第2話 ホームレスになった気分
異世界と言うのは何度か聞いたとこはある。なんでも、交通事故や病気とか、神の手違いで死んでしまったりすると神からのお告げがきて、こんな世界に飛ばされてしまうんだとか。
だがそんなのは所詮小説や漫画のネタにしかすぎず、そんなファンタジー世界、現実にあるわけがない。しかしたった今、その考えを捨てるべきだろう。
しかしさすがに周りの生活の様子が原始的だからといって「異世界」と決め付けるのはさすがに極端すぎるかもしれない。今の地球だってまだ見つかってない土地や人種がいたっていいはずだ。
―――まぁ、しょうがないか。
ここを「異世界」と私が勝手に決めつけて、生きていくことにしよう、じゃなきゃやってられん。
「ここが何処だか分かったかい? ボウヤ。」
玄関の前で唖然としてる私に、老婆がさっきまで焼いていたパンを持ちながら話しかけてきた。
「少し何か、食べた方がいいよ、まだ朝だからね。朝飯も食ってないだろう?よければさっき焼いてたパンがあるよ。」
そういえば、ここに来てから何一つ口にしてなかったな。
老婆もとい、ばあさんのお言葉に甘えて玄関に突っ立っていた私は、もう一度ばあさんの部屋に入ることにした。
――――――――――――――――――――――――
ばあさんがくれたパンと水を食い終えた今、状況を整理してみよう――――――。
昨日だか今日だかは知らんが、私とランス、ライネ、ブラボーとで田舎の小さな銀行を衝撃していたはずだ。それで金持ち気分で逃げたと思ったら、事故ってクソスナイパーに撃たれて・・・、気づいたらここにいた。
服装はスーツだし、ポケットには1ドルも入っちゃいない、当然のように銃もどっかに無くしてる。ただ、バッテリーがそこそこあるスマートフォンが右腰のポケットに入ってた。といっても、外を見れば分かるが電柱も電波塔もまったく見当たりゃしない、これじゃあ「猫に小判」ってヤツだ。
今この状況でさえ問題しかない中で一番困ってんのが、宿とカネだ。せめて宿屋に泊まるカネは欲しい。どこで寝泊りする?野宿はカンベンだ。虫に囲まれて夜を過ごすなんて反吐が出る、まるでホームレスにでもなった気分だ。
ついでに後一つ困ったことがある、文字だ。テーブルに一冊本があったから手に取って読んでみたが全く読めやしない。ヒンドゥー語とロシア語を合わせたような文字だ。だが私は米国出身、どっちも読めるわけない。
この困りごとしかない状況でどう生きていけばいいか――――。
「そういや、ボウヤは何の仕事をしてるんだい?」
朝飯を食い終えたばあさんは私にそう質問してきた。
何の仕事を?なんて答えればいいんだ?こちとら仕事といえそうなことなんてほとんどない。スーパーでバイトをしてたくらいだし、後はストリートギャングと強盗をしてたくらいだ。ヤバイ、答えれそうなものがない。
「えーっと、今は、その、引退を・・・。」
「分かった、王族の下で働いてたんだろ! それで雇い主に暇を出されて、住む場所もないんだろう?」
なんとも中世らしい仕事だ、といってもそんなとこに仕えてる憶えはないが、住む場所がないってのは間違っていない。
「あ・・・あぁ。」
「それなら、ここに一晩か二晩泊まってくれてかまわないよ。」
「ここに?」
私は周りを見回した。
「五つ星宿屋にでも泊まれるのかい?」
ばあさんの言うとおりだ、私は困惑して床を見つめた。
「見れば分かるだろうけども、今の私は無一文さ。カネの一つも持っちゃいないし、働くアテもない。」
「やっぱりそうかい。とにかくね、ここに一晩か二晩はいてくれていいよ、ちょうど二十歳の娘一人とわい一人で寂しかったからね。」
こんな「元強盗」にここまで優しくしてくれるなんて、このばあさんは天使か?
「とりあえず今日はここで自由にしていいから、わいはわいの仕事に行くよ。明日は娘の仕事を手伝ってくれるかい? そうすれば、誰かが来たときに紹介できるし。もし誰も来なかったら、そんそきはそんときさ。」
ばあさんはここに泊まってよいと告げ、木椅子に座ったままの私を置いてけぼりにして玄関の扉を開けようとした。
「あ、そうそういい忘れてたけど、このメガネ、ボウヤのかい?」
ばあさんがそう言って私に左手で差し出したのは、スポーツサングラスのような、表面が少し黄緑色のメガネ?だった。
この時代になぜこんなものが? というかこんなもの持ってた記憶なんてない。
「いや・・・あいにく、そんなものは知らない。」
「まあそんな固いこと言わず、うけとりな。」
ばあさんは強引にメガネだかスポーツサングラスだか知らないものを私の右手の掌にのせて、玄関から出て行った。
今この家にいるのは、家の真ん中で椅子に座ってる私一人だけだ。
さて、これから何をすべきか―――――――
ぐずぐすと嘆くかわりに新たな事実を受け入れ、探求を始めた。まずはこのスポーツサングラスと思わしきもの。もしかしたら何かの地雷じゃないかと心配しながら、これをかけてみる。
特に変わった感じはしない、表面が黄緑だから自分の目線も黄緑だらけになるのかと思ったがそうでもなく、むしろかけていないんじゃないかと思うぐらいに変わった感じがしない。
と、ここで辺りを見回してたらあるものに目が入った。
さっきまで全然読めないと抜かしてた本だ。それがなぜだか英語で翻訳されている。まさかと思い、手に取って読んでみる。
やはりだ、原理は知らんがスラスラと読める。これなら、生活に難はでないな。
よし、本格的に行動開始だーーーー。