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閑話:三百合の誓い

 今回は番外と言いますか、三人称視点でのインフィ以外のサバナの街の百合たちのお話です。


 今作は最初から最後までインフィの一人称で通そうかと当初は思っていたのですが、まぁ、こういうノリも書きたくなったということで。気分で話を進めるのが私です♪


 『なろう』作品ですし、えっちぃ話ばかりでなくても良いでしょう♪



 物語の主人公、インフィとニーティが暮らすサバナの街は冒険者が質も数も揃っていることで知られている。


 街の周辺に高ランクの魔物が出没することで有名なために、腕を鍛えたり百合道を極めんとする求道者が集まるからだ。


 そしてこの世界に“百合”という生き様を広く知らしめた百合の伝道者である“空賊”のムツ団長という女傑の生まれた街とも言われている。


 と言うのも、伝説のムツ団長は気が付いたら世界各地を飛行船で旅をしながら生きていたため情報があいまいだからだ。


 彼女が歴史上に登場することで同性愛――とりわけレズビアンについての考え方が大きく変わり、彼女の死後は神格化してあちこちに百合の神殿が建てられたために、我こそはムツ神による百合教の聖地であると主張する者が多いのだ。


 それはサバナの街でも言えることで、ムツ団長がよく遊びに来ていたという理由から街にある百合教の神殿関係者は聖地を主張している。


 そんな街にムツ団長の後継者が越して来たらどう思われるだろうか?

 答えは簡単だ。さらに人が増える!


 残念ながらムツ団長本人はすでに鬼籍に入っているし、その娘にして“二代目”のイチ団長は本当にたまにしか遊びに来ない。


 だが、“三代目”扱いされているイチ団長の娘こそが世界有数のS級冒険者インフィなのである。


 純粋にインフィ自身が類稀なる腕っぷしの強さを持っていたというのも理由だが、それ以上に百合教の信者たちが彼女のランクアップを支持しまくった結果、歴代最強の冒険者の称号まで得ている。


 インフィ本人は空賊稼業を継ぐよりも冒険者として生きる道を選んだため、空賊団は“四代目”の物となるだろう。


 ムツ団長を始祖とするムツ空賊団は百合の系譜。二代目のイチ団長も三代目のインフィもそれぞれの先代が旅先で見つけて養子とした百合の原石だ。


 そんな訳で三代目のインフィに認められれば四代目を襲名出来る。当然、その肩書を目的とした悪辣なる者もいたにはいたが、サバナの街は仮にも百合教の聖地。


 ムツ団長――ムツ神への憧れや信仰からこの地に暮らす者たちが、そのような不埒者を悉く駆逐していった。


 となると残っているのは気楽なS級冒険者インフィと、そんな彼女を純粋に慕う百合を生き様とする者たち。


 インフィが住むサバナの街中央区の冒険者ギルドでは強さ、胆力、そして百合力に優れた冒険者が多くいるのだった。



 ◆ ◆ ◆



「おい、今朝の百合新聞を読んだか?」


「当然だ。百合を愛し、百合を貴ぶ誇り高きサバナの街中央区所属の冒険者に知らぬ者はいない!」


「私は昨日、インフィ様が帰ってこられた時にすでに知っていましたわ♪」



 中央区冒険者ギルドの一角、遠めに見てもはっきりと分かるほどに強い百合力のオーラを纏った三人がいた。



「オレのチームは昨日の夜に依頼から帰ってきて報告後すぐに寝ちまったからな。

 新聞を読んだときは驚いたよ」


 赤褐色の髪をベリーショートに刈った背の高い筋肉質な女性が言う。


 彼女はチーム“百合の探究者”のリーダー。“半裸”のミルド。マグマの中にだって半裸で飛び込み、馬鹿でかい包丁でドラゴンだって切り殺してその場で食べてしまう剛の者だ。百合力5億。



「ボクのチームは昨日は休みだから全員そろって家で乱交してたんだよね」


 黒髪を後ろで縛ったポニーテール。小柄で可愛らしい女性も言う。


 彼女はチーム“根源の百合”のリーダー。“応援師”のロザーナ。マグマの如き炎を操る魔術師であり、その炎はドラゴンだって焼き殺す。百合力4億3千万



「私はインフィ様の信者であり、ムツ教徒であると同時にインフィ教徒でもあるので情報に聡いのは当然ですわ♪」


 仮面で顔の上半分を隠した女性が得意げに言う。


 彼女はチーム“秘めたる百合”のリーダー。“暗殺”のメフィ。怜悧な笑みをたたえた口元から物静かな印象があるが、戦闘においてはマグマの如き闘争心でドラゴンにすら気配を察知されずに頭蓋を貫く。百合力5億8千万。



「いつ情報を得たかは、ぶっちゃけどうでもいい!

