【救世の大魔女王】様でも手紙は便利なようだ
結論から言うと【救世の大魔女王】はいなかった。
トレット曰く、【救世の大魔女王】と落ち合う予定のホテルがあったのだが、行ってみるとそこにはいなかった。だがフロントが手紙を渡さていてそこには俺を転移させた理由や【救世の大魔女王】がいない事情が書いてあった。
以下手紙の文面。
--愛しいトレットとハクへ--
私は今とある事情があって同じ次元にはいないわ。少しだけこの世界とずれたある空間に魔導書を取りに行ってるの、正直私をもってしても簡単には帰れないわ。そこであなたたち二人にお願いがあるの。
現在世界は危機に瀕しているわ。ハクには事情から説明するけど、この世界には悪しきことをして天界から神堕ちし、逃げ延びた邪神が住み着いているわ。その邪神の狙いはね、世界と世界をぶつけて崩壊を起こし、その余波で天界を攻撃し、自分を堕とした神たちに復讐をしようとしているの。でもね、私たちの世界は間違いなく滅ぶけど、天界にはほとんど影響もないと思うわ。だから神たちの介入は望めないでしょうね。でも優しい神たちはそれぞれ才能のあるものに加護くらいは授けるかもしれないけどね。ちなみにこれが俗にいう勇者よ。もちろん邪神もそんなことはわかっているから各地に魔王が現れるかもしれないけどね。
ハクを呼んだから気づいてるかもしれないけど、世界と世界というのは私たちの世界とハクのいた世界よ。この二つの世界は階層同士が近く次元調律が非常にしやすいの。次元調律というのはね、片方の世界に世界を召喚することを言うの。それだけは絶対に阻止しなくてはならないわ。
ハク、あなたを呼んだのはね、別にあなたの世界の代表とか、勇者とか、そういうことではないの。単純にあなたにこの世界を見て旅をしてほしいという、私の古い友人のお願いを聞いているだけなのよ。でもあなたのことだから可能だと思うのだけれど、ついでに世界を救っちゃってほしいの。こんなことを頼めば彼には怒られてしまうかもしれないけどね。
ちなみに真理の魔導書シリーズを集めることによって世界を救えるわ。魔導書は全部で7冊あるの。それぞれ、【地の書】、【海の書】、【空の書】、【命の書】、【異空の書】、【時の書】、【鍵の書】があるわ。一つ一つの本が膨大な魔力を秘めていて、魔導書に書かれている大魔法を使用することによって、邪神を封印して世界を救うことが可能なの。
魔導書はたぶんこの世界にあるから集めてほしいの。でも私も詳しい情報は知らないから一生懸命探してね。神々の加護を持った勇者たちなら何か知っているかもしれないけどね。
ちなみに私は今【鍵の書】を取りに行っているわ。なのでこの世界にある魔導書はお願いします。
PS.トレットへ
私の愛しい使い魔トレットよ、ハクを導いてあげなさい。純粋無垢な魂はいずれ世界を導く柱となるわ。
「なるほどねぇ。つまりは世界を救ってほしいわけか・・・。めんどうくさいなぁ~。」
「そうだな。いろいろと突っ込みたいことはあるがおおむね間違っちゃいないみたいだ。」
「この手紙の中にある、俺にこの世界を見てほしいって言ってる人が誰だかトレットにはわかる?」
「古い友人って書いてあるみたいだ。俺は比較的に新しい使い魔なんだ。だから知らない。」
「そこら辺を含めてもいろいろ謎めいた手紙だなぁ。ついでに世界を救ってほしいってさ、そんなことできるわけないのにな。俺この前の盗賊でギリギリだった。」
「相変わらず大魔女王様は何を考えているかわからん。でもまぁ世界のピンチを無視するわけにもいかんしな。とりあえず世界を見てみるってのはどうだ?」
「世界を見てみる・・・かぁ。なんか旅行みたいだな。そう考えると気が楽だし、とりあえずやってみてから考えるかな。そういうのどう?」
「まだあってほとんどたってないがお前ならそう言いそうだと思ってた。」
「それじゃぁ最初に何したらいいと思う?」
「ギルドに登録するなんてのはどうだ?世界を見て回るのなら身分証が必要だろう。」
「そうしましょう!」
ハクは席を立って勢いよく走りだした。トイレへと。
「本当にあいつは何を考えているかわからん。」
大魔女王様・・・本当にあいつで大丈夫なんでしょうか、俺心配になってきましたよ。
ふっ、盛大に腹を壊したぜ。俺の最初の試練がまさか自分だったなんて、なんかかっよくない?
ハクがくだらないことを考えている間に王都に爆発音が響き渡る。王都守護大結界が起動した。
--5分前--
「おばちゃん今日も買いに来たよ!サンドイッチちょうだい!」
エルミラとこの老婆に血のつながりはないが、幼いころから孤児院で育ったエルミラは、本当のおばあちゃんのようにこの店の店主を慕っている。サンドウィッチはほかの兵士にも紹介して好評だったので、こうしてたまに寄っては大量に買っていくのだ。
「あら、エルミラちゃん。こんなにたくさんいつもありがとうね。はい、どうぞ。」
「ありがとう!これがなきゃ私の一日は始まらないって感じがするよ!」
エルミラの足元に子供が駆け寄る。
「お姉ちゃんがエルミラちゃん?私はね、マルモネっていうの。」
「あら、かわいいねぇ~。よろしくねマルモネちゃん。おばあちゃんこの子は?」
「その子は近所の子供だよ。最近よく遊びに来てくれて、私の話相手になってくれる優しい子だよ。」
「そうなんだ。えらいね~マルモネちゃん。」
エルミラはそっとマルモネの頭をなでてあげた、そうするとマルモネは嬉しそうに笑った。しばらくの間マルモネやおばあちゃんと話していると外で爆発音が鳴り響いた。
「な、なんだいこの音は!?」
「おばちゃん、マルモネちゃん、絶対外に出てはだめよ!」
エルミラは扉を開け外に飛び出した。
その様子を背後から見ていたマルモネは、まるで子供とは思えない神秘的な笑顔で、エルミラの背中を見送った。
○○もねもねみんな食べるよ~、明日また晴れるかな~。