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父親の独白

誤字、脱字がありましたらご報告いただければ幸いです。

 「娘が可愛すぎて生きるのが辛い」


 いきなり何を言い出すのかと思ったのだがありのままの意味である。


 ガラハドはそれはもうミドリンの事を目に入れても痛くないと思う程に溺愛している。


 溺愛はしているもののだからと言って無条件に甘やかしているわけではなく、身の回りの事や最低限一人で生きていく為の生活の知識程度は教える様にはしているのだ。


 自身の職業が盗賊だという事もあり、万が一の際には他人だと切り捨て盗賊の娘として自分と共に処刑されたり捕まえられたあと犯罪奴隷や貴族の玩具として嬲り殺されるような事にはならない様に盗賊稼業には一切関わらせない様にはしている。


 内心ではその時になって簡単には切り捨てられないとも思うのだが自身が盗賊である以上一定の保険の様なものをかけておく事にこした事はないのだから。


 「最近はよく森に出掛けているみたいだが一体何をやってるんのやら」


 早起きをして簡単に身支度を整えると森の中に毎日の様に出掛けて行くのをガラハドは知っている。

『翠はバレていないと思ってるようだが』


 最初の方は余りにも心配で隠れて着いて行こうともしたのだが、あっさりと見つかってしまい物凄く悲しそうな視線を向けられてしまった。


 『怒るならまだしもあんな悲しそうな視線を向けられては・・・・・・』


 ガラハドは森の中にはそこまで危険な魔物がいない事は分かっているのでそれ以降隠れてついて行くような事はしなくなっていた。


 何よりあの視線に耐えられなかったのだ。

娘に嫌われては生きていけないというのが本音ではあったのだが。


 『まさかわざとあんな視線を向けているわけではないよな?わざとなら将来とんでもない悪女になりそうな予感がする』


 一瞬黒い笑顔を浮かべたミドリンを想像して頭を振る


 ガラハドは一瞬その様な想像をしてしまった自分に懺悔するも、自分の愛娘の性格がそんな黒い事は絶対にないと疑った自分に落ち込むのだった。


 「しかし、毎日森に遊びに行っては尻尾やら羽やら持ち帰って来てるみたいだが、一体どうやって拾ってきているのか?あの尻尾は間違いなくワーウルフの物だし、何よりワーウルフは単体で居ることは先ずない。必ず群でいる筈なんだよなぁ」


 ミドリンがまさかワーウルフの群の中に突っ込んで行って尻尾を千切り飛ばしている可能性を考えるも未だ幼いミドリンには刃物の類等は持たせておらずそこまでの力はないだろうと思う。


 実際は違う形で盗賊らしく奪っているのだけどガラハドはそれを見た事がないので知る由は無かった。


 魔物同士で争った残骸の中からたまたま拾って来たのだろうと納得する事にする。


 『余りにも綺麗な切り口だった事はこの際忘れる事にしよう』


 人は知らない方が良い事も有るというのが長年盗賊を生業としてきたガラハドが経験から学んだ事であったからである。


 男手一つましてや盗賊である自分が一人で育てているのだ。

厳密にいうと仲間の盗賊もミドリンを気には掛けてはいるのだが。


 『そう言えば最近は母親の事について聞いて来なくなったな』


 以前はミドリンは自分の母親について何処に居るのかとよく聞いてきたのだが、最近は鳴りを潜めている。その事に関して一切触れてくる事が無くなっていたのだ。


 娘の成長と捉えるか自分に気を遣わせているのかとも考えると少し心苦しくなるガラハド


 『今はまだ話せないが、もう少しミドリンが大きくなったらしっかりと話してやらないといけないな』


 娘の今後の成長を期待する反面

このまま何も知らず、小さくて素直な娘のままでいて欲しいという叶う事のない願いの中で葛藤する。


 ガラハドは一つの小さなチェストから一枚の小さな絵を取り出す。


 そこには若かりし頃の騎士鎧を着た自分ととても綺麗な一人の女性の姿、その女性が向けている視線の先にはとても大切に抱かれた小さな娘の姿が描かれている。


 「俺は間違ってはいないだろうか」


 ここには居ない誰かに向け問いかけたものではあるが返事が返ってくる事はない。


 「エレオノール・・・・・・」


 その呟きは誰に聞かれる事もなく、洞窟内のガラハドの部屋にだけとても小さくとても小さく響いたのであった。


次回からは再び翠の視点に戻る予定です。

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