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ミケ、誤解を解く


 あの黒い鳥の先頭におるのは、どうやら三本足の鳥のようじゃ。あ奴ら強いから、我も苦手なのだがな。

『てめえか!? 俺らの眷属を襲ったのは!』

 ……何をもって襲ったと言っておる? 我が食す分くらいしか狩っておらぬと言うに。


 話を要約するとこうじゃ。我がここに来てあの莫迦ネコは餌が少なくなった。それゆえ、黒い鳥の獲物を横取りしたりしていた。それを見た我が「どきょうだめし」とやらで、あの莫迦ネコを焚き付けた、と。

 莫迦らしいわい。

『誤解もいいところだ。我はあ奴らを追い出しておらぬ。ちっとは頭を使え、三本足』

『なっ! 俺は八咫烏、天照様の遣いだというのに、なんだその態度は!』

 ……天照? おお! 思い出したぞ、我のいた社が祀っていた太陽神ではないか。道理であの社の近くに三本足の黒い鳥がおると思っていたわ。一度も手を出したことはないぞ?

 ……ヒトがおらぬ故、かの御仁も降りて来なくて久しいがの。


 三本足が天照様の御遣いだと初めて知ったわ。年をとっても知らぬことは多いの。

『黄昏てんじゃねぇ! で、さっきの話だが』

『誤解もいいところじゃ。他の動物たちにも聞け、天照様にもの』

 まったく、きちんと聞いてからこういうことをせんか。


 黒い鳥どもは、まぁあの莫迦ネコに言われたとしか言わぬし、他の鳥どもは「うちの子が殺された」とか言いおる。だから我が食する分だけだし、横取りもしておらぬと言っておろうが。お主らとて、色々と食しておるではないか。

『極彩色の鳥を……』

『ヒトが飼育しておると知って手を出す間抜けではないぞ』

 長生きするコツだからの。

『俺らの眷属の卵……』

『お主の眷属とて、動物は食するではないか。必要以上はやらぬぞ』

 三本足が言葉に詰まっておるの。まだ若いのかもしれぬな。

『何年寄じみたことを。いくらネコマタと言っても……』

 こ奴に言っておらぬが、さすが三本足だの。


 いい加減三本足との会話も飽きてきたのだが、如何すべきかの。



 結局、あの三本足は天照様に「おうかがい」とやらをたてておった。天照様は太陽があればどこでも見渡せるからの。

 天照様は、月読様やら果ては水神様方にまで聞くあたりは几帳面なのかもしれぬが。

『すまんかった』

 まぁ、今度はそうなる前に調べることじゃな。たかが猫の喧嘩に三本足ばかりか神々の御手まで煩わせるのは、如何と思うからの。


 そのあと、あの莫迦ネコはそらもう、三本足どもにぼこぼこにされておった。嘘もほどほどにせんとな。分かったか、若いの。

『俺っちがどのあたり嘘ついたと……』

『ちょこれーととやらを食して、死したことかの』

『いつ、気づいた?』

『気づかぬわけがなかろう。己に悪いものを食して死したわりに、毒に対して迂闊すぎるゆえな』

 そこまで緊張するな、誰にも言わぬわ。あの「イエネコ」とやらも絡んでおるのだろうしな。

『そっか……そこまで気づいていたのか』

 心なしか、若いのの尻尾が下がっておった。


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