豚男は嬉しそうに撮影会を始める。
よろしくお願いします。
「うーん・・・」
豚男のトムはチャリオットに乗せていた大量の女性用衣装と横一列に並べた村の娘一人一人見比べている。気に入った衣装を掴みとり一人の娘に合わせてみてはまた元の場所に戻す。先ほどからこの繰り返しをしている。他の村人達は先ほどの野盗達に縛られたまま広場に放置されたままだ。
すぐにでもここから逃げ出したい。この場にいるトム以外の全員の気持ちは同じだった。しかし先ほど野盗の男の頭を一瞬で潰した光景が頭に焼き付いており、恐怖で逃げ出す事を躊躇わせていた。
「・・・はっ?!」
途端何かが閃いたトム。まさに頭に電流が走る・・・っ。数ある衣装の一つを掴むとハツの体に合わせた。その衣装は・・・・・・・第三界発祥の”女性用競泳水着”だった。黒のハーフスパッツモデルだ。太ももと胸辺りに作った会社のロゴらしい物がプリントされている。
「こっ・・・・・・・・・・これだぁ・・・・・・・ッ」
喜びで体と声を震わせながら豚男はその場で悶絶。鼻息が荒くなる。そのさまは本当に豚のようだ。
「お前、・・・お前の名前は?」
これから襲い掛かりそうな様子にハツは涙目になりながら震える声で「ハ・・・ハツ・・・です」と答える。トムは呼吸を荒げながらハツの両肩を掴む。「いたぃ・・・ッ」小さな呻き声も漏らすハツ。
「おい!・・・ゴフッ・・・頼む!娘には手を出さないでくれ!!」
先程野盗達にさんざん痛めつけられ気絶していたハツの父親が大声で懇願する。
「私に出来る事があれば何でもする!!だから・・・娘だけは・・・ッ!!」
「うるせぇぇ!!」
トムは背後に置かれたモーニングスターの鉄球を宙に向かって振るった。空に飛んだ巨大鉄球はハツの父親に向かって落ちていく・・・・・。
『うわあああああああああ!!!』
巨大鉄球は地面に落下した。複数あっただろう悲鳴は掻き消えた。落下の衝撃で土煙が吹き荒れ、落下音と同時にぐしゃりという肉と骨が潰れたような音が聞こえてきた。ハツの父親だけではない。周りで蹲っていた村人達もまとめて鉄球の餌食になった。
「これで静かになったなぁ」
少しスッキリした様子のトムとは対照的にハツは泣きじゃくっていた。
「そ、そんな・・・・・・お、お父さん・・・・っ。お父さんッ!!・・・・・・うっ・・・・・うゥ・・・」
だがトムはハツのそんな様子など気にせず顔に競泳水着を押し付ける。
「おい、さっさとこれに着替えろ。この場でな」
「・・・え?」
「着替える所も撮るんだよ。いいからさっさとしろ。もう撮影会は始まってるんだ」
「そ、そんな・・・この場でなんて・・・」
ハツは恥ずかしそうに顔を俯かせる。だが何故かトムは嬉しそうに息を荒げ始めた。
「あ~~~、いいよいいよぉその顔~。ハァハァ・・・っ。折角だからその調子で着替えてみてくれ」
いつの間にかハツの周りには撮影のセットが用意されておりトムも楽しそうにカメラのレンズを覗き込んでいる。
助けを求めるように周りの友達の女の子達を見渡す。皆目を背けて誰もハツを見ようとしない。ミナですら悔しそうな顔を浮かべてはいるが目を合わせてはくれなかった。
見かねたトムが口を開く。
「ここにいる人間を全員殺さないと着替えられねぇのか?」
「・・・っ!?・・・い、いえ!・・・大丈夫です・・・出来ます」
観念したハツは涙目になりながらトムに渡された競泳水着に着替え始める。同時にトムのカメラからシャッターを切る音が聞こえてきた。
