山にて発見!白蜥蜴
誤字、脱字等ありましたら報告していただけると幸いです。
『やはり付いて行こうかな』
そんな事を考えている
ガラハドに子離れは出来るのだろうか
周りの盗賊達が賭けをしていたらガラハド以外は全員が出来ないに賭けて賭けは成立していなかったであるう。
翠から山へ行きたいと言われた翌日の早朝ガラハドは翠に持たせるマジックバッグの中身について不足が無いか念入りに確認する。
昨晩から寝ずにマジックバッグの中に山で必要な物を詰めてはいたのだが、ありとあらゆる状況を想定しながら荷造りをしていた為部屋の中は無茶苦茶であった。
一つ気になると物を詰めたり出したりを繰り返していたら夜は明けていた。
それでも未だ悩み続けている。
「そろそろ翠も準備が整う頃だろう。」
もう何が正解かも分からずになっており
完全に沼にハマっている状態ではあるものの
これ以上悩んでも答えは出そうにないので一応の納得と共に区切りをつける。
その後はいつも通りに朝食の用意を行い翠と一緒に朝食をとる。
マジックバッグの中身について軽く説明をしいよいよ翠の旅立ちの時間を迎える。
「ではお父様行ってきます」
翠の挨拶は簡素なものだった。
ガラハドはというとまるで集落から若者が旅立ちこれから帰れるかも分からない戦地に赴く様な様相で盗賊の手下達も含めて全員で翠のお見送りをしている。
「お嬢、身体に気を付けてな!」
「お嬢、頑張れ!」
「お嬢、魔物には気を付けるんだぞ!」
「お嬢生きて帰って来いよ!」
他にも様々な声やら涙すら流して手を振っている者もいる。
涙を流してるのは勿論ガラハドなのだが......
ただ山に7日探索に行くだけなのだが。
「愛が重い......」
翠の正直な気持ちである。
自分がそれだけ周りから愛されているという事は理解はしていても大袈裟過ぎると思うのであった。
見た目は皆共にガラが悪いし品性など一欠片すらない集団ではあるが翠にとっては今や全員が大切な家族なのである。ありがたい気持ちは抱いてはいるが態度に表すのは恥ずかしかったのであった。
翠は見送りを受け出発する。
森の中を進みながら自分のマジックポーチに入れた物とガラハドが用意して説明を受けたマジックバッグの中身を確認にしながら歩いていく。
自分が詰めた方は荷物は最小限であり衣類程度である。
素材を入れる為に極力空ける様にはしてあるからだ。
次にガラハドが詰めた方を確認すると草花の見分け方の本(薬草、毒消し草、食用)やら魔物の説明が書かれた本等も入ってるようだった。
この世界で本がポピュラーなのかは翠には分からないが、ガラハドは一体どうやってこれだけの物を集める事が出来たのかは疑問に思う。
多種多様な本から単純に盗賊だからと考える事が出来ないのであった。
いつまでも考えていても答えは出ないと他にマジックバックに詰めてある物を確認すると野営用の簡単に組み立てられるテントやら寝袋、火を起こせる魔道具、魔物除けみたいなものまで入っている。
今まで見た事も触った事もない魔道具を何故翠が簡単に使い方を判断出来るのかというとガラハドが手書きで説明やら使い方を書いた羊皮紙を魔道具一つ一つに貼りつけていたからであったからだ。
その他には束で入れてある薬草、束の毒消し草
何故か束単位で入れてあるのだ。
一体どれだけに怪我をし毒にかかればこれだけの量が必要になるのか
「愛が重い、重過ぎる・・・・・・」
決して荷物が重いわけではなく娘に対する愛が重いのであった。
荷物では無く愛の重さを感じながら山の方角へ向かい森の中を進む翠
山の方角については手に方向を示す魔道具(小型のコンパス)の様な物を持っており迷わずに辿りけそうではあった。ガラハドがそういう説明をしてくれていたのである。
迷わずに進めると言っても翠の歩幅は大きくないので森を1日で抜ける事は出来ない為、特に寄り道をせず進んでは居るが辺りは段々と暗くなり始めてきていたのだった。
完全に暗闇になる前に翠は森の中で一晩を過ごせそうな場所を探してテントを張る準備に取り掛かる。
魔物除けの魔道具により森の中で魔物に出くわす事は無かったので比較的問題無く本日の予定通りの位置までは進む事が出来たのである。
野営の準備をしマジックバッグより食料を取り出し簡単に済ましテント内の寝袋に入り今日は早目に就寝する事にする。
明日も早朝から山へ向かうつもりだからだ。
