魔人が来たら勇者が目覚めたようだ
「・・・ッ?」
大将軍バンディッシュは今起こったことを辛うじて理解できた。だが、過程の一切が理解できなかった。
何が起きたんだ?辛うじて少年が魔人に突っ込んでいくのは見えた、正直とんでもない速度だった。私でも初見であった場合対応が難しことは間違いない。そもそも魔人をあんなにも簡単に消し飛ばすことは可能なのか?
「いや~いい汗かいたなぁ!ぶっちゃけ死にかけたけど。まさにトレットがいなかったら間違いなく死んでたぜ。」
今回ばっかりは本当にピンチだったー。魔人ってのはみんなあのくらい強いんだろうか、だとしたら今後集団戦とかになった場合、結構まずいかもなぁ。ていうか頭ぐらつくなぁ~。
「少年、君の名前は?なぜそんなにも強いのだ?結界の外から存分に見させていただいたが、ぜひ説明していただきたい。」
バンディッシュは早速ハクを問い詰めようとした。
「とりあえず一つ言っておくことがある。世界樹亭だ。」
ハクはあたかも質問の返答がごとく、宿屋の名前を言ってぶっ倒れた。それと同時にトレットがガントレットから元の犬の姿に戻った。
「は?何を言っとるんだね君は。ちょちょ!?大丈夫かい?」
「あぁこいつの泊まっている宿屋が世界樹亭なんだ。でもその前にこいつを入院のできる病院につれていってもらえるか?俺では完全には手当てもできないし、こいつを加えて運ぶのは骨が折れる。」
トレットが首の骨をコキコキと鳴らしながら返事をする。
「う・・・うぅ。苦・・しいぃ。」
エルミラが突然呻きだす。
「なぬ?エルミラ大丈夫か?」
大将軍バンディッシュがエルミラに駆け寄る。
「なんだこの症状は?トレット殿すまないが少し見てやってはくれぬか?」
トレットが駆け寄る。
「こいつは!?。悪いが俺にも詳しくはわからないが、呪いの一種だな。そうか、あの魔人ただで死んだわけではないみたいだ。魔人の一撃には、呪いが込められていたのか。」
「そ、そんな、なぜエルミラが!?トレット殿エルミラは助かるのですか?」
「わからない、少なくとも俺にはどうすることもできない。」
「助かるよ、そのお姉ちゃんは助かる。」
エルミラが通っているサンドウィッチ屋から先ほどエルミラ会ったマルモネが歩いてきて、そんなことを言った。
トレットは少女を見て目を見開く。一人の人間から、2人分の匂いがする・・・ハクの言った通りだっとすればまさか?
「助けられるのか?」
「あなたはどうも察しがいいようですね。結論から言うと助けることは可能です。ですが彼女には同時に助かることができる体になってもらいます。魔人の呪いは強力ですからね。」
「バンディッシュ殿、こう言ってるがどうする?つまるところ今までのエルミラはもういなくなってしまうかもしれないが。」
「トレット殿・・・私には彼女の人生を決める権利などありますまい。ですが一つ言い切れることがある、彼女もまた、ここで死なすには惜しい。恨むならこの老い耄れを存分に恨んでいただこう。私の勝手でエルミラ、君にはここで死んでほしくはないのだ。・・・お願いだ彼女を助けしてほしい。」
「わかりました。それでは【親愛の女神キュー】の加護をエルミラに差し上げましょう。」
そこでようやく少女の存在を理解したバンディッシュが緊張するように生唾を飲み込んだ。
だが少女が行った行動は至極単純であった。
ただただ優しく慈愛の満ちた歩みと表情で、そっとエルミラの頬にキスをした。