準備は万全に
誤字、脱字報告していただきありがとうございました。修正は致しました。
魔導都市ザリエアル
ここはファンタジー世界にありながらその成り立ちは異質である。
錬金術師の叡智を結集してを創られた魔導高炉を利用したインフラとも言うべき設備の数々。
馬車ではなく魔導車、魔導二輪、エレベーターに似た様な物まで設置されている。
ザリエアルの技術は帝国にも輸出されている。
ただ、帝国には魔導高炉は無い為、ザリエアルはこの世界においてもっとも近代化された街と言われる所以だろう。
『東京みたいなの』
これが正直なミドリンの感想であった。
ミドリンの想像よりは遥かに近代化されては居たがミドリンはこの街というよりは都市にレイジが入れる魔導具を探しに来たのである。
魔道具店を探す為に街を歩いて回っているミドリン一行。
先程からはぇ〜やら、ほぇ〜やら辺りをキョロキョロ見回しているレヴィア。
海底生活が長かった為、周りの景色は衝撃的なものだったに違いない。
ミドリンは洞窟生まれ、森育ちではあるが、
元は日本の住民である。
このザリエアルを見て驚きはしたものの、更に近代化された場所から転移してきてるのでそこまでの驚きはなかった。
この街最大の魔道具店に到着したミドリン一行は
目的の物を手に入れる為、そのお店に入っていく。
ガラスのショーケースの様な物に並べられている魔道具の数々。
値段も他の街で見た物よりは遥かに高額であった。
ミドリンは幼女でありレヴィアは大人である。
実際の立場は逆なのだがそれは始めて見た者には分からなくても仕方のない事っあった。
店員が声を掛けたのは勿論レヴィアである。
「何かお探しでしょうか?お嬢様に何かお求めですか?」
完全にミドリンの母親と勘違いされていたのだった。
「妾に娘はおらぬ。あそこにおるのは旅の友であるぞ」
「旅の友?」
その容姿は他者の目をかなり引く美しい女性が小さな幼女を旅の友と言っているのだ。
店員は何を言ってるのか分からなかった事だろう。
「店員さん、このお店にドラゴンが入れるテントはあるの?」
「ドラゴンですか?それは一体......」
「このお店の入り口で待ってるの」
「分かりました。ではお連れ様を確認致しますね。」
店員は入口を確認する。小龍だと思っていたのだが実際に居たのは体長三メートルの白いドラゴンであった。
固まる店員。白いドラゴンは本やお話に出てくる存在でありそもそも実際に目にした者は殆ど居ない。
それが今目の前に居るとなると固まってしまっても仕方がないのであった。
「申し訳有りませんが、こちらのお連れ様が入れる魔道具となりますと特別に作らせていただく以外にございません。商会の方で具体的なお話を伺わさせていただきますので申し訳ございませんがこちらの場所まで明日お越しいただけないでしょうか。」
「分かったの。明日行くの」
ミドリンは軽く返事をして、翌日紹介された商会へ出向くのであった。
翌日、ミドリン一行は商会へ向かう。
どうやらエビスヤ商会という屋号らしくこの魔導都市ザリエアルでもかなり大手の商会であった。
昨日紹介してくれた店員が話を商会に通してくれていたようであっさりと中に入る事が出来たのであった。
商業ビルの様な出立のエビスヤ商会の三階に通されるミドリンとレヴィア。
レイジとライムは今日は二人で商会入口でお留守番だ。
商会で案内された部屋で待っていると一人の割腹の良い男性が入ってきたのだった。
「ようこそおいで下さいましたミドリン様、私はこのエビスヤ商会で商会長を務めておりますドランゴと申します。」
何故かミドリンの名前を知っていたのである。
ミドリンは少し警戒するものの、相手は満面の笑みである。
「ミドリンなの。宜しくなの」
ここは変な態度を取るよりもわざと子供っぽく
振舞う事にした。
「昨日はうちのお店にお越し頂きありがとうございます。魔道具をお探しと聞いております。
」
「そうなの。レイジ...ドラゴンなんだけど一緒に入れるテントを探しているの」