「そうか、やはり皆最初は下からなんだなァ・・・。な、何っ!?そ、それは・・・っ。知っているぞ、”タイツ”という代物だろう・・・。黒とは分かってるじゃないかァ・・・。デニール数は・・・40といった所か・・・。しかし東ノ宮での普及率は5%を下回っていたはず・・・っ!まさかこんな所でお目に掛かれるとは・・・ッ!!」
食い入るようにハツの下半身を撮り続ける豚男。はたから見ても分かる。興奮しているのだ。シャッターを切る音は止まない。タイツとショーツを脱ぎ終わり次は上着を脱ぎ始める。
「そうかそうか、やはりシャツのボタンは上から・・・・・おお~ほおおおおおッ!。意外と着やせするタイプだったか。思っていたより胸がデカくて俺は満足だよ」
「う・・・うぅ・・・ッ」
ハツは裸になった。涙が止まらない。しかし現状は何も変わらない。いっそもう殺して欲しくなっていた。次は競泳水着に手を伸ばす。
「さぁ、とうとう次は競泳水着だぁ・・・。まずは両足とも膝上まで穿いた後しわが出来ないように丁寧に引き上げるんだ・・・。そう・・・ようし、そうだぁ・・・。あ~たまんねえ・・・ッ!!」
興奮しているトム。三脚からカメラを取り外し別の角度からも撮影し始める。周りの人間は何もしない。ただ黙って見ているだけだ。豚男の五月蠅い口呼吸とシャッター音だけがその場に流れている。
水着の生地は胸近くの位置までみるみる上がっていき、肩紐に腕が通り、ハツの着用は終了した。
「ハァ・・・・ッ!ハァ・・・・・ッ!ああ・・・・・っ!!いぃ・・・・っ!!・・・よかった・・・・・すごく良かったよお前・・・・・・」
トムは肩で息をしながら持っているカメラを下ろした。
「改めて、名前を聞いておこうか」
ハツは涙を流しながら震えている。肩を抱いて、その場に縮こまっている。
「ハ・・・ハツ・・・・・です・・・」
か細い声で答える。
「そうか、ハツ・・・ハツだな・・・ハツ・・・よし、覚えた」
トムは醜く肥えた下品な顔で満面の笑みを浮かべた。周りの人間は一斉に恐怖する。しかし、それはトムの精一杯の感謝の笑顔だった。
「ありがとうよ」
その一言とほぼ同時にハツの頭にトムの腕が伸びていた。そして次の瞬間、骨が割れ、血が噴き出る音が響き渡る。頭を潰されたハツの体は糸が切れた操り人形のように力なく地面に崩れ落ちた。
「きゃあああああああああああああああ!!!」
周りで見ていた娘達が悲鳴を上げる。それを皮切りに場がパニックになる。泣き崩れる者。逃げ回る者。錯乱してあばれだす者。騒ぎが伝染していく中トムは面倒くさそうな顔で自分の腹をかいている。
「あ~もう、騒ぐな騒ぐな。全くこれだから人間って奴は・・・」
トムはとりあえずハツを抱きかかえて泣きわめいているミナに近づく。
「うっ・・・・・・・ハツ・・・・ッ!ハツぅ・・・・・!ご、ごめん・・・っ。ごめんなさい・・・・・っ!わ、私・・・・・・っ!」
「おいお前、泣き止め」
泣くのを止めないミナ。
「泣き止めよ」
ミナを殴りつけるトム。ミナの首から上が吹き飛んだ。血しぶきが上がる。泣き止んだ。
「あっ、あ~あ。またやっちまった。貴重な女の子が・・・」
残念そうな顔で他の村人達をあやして回るトム。逃げた女達はジャイアントウルフに追わせた。一通りあやし終わると悲鳴が無くなった代わりに誰も動かなくなった。
「結局撮れたのはあの娘だけかぁ。・・・えー・・・は・・・・あ?・・・・・・・あー、名前忘れたな」
トムは次の村を訪問する為に後片づけを始めた。