第六話:鍛冶屋にて
この話の投稿前の修正作業中に、久しぶりにボカロの『炉心融解』を聴いていたら最終話についても色々と考えさせられましたねぇ~。
書いている時は最終話なんて「未来の自分が思いつくだろう♪」と思っていたのですが、いざ修正作業の間に聴くと、もしかすると未来予知の能力が宿ったのか……!? などと思ってしまう。
執筆や修正作業の時に音楽を聴くと作業そっちのけになるのですが、たまには良いものです♪
漢も出ますが、漢がでるからこそ百合の魅力が際立てば、とも思います。
「さて、今日の予定だが、ニーティの生活雑貨を買い揃えた後はサバナの街を案内しようと思うが、どうだ?」
「いいですね♪
私もこれからインフィさんと一緒に暮らすんですから、インフィさんの知り合いの人たちとも仲良くしたいです♪」
ふふふ、子どもっぽくて可愛らしいニーティは♪
それにしても彼女は魔族だからあたしよりも歳は上のようだが、肉体的に幼いからか雰囲気まで幼く見えるな。
でも、なんでエロエロボディで有名な淫魔なのにロリロリボディなんだ?
「ふんふふんふ~ん♪ インフィさ~んっとお出かけ~♪」
あ、鼻歌ノリノリのこの子見てたらどうでも良くなってきたわ♪
「ふっふっふ、インフィさん。
今、私が外見相応に幼く見えると思ったでしょう?」
「よく分かったな。顔に出てたか?」
「愛する女性の考えることなど、目を見れば読めるのですよ♪」
「こいつめ♪」
ヘッドロックからウリウリしておっぱいを押し付けてニーティを抱き枕にするあたし。
やっぱりダメだな。あたしってばニーティのことを愛し過ぎて何をしても彼女が可愛くて仕方がない♪
そんな彼女を愛でるためにも、ちゃっちゃと買い物を済ませるとしようか。
◆ ◆ ◆
と、そんな会話をしながら朝食を食べ終え、街中に出るとよく通る大通りで適当に店に入っていく。
食器や家具は家にまとめて届けてもらえば荷物を持たなくて済むな。
しかし、何人か幼女誘拐を疑ってくる知り合いもいたが、ほとんどの人たちはあたしにロリの恋人が出来たことを知っているようだった。
「よし、次は鍛冶屋にでもいくか」
「鍛冶屋で何か買うものあるんですか?」
「ふふふ、行けばわかるさ♪」
買い物の間ずっと手を繋ぎっぱなしのニーティの小首をかしげる動作もまた可愛い♪
そうして、あたしは一番大切な買い物である馴染みの鍛冶屋へと向かうのだった。
ふふふ、ここの店主は男だが漢であり、ちょっと頭のネジが緩んだ自覚のあるあたしが友人と認めるバカだからな。
「たぶん、ニーティも楽しめるだろうさ。
なんてったって、このあたしが認める腕と百合力を持つ鍛冶屋だからな♪」
「うっ、そう言われると楽しみなような不安なような……」
ニーティは複雑そうな顔をするが、会えば分かるのだからお構いなしに目的の鍛冶屋の戸を開けた。
店の中から出迎えたのはッ!?
「へらっしっぇーぃ! ……ってなんだインフィか。
毎度ドーモ、ヒゲモジャ鍛冶屋へようこそ」
陽気なテンションなのに、あたしの顔を見るなりクールダウン。しかし挨拶はしっかりとする。出迎えてくれたのは髭がもじゃもじゃのドワーフの鍛冶職人。
店のカウンターに頬杖をついて適当な接客に見えるが、目はキラキラと輝かせている。何故なら奴もまた、百合を愛する漢だからだ。
「見てみろニーティ。こいつはあたしの馴染みの鍛冶屋で名前が“ヒゲモジャ”って言うんだ。
ドワーフの中でもコイツほど立派な髭の持ち主はそうはいないぜ」
「へー、名は体を表すと言いますか、そもそもドワーフの男性で髭もじゃじゃない人なんているんですか?」
実はいるのだ。
ヒゲモジャの父親は見事なまでにツルツルで、息子には生えて欲しいという願いでこの名前にしたそうだ。
ヒゲモジャは確かまだ21歳のはずだが、それでも50過ぎにも見える。コイツの親父さんはツルツルだからか10代のような外見だったな。
「おうおう、なんだインフィ。お前さんに恋人が出来たってのは昨日の号外で知ってるが、本当にガキンチョじゃねぇか。
お前さんは大のおっぱい好きかと思ってたんだがな」
「はっ、あたしは確かに大のおっぱいが好きだが、小さいのも好きになったのさ!
それにこう見えてこの子、名前はニーティって言うんだが無茶苦茶テクニシャンなんだぜ♪」
ヒゲモジャめ! ニーティが幼いことをからかっているつもりだろうが、ロリに目覚めたあたしからすれば、くびれのないストンな体型も、幼い表情なんかの全部がニーティの長所だぜ!