「今お店に置いている物では入る事は出来ませんが、特別に作らせていただく事は可能ですよ。」
「お願いしたいの」
「ではご希望をお聞かせ願えますか」
「魔物除けとレイジが入れればそれでいいの」
「分かりました。ただ特別に作る事になりますので7日程お時間がかかる事になります。お値段の方は白金貨20枚程になりますが宜しいでしょうか?」
「白金貨20枚じゃと!?」
レヴィアが驚きの声を上げるもミドリンは
「それでお願いなの」
実にあっさりとした物だった。
ミドリンはレイジがテントで一緒に眠れる事が重要であり、普段よりお金に対して執着はないので実にあっさりとしたものであった。
エビスヤ商会でテントを注文しミドリン一行は商会を出たのであった。
7日もあったのでその後は食材を買い集めたり魔導車に乗ってみたりとそれなりにこの街を楽しむ事が出来たのであった。
ギルドでは余計な騒ぎを起こさないように今回は立ち寄る事は無かった。
ミドリンがこの街を立ち去ってからギルドでは高難度ダンジョン[海底ダンジョン]走破者がドラゴンとスライムを連れた幼女であったと話題になるのだがそれをミドリン達が知る事になるのはまだまだ先の話であった。
7日後エビスヤ屋商会にて出来上がったテントを受取りに向かったミドリン一行
商会長ドランゴが出迎えてくれる。
「お待たせ致しました。ミドリン様、こちらが出来上がって魔導具になります。」
見た目はそれ程大きくは無いがどうやら広げるとかなりの大きさになるとの事だった。
ドランゴはテントについて説明を始める。
「こちらの魔道具は外側の素材に砂鯨を使っております。砂鯨の皮はかなり強度を誇っております。Cランク程度の魔物でしたら傷一つ付ける事は出来ません。また砂鯨の皮には錬金術により魔物除けの効果を付与しておりますので安心してお休みいただけると思います。内側にはホワイトシープの毛皮を使っております。テント内に寝袋を持ち込まずとも冬は暖かくお過ごしいただける事でしょう。中には温度を調節出来る魔道具を設置しておりますので砂漠で過ごす事になっても問題はないでしょう。」
かなりの力作のようであった。これだけのテントなら白金貨20枚でも安いのではと思うミドリンであった。
「如何でしょうか?当商会の品は」
「大満足なの。」
そう言ってミドリンはマジックバッグより白金貨を取り出しドランゴに支払いをしたのだった。
「所で、ミドリン様、アルスの街で海底ダンジョン走破者が現れたようですよ。何でもドラゴンとスライムを連れた幼い少女だったそうです。」
ニッコリと笑いながらそう言ったのだった。
ミドリンは自分達の事を言ってるのは直ぐに分かったが、これからの目的が目的なだけに素直に答える事は出来ないので、
「何の事を言っているのかわからないの」
と言い訳にもなってない返事を返したのだった。
「何やら事情がありそうなのでこれ以上は何も言いませんが何かお困りの事がありましたら是非当エビスヤ商会をご贔屓に宜しくお願いします。」
「分かったの」
このミドリンの答えが肯定になっていたのだが、
エビスヤ商会としてもこの先間違いなく世界に名を馳せるであろう冒険者になるミドリンとの縁が持てるのであれば今回作った魔道具が実は赤字であっても問題は無かったのである。
ミドリンはドランゴと握手を交わし目的の地である帝国に向けて旅立つのである。
帝国にはお母様がいる。
未だ絵でしか見た事が無く実際に会ったことは無い。
ガラハドもミドリンを案じて待っている事だろう。
簡単にはいかないとは思うがそれでも未だ見ぬ母親に想いを馳せミドリンは帝国に向けて飛び立っていったのだった。
一度書いた下書きが消えてしまい少し更新に時間がかかってしまいました。
今回の魔導都市についてはサラッと流しましたがいずれ触れたいとは思っております。
次回から帝国編に入る予定です。
ミドリン一行は無事にエレオノールを救出出来るのか?