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第十二話:悩み

 ???side



 また……、私はまた繰り返そうとしている。


 これまでに何度も失ってきたのに、また期待をしている。


 あの人も駄目だ。本気になって、もしもまた失ってしまったら私はどうなってしまうのだろう?


 幸せを感じるたびに、幸せを拒絶したくなる。


 まだ抑えが効く。だからもう少し、もう少しだけと抑え続けてきたけれど、もう限界も近い。


 だから最後には拒む。拒んで見せる。たとえ不幸しか生まない結末でも、今だけはぬるま湯のような愛に浸っていたい。


 私が人並みの命だったならば生涯愛していたいんです、インフィさん。でも私は……、



 ◆ ◆ ◆



 インフィside



「よーっす! 今日も急ぎの仕事がないからあそびに来たぜ♪」


「私も来ました♪」


 S級冒険者の肩書も、依頼が来なければただのプー。そんなあたしは今日もニーティと一緒に馴染みの喫茶:幼女記へとやってきていた。


 店の奥の個室が何部屋か埋まっているようだな。あたしも人のことは言えないがロリコンも多い街だな♪



「……あぁ、いらっしゃい。インフィ&ニーティちゃん。

 今日もニーティちゃんは可愛らしいね。

 インフィと一緒だからか可愛さが際立って見える。実に悪くない」


 出迎えてくれたのは、幼い少女の百合が大好きな変態という名の紳士。この店の店主エーウェストだ。


 あたしらが来るといつもコーヒーを淹れてくれるが、実はあたしはコーヒーよりは紅茶や緑茶の方が好きなんだがな。



「知っているかいインフィ?

 コーヒーは沢山飲むと女性の胸が小さくなるんだ。

 僕の店のコーヒーは念を込めてあるから身長も縮んで君みたいに背の高い女性もロリっ子に肉体改造してくれたらいいな……、という妄想からコーヒーを勧めているんだよ」


「あたしの身体が飲み物程度で左右されてたまるか!

 でもニーティが今よりも幼くなるのは……ちょっと見てみたいかもな♪」


「だろう?」


 とはいえ、成長できないことを気にしているニーティがどういう反応をするのか気になるところ。



「私の身体はこれ以上、良くも悪くも変化しないですよ?」


 とのこと。いやまぁ、本人が気にしていないのなら別にいいか。


 実はちょっと悪乗りして傷つけちゃいないか心配だったが、ニーティも慣れてくれたってことなんだろうな。



「それよりインフィ。

 ニーティちゃんの服は君が選んでいるのかい?」


「ん? あぁ、いや。店で色々と流行り物を適当にオーダーメイドしただけだ。

 最近のニーティくらいの小さい女の子はこんなもんだろ? 可愛いし♪」


 本日のニーティの服装。清楚なロングスカートのメイド服。白と黒でシンプルながらも機能性を重視して太ももにはナイフを何本か装備させている。


 ロングスカートなのにナイフ装備というのがポイントだ♪ ナイフを取り出すには大きくまくり上げなければならない。つまり……むふふ♪



「可愛いのは認めるさ。悪くない。

 だがね、彼女のように幼く可憐な少女はナイフよりも銃の方が良くないかい?

 ほら、例えば背中にライフル銃を暗器のように隠し持つとか」


「確かに悪くないな。だが良くも無い。

 あたしはやはり、メイド服にはナイフ、または刃物全般だと思うんだぜ!」


 ただの拘りだが、ニーティの可憐さは刃物とよく似合う!


 だがしかし! エーウェストは断固として銃を譲らない。


 額をぶつけ合い、にらみ合ってもお互いに引けない戦いがここにある!


 口論になったあたし達は飲み比べで勝負しようということになったのだが、度数が強かったからか段々と眠くなってしまう。



「……二日酔いや眩暈なんてもんにはならないが、どうにも眠気はキツイな」


「大丈夫ですか? インフィさん」


 ニーティは特にできることがないからか抱き寄せてその薄い胸にあたしの頭を押し付けてくれている。


 あぁ~、幸せだなぁ~♪



「酒に酔う大人の女性と、それを介抱する幼女……。悪くない」


 店を開いているからか、やたらと酒に強いエーウェストは話しながらも杯を水のように飲んでいく。



「まぁ、僕が飲んでいるのは水だからね。

 流石にインフィが眠くなるほどの量を飲んで平気な人間なんていないさ」


 くっ、罵りたいところだが口を開くのすら億劫になってきやがったぜ。



「まぁ、聞きなよインフィ。それにニーティちゃんも。

 君たち二人は確かに愛し合っているし、その関係はすでにサバナの街では広く知れ渡っている。

 冒険者の中でも“三百合ヴァルヴォルーガ”たちのチームが良からぬ輩を人知れず始末してくれているのもあるが、君たちは誰からも認められた関係なんだ」


 今度は酒(水)ではなくコーヒーを飲んでセリフを区切るエーウェスト。


「さて、ここまで現状を語ったところで次はニーティちゃんだ。

 君がインフィを愛しているのは僕も分かるが、インフィが君を愛していることを君はもっと理解するべきだ」


「? 私はインフィさんと愛し合っていますけど……」


 

 エーウェストは何が言いたいのだろうか?


