を伝えてくる。


「えっと・・・あなたは?」

「あ、申し遅れました。私は『神』です!まあ女神ですね!」


この人、テンション高いなぁ。元気な人苦手なんだけど。

しかし女神ときたか。まあ死んじゃったと聞いてから予想はしていたが。

とするとこの展開は、よ~~~くある『転生したら〇〇」系のやつだ。

まああんまり死んだ気はしないし、まだ受け入れられてないんだけど、そうかぁ。

私にもようやくチャンスが巡ってきたかぁ!

生きてた間何してたかまったく思い出せないけど、こういう『人生の転機』って必要よねぇ。

やっぱ冒険者かな。まあ私は剣でどうのこのは似合わないし。

魔法系のチート能力がいいかな。

あ、でもそれなら聖女様系の方がアリかな。なんていうか、チヤホヤされたい!

悪役令嬢ってのも散々流行ったけど、アレはなんか気を揉む相手が多そうだし、

できれば勘弁願いたい。

こんなことは覚えてるというかスラスラ知識が出てくるのに、肝心の生きていた

時の記憶が一切湧いて出てこない。

自分に関することは、名前しか分からないのだ。

そんな私に、目の前の金髪の女の子は告げる。


「あなたにはこれから、異世界に転生!」


きたぜ、ぬるりと。


「をさせる女神の役をやってもらいます!!」


ん?今なんつった?


「助女神です」

「じょめがみ・・・・・・ってナニ?」

「助教授とか助監督とかと同じノリで、女神の助手は助女神です!そして女神は私!!」

「助教授って、もう今言わないんじゃ・・・」

「助女神は!あなたの世界でいう西暦2007年に制定されました!当初は多忙な女神の」

「准教授のノリで話すのなら、准女神とかじゃダメなんですか?」

「ダメです。なんですか准女神って。そんな言葉はありません!それに『助女神』ってなんか『助平女神』の略みたいでソソるし」

「なおさらやめてください!ていうか、え、そんなのが特典なんですか?私働きたくないんですけど」

「訓読みして”すけめがみ”!探せばこういう同人エロゲありそうですよね!

「し ら ん ! !」


なにこれ。死んじゃったとはいえ死後の世界の身の振り方が、この女の助手をやることなの? 


「まあ本当は、異世界に転生させちゃった方が楽なんですけどね。私もそろそろ助手を雇って、後任を育成しないとなって女神会議で言われちゃっいまして!とりあえず異世界のバランス調整は私がやりますけど、異世界送りする役は誰かにやって貰おうと思ってたときに、ちょうど良さそうな人が死んでくれたってわけでした!」


急にあらましを話されても、ノリについていけないんですけど。

・・・ていうか、転生してチートでチヤホヤされてウハウハするのが特典なんじゃないのかと。

それをなんか・・・・・・区役所の小役人か派遣会社の従業員みたいなことするのが特典とか言われても嬉しくない。


「まあ転生してチートでウハウハみたいなのに比べたら面白くないと思っているかもだけど、アレはアレで途中で飽きると思いますよ。みんなそうだし。で、飽きないまま目標達成しちゃうと、今度は人格が歪んでくるんですよ!」


そういうもんか・・・まあ分かる気はする。


「過ぎた力は周囲の人間の自分への見方も変えてしまう、ってことですか?遜った人間ばかりが近くにいると、性格も尊大になってくるのは見たことある気はします」


記憶はないが。


「ん~~~~まあそれもあるんですけどね。まあその辺は見てれば分かります!

それにチート能力とかチート武器とか持って転生するよりも、もっと良い特典もあるし、とりあえずやってみましょうよ!」

「もっと良い特典ってなんですか?」

「それは今は秘密。やってくれたらそのうち教えますよ」

「これ、断ったらどうなるんですか?」

「う~ん・・・あなたの場合は、72%の確率で地球の何処かに生まれ変わり。地獄行きが25%、残りの3%が天国行きですね!」

「え!?天国に行ける可能性は3%しかないんですか?」

「ちょっと生きてた時に積んでた『徳』が少ないんですよ。だから生まれ変わって徳積みの続きをやるか、1/4の確率の地獄へ行くか。

3%の天国をギャンブルして引くか・・・ですね!」

「それってどうやって決まるんですか?」

「くじ引きかルーレットですね!まあ引くのは私ですけど!」

「え~・・・・・・」


分が悪すぎる。天国行きが50%でも考えるのに、これじゃ流石にくじ引きは選べない。


「てか、これなら異世界チート逆ハーレムの方がいいじゃんって思うんですけど・・・」

「あ、異世界に転生すると、魔王を倒さないと天国へ行けませんよ!特にチートなんか持ってたりすると善行なんてできて当たり前だし!

天国行きの確率が多少上がるくらいです!」

「でもチート持ちなら、魔王くらい余裕なんじゃ」

「そんな甘くもないですよ!魔王には<チートブレイク>というスキルがありますから、簡単には倒せません!異世界から天国行きはそう楽ではないのです!」


は~・・・まあ立場的に魔王を強くするのは分からなくはないけど、思ったよりシビアなんだなぁ。


「そこいくとホレ、女神の私をサポートするなんて、それだけで善行積みまくりも夢じゃないですよ!ポイントが溜まったら天国行きも選べちゃうし、こんなチャンス、そうそうないのですよ!」


・・・やりたいとか、女神になりたいわけじゃないけど。

でも、この話聞いて選べって言われても。

いや、女神の選択肢があるだけ、確かに特典に思えなくもない。

現実問題、今決めろと言われるとこっち選ぶしかないのかな。


「そうですね。迷っているようなら、一度流れを見てから決めますか?その後に異世界でも天国ギャンブルでも後から選んで良いですし!まあ確実にこっちの方が良いこといっぱいあると思いますよ!」


ここまで言ってくれてるのだ。私の何をそんなに求められてるか分からないけど・・・

とりあえず流れだけは見せてもらうことにしよう。


「ホント!?やったあ!!これからよろしくね、あいちゃん!」

「よろしくお願いします。・・・え~と、何て呼べば・・・・・・?」

「私は“エマー”って呼んでください!」

「はい。エマーさん・・・エマー様?」

女神だし。

「まあ敬称はどっちでもいいです!」

「じゃあエマー様と呼びます」


とりあえず、その仕事の流れとやらを見ることにした。

職場見学できるだけ良心的なのかもしれない。

さて、どんな光景が待ってることやら・・・・・・

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