ミケ、また旅に出る
我としては誤解が解ければ、どうでもいいのだがな。
どうせじゃ、その「イエネコ」とやらの顔を見に行くとするか。
どれだけの美猫かと思っておったが……毛並みが綺麗なだけではないか。我の伴侶の方がもっと美しかったぞ。あの程度の猫にいいように扱われるなど、不甲斐ないにもほどがあるぞ、若いのよ。
『さすが、旦那。言うことが違うぜ。それから俺っちもあの猫に靡いてるわけじゃねぇぞ』
ということは、だ。
『あのイエネコとやらは、お主が靡かなかったからないことを莫迦ネコに言いふらしたわけか』
『多分なぁ。元々向こうは「けっとうしょ」とかがついてる由緒正しいネコらしいぞ。俺っちたちよりも「こうき」だから、言うことを聞いて当たり前だって言われたな』
『嘆かわしい限りじゃな』
『まったくだ』
その「イエネコ」とやらも愚かなのかもしれぬな。何と言ったかの、「割れ鍋に綴じ蓋」だったかのぅ。忘れてしまったわい。
ああいう輩は知らぬふりをするのがよい。猫も見たし、用はないから帰るぞ、若いの。
『ほいよ。旦那みたいに強かったら俺っちは……』
『莫迦は休み休み言え。伴侶どころか、色んなものを見送り一匹になるのが強いというなら、その強さはまやかしじゃ』
そこにたどり着くまでに、我とてかなりの時間を要した。若いのが理解できるようになるまでにどれくらい時間がかかるかの。
何となく楽しみが増えたわ。
莫迦ネコがどこかに行った後、我もその地を後にすることにした。