しかし、ヒゲモジャとて百合が好きで百合の多いサバナの街に越してきたほどの剛の者。百合の心を母ちゃんと祖母ちゃんから受け継いだあたしの目を真っすぐに見て気づいたはずだ。
「ふん……、遊びで子どもに手を出したんなら、殺されてでも一発殴ってやろうかと思っていたが、なかなかどうして本気じゃねぇか。インフィよぉ~」
「あったりまえだ! あたしはこのニーティのことを大人だ子どもだ言う前に、一人の女として! 百合として惚れてんだからな!!」
腰に手を当て、堂々と胸を張って宣言する。
「あたしはニーティただ一人を生涯愛し続けることを誓った!」
「……えっと、インフィさん。
人前でそんなにはっきりと言われると照れると言いますか、子宮がキュンキュン疼くと言いますか。ね?」
もじもじと太ももを擦り付けているニーティ可愛い♪
紅潮した頬に、息遣いも荒くなっている。人前だってのに発情しているようだな。
「がっはっは! 本気の愛なら俺も文句を言いやしねぇさ。
昔はエロくて強いだけのインフィが、たった一人の恋人を作るだなんて思いもしなかったわい」
「あたしは何時だってたった一人の誰かを探していたんだぜ?」
「だが、それが本気とは思えない程に遊び歩いていたじゃねぇかよ、おう♪」
目を細めてあたしとニーティを交互に見やるヒゲモジャ。
そういや、コイツともかつて百合談義で杯を酌み交わしながら語り合ったものだ。
百合とはどうあるべきか。女としての在り方と、男としての見守り方。時には拳が出ることもあったが、ヒゲモジャは何度顔面が愉快なことになってもあたしとは本気で語り合ってくれているんだよな。
これからも何度も来ることになるだろうし、とりあえずは今日の用事を済ませるとしようか。
「さて、ヒゲモジャ。
本題なんだがこの紙に書いておいた衣装を予備を含めて二着ずつ作ってくれ。
あんたの言い値で最高の材料を納得いくまで時間をかけて欲しいんだ」
「お、ただの恋人自慢かラブラブえっちの一部始終をご馳走してくれるかと思いきや仕事の依頼かよ。
だが了解した。
コスチュームプレイってぇのは二人きりでするもんだろうしな」
「はっ、あんたは妄想で脳内に百合の花畑を作るだけで満足だし良いだろ?
それとも見せてやろうか?
今この場であたしとニーティのレズセックスをよ♪」
一瞬の逡巡。ヒゲモジャは悩んだが、結局首を横に振った。
「やめておくさ。
俺ぁな、目の前のたった一人だけを愛し合う純愛の百合が大好きで、そうした二人だけの行為を土足で汚すようなこたぁ、したくねぇんだよ。
男は――否、漢だからこそ神聖なる百合の領域には易々と足を踏み入れねぇ!」
「ひゅ~、言うじゃないかヒゲモジャ♪」
こいつのこういうところが気に入っているんだよな。
鍛冶屋としての腕は一流。百合が好きで理解があって、でも自分で定めた一線は決して超えない。
多くの百合の女の子たちがコイツの造る煽情的な衣装で意中の女の子を落としたことか。
百合の街でありながら女性人気も高い男、それがヒゲモジャだ。
あたしはヒゲモジャとの取引成立を握手で締めると家路へと急ぐ。
隣には恋人のニーティ。何も言わずとも自然に手を繋いでくれている。
「そういえばインフィさん。
衣装の発注だそうですが、私の身体のサイズとかいつ測ったんですか?」
「あ~、見れば分かるだろ?
この街の住人は女の身体の数値なんざ一目で分かるぞ」
「えぇ!? それじゃPADとか厚底靴とかコルセットとか、数値を誤魔化すアイテムを装備している人はどうなんですか!?」
「そりゃニーティ、隠していても分かる、だろ?
ちなみにヒゲモジャも女限定だが全部まるっとお見通しさ。
長命種の年齢や、人それぞれの視力みたいなもんの数値まで正確に見抜ける百合眼力の持ち主はそうそう居ないがね」
「お、恐ろしいほどに百合に特化した街ですね……」
「だから面白い街だろ♪」
家に帰るまでに街の住人の特徴というか特性というか、そうしたものを説明すると、ニーティの故郷とは大きく違うことが分かった。
百合が好きな連中って、これくらい当たり前かと思ったが違うのな。
そんな感想を抱きつつ、あたしはニーティと一緒にシャワーを浴びて、彼女の薄くてぺったんな胸に顔を摺り寄せた。
ぴくぴくと羞恥からか興奮からか自己主張を始めたサクランボに舌を這わせ、全身の汚れをシャワーで洗いながら愛し合うのだった。
~キャラ紹介:ヒゲモジャ~
百合で有名なサバナの街でも珍しく、女性人気の高い鍛冶屋の男性。
どんな無茶な注文でも期待以上の物を作るということで、鍛冶屋というよりは服屋というか小道具屋と言うべきか。漢である。
純愛の百合が好きなためにリョナで鬼畜な行為が街中で起きようものなら容赦しない。
店の裏に娼館とラブホテルがあるので邪悪な気配を察知すると乗り込んで救助する地域の自警団。(百合の街ですが、男性もいるし両刀もいる)
それとこの作品の世界観についてですが、百合の街と言ってもインフィの祖母が世界中で色々とやらかした設定なので百合が観光に繋がる街はあっちこっちにあります。
その中でもインフィがホームタウンにしたのでサバナの街は知名度が高めなだけだったりします。