 問題なのは、特定の恋人を持たなかったインフィさんに恋人が出来たってことだ!!」


「それもロリっロリの、ね」


「私も、インフィ様ならばもっと育った女性を伴侶に迎えると思っていたのですけれどね……」



 三人そろって“三百合ヴァルヴォルーガ”と呼ばれ、それぞれにサバナの街を拠点とする百合のA級冒険者チームのリーダー。

 実力、実績、百合力。どれをとっても優れた冒険者であり、百合強者である。


 そんな彼女たちのテーブル付近は溢れんばかりのオーラに満ち、一般客は青ざめた顔で気おされたり、頬を朱に染めて股間を火照らせながら様子を見守っている。


 確かに街の住人からは、インフィの伴侶が務まる者などこの街においては“三百合ヴァルヴォルーガ”の誰かだろうと噂されていた。


 実際にインフィは恋人こそ作らなかったがベッドを共にした女性は多くいるし、三人も経験済みだ。


 三人は体力、精神力、百合力に優れた女性であるため肉体関係を誘われた時は嬉しさに舞い上がり、最強の百合と組み合った。


 ……しかし、インフィの圧倒的なまでの百合力によって幾度も絶頂を迎えながらもインフィを満足させることは出来なかったのだそうだ。


 いつかは自分こそが、その一心で心身を鍛えていたところに恋人発表だ。


 さぞ悔しい思いをしていることだろうと誰もが思っていた。だが!



「あれは仕方がない!

 可愛すぎるからな♪」


「ええ、そうですね。

 ボクもロリコンではなかったしインフィさんもそうだったはずですが、アレ、どう見てもインフィさんの方が骨抜きにされてましたからね♪」


「インフィ様を満たす相手は私だと思っていたのに、実際に見れば分かってしまうものですわ♪」



 百合力が高い故に、三人はニーティの百合力を見抜いていた。


 見た目は幼い。むしろ貧相にすら見える肉付きの薄い胸と、細く未成熟な四肢。

 種族は魔族――それも淫魔であろうに性的魅力に乏しい身体。


 それでも見る者が見れば分かるのだ。ニーティはただの幼い子どもなどではない。



「オレは相手を見抜くのは苦手なんだが、それでも感じたぜ。

 ロザーナとメフィは分かったか?」


「いいえ、ボクも自分より強いこと以外に分かりませんでしたね」


「私も彼女――ニーティちゃんの百合力の底は見えませんでしたが、それでもオーラの質がインフィ様と似ているのは感じましたわ」


 三人の中で一番百合力の高いメフィですら見通せない百合力。その百合眼力も三人で一番なのだが、それでも見通せなかったのだと言う。

 


「へー、つまりインフィ様が本気で欲望をさらけ出して、それを受けきったってことか?」


「インフィさんに実際に抱いてもらったことのある僕らからしたら信じられないよね。

 あの夜は愛情いっぱい、優しさいっぱいでの行為だったのに全身がバラバラになるかと思ったよ」


「そうですわね。

 インフィ様は相手に合わせて加減はしてくれますが、その上で私たちが一晩中ずっと絶頂し続けたんですもの」



 三人は思い出す。インフィに連れられてギルドへと入って来た少女ニーティを。


 あの百合力。殴る蹴るの戦闘力という点ではA級冒険者の自分たちでも勝てるだろう。それでも百合力が圧倒的に違う。


 目と目が合っただけで割目クレヴァスは蜜を湛え、膝は震えて立っていられなくなる。


 あれこそが百合神の系譜の伴侶。それが一目で分かってしまうのだ。



「サバナの街は質が揃っているから問題は起きねーと思うけどよ?」


「ええ、そうですね。

 それでもたぶん、起きるでしょうね」


「ニーティちゃんを見掛けで判断して良からぬことを企てる不埒者、ですわね?」



 “三百合ヴァルヴォルーガ”の三人は頷き合い、同時に席を立つ。


 三人がやるべきことはまとまった。この街の百合勢力はうねりを上げてインフィの伴侶ニーティを巻き込んだ争いが興そうとするだろう。


 そうなればインフィ自身が手を下すだろうが、彼女たちの憧れであるインフィの手を煩わせるのは恋人を目指していた自分たちにとっては最大の屈辱だ。


 必ず守る。三人は自分の百合力に自惚れて研鑽を怠るような軟弱者ではない。

 本気でインフィの恋人の座を狙っていた剛の者なのだから。



「関係各所への連絡は側に控えていた仲間にさせたぜ」


「ボクの方もチームメンバーを使って他国にも連絡を入れておきました」


「私も持ちうる全ての情報網を使って今後の動向をお二人にお伝えしますわ」


 三人は手を重ね合う。



「「「我ら三人、生まれし日時は違えども、目指す百合の頂に近づくために百合神の敵を討ち滅ぼす者也!!!」」」



 突如としてギルド内に突風が吹き荒れた!


 見る者すべてを――それこそ男女問わず、百合も非百合も問わない遥かなる頂きを純粋に目指す三人の百合力が巻き起こしたオーラが風となって駆け抜けたからだ。


 そうして三人は揃ってギルドを出るとだ武ホテルへと向かう。

 昂ぶった百合力をまずは発散しなければ話にならないからだ。


 自分と同等の百合が二人もいれば、また一つ上の階段を登れるだろう。


 そうした打算もあるのかもしれないが、それでも“三百合ヴァルヴォルーガ”の三人は百合という名の固い絆をインフィへの性愛によってコーティングして結びついている。


 かくして、サバナの街は波乱の予感に包まれるのであった……。





 “三百合”の読み方は“サザンドーラ”と“デルタモーン”で悩みました。


 ぶっちゃけ、今作の執筆意欲の切っ掛けとなった作品の一つに『カオスレギオン』という熱い作品があるのでカタカナでルビ振りたかっただけだったりするんですよね。

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