テント自体も魔道具であり、魔物除けの魔道具、寝袋も魔道具と本来普通の冒険者でもここまで厳重ではないのだが、一人で山の中で夜を過ごす事になるのでガラハドが特別に用意し翠に持たせた物なのである。
三重にもかけられた魔物除けの効果により翠を襲撃しようと思ってもほぼ不可能に近いのであった。
伝説級の魔物ならまだしもこの森にはそんな存在はいない。
静かに1日を終える事が出来たのであった。
翌朝いつもより少し早い時間に翠は目を覚まし
いつもと違う周りの雰囲気に一瞬戸惑うも自分が森の中で野営していた事を思い出す。
元居た世界でも1人でキャンプした事など無く
異世界にて初めての経験をした事に若干苦笑いを浮かべる。
夜の森の中でテントで1人眠る事に少し感動する翠だった。
マジックバックからパンとスープが入った筒を取り出し簡単に朝食を済ませあと、テントなどを片付けて再び山へ向け出発する翠。
今日の予定も進む道は森の中であり今日中に山の麓まで辿り着ければ良いので魔物除けの魔道具は使わずに採取しながら森の中を進む。
山の麓へ向け歩く事数時間、少し休憩しようと休める場所を探していると前方の視界に何やら白い蜥蜴の様な物を巣に運ぼうとしている蟻らしき魔物の列を見つける。
翠は気配を殺し木陰に隠れマジックバッグより魔物の姿と名前が書いてある本(魔物図鑑と命名)を取り出し前方にいる魔物の生態を確認する。
未知の魔物では無く[キメラアント]という大型の蟻であり、集団で家畜などを襲ったりする事もある魔物
人も襲うかなり獰猛な肉食の魔物であるようだった。強さは大した事はないようではあるが。
キメラアントに運ばれている白い蜥蜴の様な魔物は図鑑には載ってはいなかった。
白い蜥蜴の様な魔物は全く動いている気配も無く蟻に運ばれているので眠っているのか死んでいるのかは翠の所からは判断が出来なかった。
それに魔物図鑑には載っていなかったので、翠は白い蜥蜴の様な魔物に興味が湧きスキルを使ってキメラアントから奪い取る為にスキルの有効範囲まで近づく事にする。
目算で10メートル位の距離まで近寄りスキルを発動する。
以前は動作の後スキル名を声に出していたのだがわざわざ声に出さなくてもスキルが発動する事がその後の検証から分かったので今はスキル名を声に出す事は無い。
『目標は白い蜥蜴の様な魔物』
【奪う】
翠はスキルを発動する。
翠の手から見慣れた光のエフェクトが放たれる。
そして目的の物が手繰り寄せられる。
手の中にある感覚から成功を確信する。
キメラアントはやはり獲物を奪われた事に気付かず巣の中へ入っていく。
中々シュールな姿である。
翠はキメラアントの列が巣穴へ完全に消えていったのを確認し手で抱いている白い蜥蜴を抱えて離脱する。
「ふぅー緊張した」
安全圏まで離れた事を確認しようやく一息つき手に抱えている白い蜥蜴に目を向ける。
「生きているみたいだけど蜥蜴じゃない?翼がある。体は白い鱗に覆われていて硬い」
翠は白い蜥蜴を更に観察する。
「手?は二本、足が二本、口の中には牙があり尻尾もある」
呼吸している様で小刻みに胸の辺りが上下している事から生きているようだが、こうやって持ち上げたり逆さにしてみても目を覚さないので取り敢えず抱えて連れて行く事にして一時的に白蜥蜴と命名する。
このまま森の中に置いて行こうかとも考えたが間違いなく他の魔物の餌になりそうなので、仕方なく抱えて行く事にする翠だった。
その後も魔物には出くわしたが、以前森で採取した魔物ばかりだったので適当にあしらい麓へ向かう道すがらにスキルを使ったり石を投げて経験値を積んだりしながら素材を採取し日が落ちる頃に麓に到着したのである。
そのまま野営の準備をしテントを張り眠る準備を整える。
白蜥蜴はその後も起きる様子は無かったのでテントの外に置こうかとも考えたが、朝起きたら食い散らかされて居たり死体になっていたら寝覚が悪いので取り敢えずテントの中に入れ暴れない様に寝袋に収納し翠はその横で毛布をかけ眠りについたのだった。
翠が寝静まってから数時間後、白蜥蜴は目を覚まし寝袋から這い出ると横に人の姿があるのを見る。
どうやら眠ってる様で起きる気配はないので翼を伸ばし狭いテントの中で空へ浮かぶ。
浮かんだまま自分をこの場所に連れて来たと思われる小さな人の少女が目覚めるまで観察しているのであった。
白い蜥蜴は一体何者なんだ?(棒 について書こうと思います。