 あたしの愛をニーティが疑っていると言うのか? 流石にそれは無いだろう。

 彼女はあたしを求めてくれている。



「そうだよインフィ。確かにニーティちゃんは君を必要としている。

 だけどね、百合であると同時に男の僕だからこそ分かるんだが、ニーティちゃんは肉体関係以上の間柄になることをひどく恐れているように見えるんだ」


「……」


 何が言いたいんだ?


「あぁ、別にそのまま聞いてくれていればいいさ。カウンターに突っ伏して寝ながら聞いていればいい。

 僕が言いたいのは、ニーティちゃんは君の愛を完全には受け入れていない。

 まだ本当につながった伴侶には見えないってことだね」


「……おい、あたしらを貶しているんだったら喧嘩は買うぞ?」


 声が低くなって殺気も混じったが、エーウェストはどこ吹く風。

 鼻で笑いつつも笑顔を浮かべて首を振った。


「僕は幼い百合っ子の味方さ。喧嘩を売るつもりはない。

 むしろこれは君ではなく、ニーティちゃんへの忠告……、になるのかな?」


「忠告だぁ~?」


「そう。僕には兄弟がいてね。

 見渡す限り触手が乱立する触手の森の集落で焼き鳥屋を営んでいるんだけれど、ニーティちゃんを見ていると色々と考えさせられるのさ」


「ッ!?」


 ニーティが見たことも無いほどに青ざめた顔で驚き、そしてうつむいて顔を上げない。


「ごめんね、ニーティちゃん。

 君を傷つけるつもりは無かったが、僕も店をやっているから色々と情報は多く耳に入ってね。

 君が自分で自分を傷つけそうだから言っておきたかったんだ」


「わ、私は、自分、を傷つけるだなんて……」


「嘘はいけない。

 君自身、まだ悩んでいるのだろうから今は何も言わなくてもいいさ。

 でもね、インフィが君を心の底から愛しているということ、そして世界中で一番強くて君のためならどんな死地からでも這い上がってくることを知ってほしいんだ」


 ……あたしはバカだから二人が何を言っているのか、正直よく分からん。


 それでもニーティが何かに悩んでいるなら手を差し伸べるさ。自分から手を掴めないならあたしが掴む!


 生涯愛することを誓ったのは、自分のためだけでなく、ニーティのための誓いでもあるんだからな。



「ふふふ、良い顔するじゃないかインフィ。

 それでこそ僕の友だ。悪くない」


「うっせぇロリコン」


「それも今じゃお互い様だね。

 ……守ってやれよ、ニーティちゃんを」


 茶化すような口調だが目は真剣だ。だからあたしは、言葉ではなく行動で示す。


 えっちな行動でだッ!



「あそれ♪」


 ずぷん、と後ろから抱き寄せたニーティのロングスカートの中に指先を挿し込んでからかった。


 完全に油断していたからか、ものの見事に指が根元までぷっすりと♪



「はにゃぁ!?」


「おぉ、ナイス嬌声♪

 ニーティもさ、悩みなんてえっちなことして忘れちまえばいいんだよ♪」


 あまりにも唐突なイタズラにバカだのエッチだのとニーティからは怒られて、

 エーウェストは鼻血を吹き出しながら静かに笑っていた。


「ふふふ、愛ってのはこれ位分かりやすいもんさ♪」


「えっちなのは二人きりの時だけですッ!」


「そうだぞインフィ。そんなえっちぃ行為は……悪くない♪」



 今度はエーウェストがニーティにぽかぽかと叩かれているが嬉しそうだ。


 まぁ、バカな事やって空気を壊してみたけどさ。結局のところニーティが何か悩んでいても、あたしのすることはただ一つ。愛してやるのさ。身も心も信じ切ってさ。


 だって生涯愛するってことは、一生を共に歩いて行くことなんだから。それだけでいいんだよ。難しく考える必要なんてないさ。


 明日が最終回となります。

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