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第八話:冒険者ギルドのノリ

 サバナの街は強い魔物が跋扈する僻地にわざわざ造られた街であるため、冒険者は数も質も揃っている。


 街中での警備を行う衛兵なども含めれば人口の1割以上が戦闘職だ。商人や職人にも戦える者が多いので“戦闘の街”とも言える。

 ……いや、実際の所、百合な女性ばかりが集まり、また百合好きな男連中が神聖視して出来たのがこの街な訳なので戦闘も出来る“百合の街”と言うべきなんだろう。


 あたしの祖母ちゃんと母ちゃんが伝説的な百合として名を馳せているから尚更な。


 それに街そのものが大きいということもあって街の東西南北と、さらに中央の合わせて5か所に冒険者ギルドの建物はあるが、何処で依頼を受けても問題は無い。


 建物の造りは同じだし優劣がある訳でもないが、それでもあたしの家が中央区にあるからか、あたしを慕う連中はこぞって中央区に住み着いているために中央の冒険者の質は高いのだろう。


 そんな感じで強い冒険者が多いことで、世界有数のS級冒険者のあたしは仕事が少ない。


 冒険者ギルドに行くときはもっぱらナンパか食事くらいのもんだ。冒険者のランク同様に、依頼のランクも上に行くほど数が少ないからな。



「おっと、そういやニーティが暮らしていた魔族の里には冒険者ギルドはなかったのか?」


「冒険者向けの小さなお店はありましたがギルドは置かれていませんでしたね。

 私たち淫魔はえっちな仕事に就く人ばかりですから、風俗関係のお店は多かったのですが……」



 ニーティは表情を暗くしながら故郷を語る。


 まぁ、性に奔放な淫魔族だし、性的魅力に乏しい幼い容姿のまま成長できない彼女には良い思い出なんて無かったんだろうな。


 恋人同士とはいえ深く追求するのもどうかと思ったあたしは、ため息交じりに笑いながらニーティの頭を撫でてやった。



「まっ、安心しろよニーティ。

 あたしはお前のことを生涯愛するし、この街の冒険者たちだって好いてくれるはずさ♪」


「だと嬉しいですね♪」



 実際のところ、淫魔のようにエロくて当たり前の種族からすればボン、キュ、ボンが理想なのかもしれないが、人間からしてみればまだ青い未成熟な果実にときめく大人というのも一定数はいるはずだ。


 あたし自身はロリコンだとは思っていなかったが、ニーティを見て目覚めたからな。


 もしかしたら、あたし以外にもニーティに惚れて目覚める奴がいるのかもしれない……。今の内に殺すか?


 いやいや、精々目玉を抉る位で勘弁してやるか。


 そんな物騒なことを考えながら歩いていると、程なくしてギルドへと到着した。



「ほら、足元に気をつけろよ?」


 繋いだ手から緊張をにじませているニーティ。


 安心させるように力強くその手を握り返し、扉を潜ると建物内の視線が一斉にこちらに向く。あたしとニーティでは感じ方も違うのだろうが、あたしはこの空気は嫌いじゃ~ない♪



「インフィさん久しぶりッス!」


「本当にロリ彼女作ってるヒャッハー♪」


「相変わらずエロい身体じゃわいのう♪」


「時代はおねロリ! 我らはいま真理の扉を開いたぞぉぉぉぉーーー!!」



 ニーティがビクッとしたのが可愛い♪


 とまぁ、このように、来るたびに無駄に歓声を浴びるのはどうにかならないものか。……面白いんだがな♪



「ははっ、相変わらずお前らバカばっかじゃないか♪

 百合の中の百合である、あたしは生涯の伴侶を探し始めて昨日見つけてきたぜ!」


 バカにはバカな対応をしてやらないとな。


 ニーティをド派手にお姫様抱っこしながら周囲を見渡せば、誰も彼もが拍手喝采。大ジョッキを打ち鳴らして一気飲み、一升瓶でラッパ飲み、興奮からストリップショーを始める連中まで、本当にバカばっかりで鬱陶しいが、あたしは大好きだ♪


「えっと、インフィさん?

 冒険者ギルドって、もっとむさ苦しい場所を思っていたのですが?」


「あー、そういう街もあるが、ここのギルドは大体こんな感じだ。

 ほら、見せつけるようにキスでもしてやろうぜ♪」


「ふみゅ!?」



 強引ながらも歯をぶつけたりなんてミスはしないさ。ニーティの唇を堪能するためにも唇同士、ぷにっと触れるだけだ。


 ニーティの唇は緊張からか羞恥心からか震えていたが、だからこそ昂ぶる!


 抱っこしているために足が地に付かず、ピンと伸びたつま先はキスの一つで快楽を余すところなく全身で感じているようだ。


 潤んだ瞳で見つめ合い、唇を離すと唾液が糸を引いていたが再びキスをすることで舐め取った。


 歯の裏まで舐めて舌を絡め、大勢の観客の前でもう何回かキスをする。


 ちょっと興奮し過ぎてニーティの服の裾から手を突っ込んで薄い胸に指を這わせたら殴られた。



「……それは二人きりの時だけ、です」


「ごめん、それ無理♪

 だってあたしはニーティをギルドの連中に自慢するために来たんだからな♪」


 一瞬だけニーティの上着をめくって、あたしの手だけで大事な先っちょを隠した手ぶらをすると観客大興奮♪ これもまたサービスってもんだぜ!


「もうっ! 普通だったら軽蔑しているところですよインフィさん!」


「悪い悪い♪ たぶん、またするだろうが、気にしないでくれよ♪」



 今度は首筋に噛みつかれたが、こんなノリにもニーティは慣れてくれるだろう。


 なんせ惚れた弱みというのはお互い様なのだから。


 それにしても、相変わらず美味そうな酒と料理の匂い。腹が減ってくるな。



「よぉーっし! 今日はこのあたしが恋人ニーティの自慢のために飲み食いの代金を全て奢ってやる!

 盛大に祝ってくれぇー♪」


 ふふふ、バカばかりの冒険者ギルド・サバナ中央支部は今日も百合の花が咲くのであった♪


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