表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今家に帰ります  作者: tomoji
魔王城までの道すがら
33/62

断罪屋

冷える冷える

 「あんたが俺を呼び出すとは・・・相当切羽詰ってるみたいだなぁ、先生」


第一修道教会の教主室の一室で灰色のロングコートを身に纏い丸型のサングラスを掛けた大男は部屋に入るなりろくあいさつを交わす事無くその第一声を放つ。そして客用の赤い肌触りの良いソファに腰掛けながらにやけた顔で向かいの席に座る第一修道教会の教主を見た。教主は既に髪が無くなっている頭にいくつもの血管を浮かばせながらこちらを睨んでいた。


「知らんよ。本来なら我々第一修道教会も今回の魔王討伐試練に参加するはずだったのだ。・・・なのにいつの間にか私達は辞退の意思をスダ王に表明していたのだ!!確かにその記憶はある・・・。だが何故そのような事をしたのか全く分からん!!一体私はどうしてしまったというのだ!!!?」


教主は応接用の机を両腕で思い切り叩いた後、気が狂ったかのように頭を抱えていた。腕に痛みはあるだろうが怒りで忘れている様だった。その様子を男は鼻で笑いながら一蹴した。


「知りませんよ、俺にそんな事言われても。それよりさっさと仕事の話をしましょうよ。あんたは俺の事を嫌ってるでしょうけど俺もこんな所、出来ればさっさと出て行きたいんでね」

「・・・今回の仕事は試練に選ばれた勇者共、そして我々第一修道教会を追いこんでくれた賊を見つけ次第ころ・・・断罪する事だ。」


教主は少し落ち着きを取り戻すように小さく咳払いし、続けて話す。


「だが用心してかかれ。ナミカミ様も前回の件を踏まえて勇者連中により強力な神使を送り込んだはず。一筋縄では・・」

「問題はどんな仕事かじゃない俺にいくら払えるかだ。全ては金だよ先生?」


男は足を組みながらソファの背もたれに寄りかかる。顔からは余裕の表情が浮かんでおり自信の強さが伺えた。教主はその様子を怒りをにじませた顔で睨みつける。


「1000万」

「ああ、なんてことだぁ!今まで何度も世界の危機を救ってきた第一修道教会がまさかの辞退なんて。これで教会の信用はがた落ちだなぁ!」

「2000!」

「可愛そうにまさか教主様直々に試練の辞退表明してしまうなんて責任問題だなー!!命が惜しくなったのでしょうか!これは信者達からなんと言われるかなぁ!早々に辞任に追い込まれるんじゃない・・」

「2500!!」

「3億だ。寝ぼけるなよハゲ」


男は冷やかな目つきで右手で三本指を立てて教主に見せつける。教主はそれを見て引きつった笑みを見せる。


「はっ!!はははっ!!な、何を言っている!?そんな額払えるわけ・・」

「あんたさっき言っただろ、今までとはわけが違うと。これからそんな危ない奴らと命のやり取り殺し殺されを繰り広げるんだからこれくらい貰わないとぉ。でも先生にはそれなりに世話になってるから~これが俺なりの精一杯の譲歩ですよ。別に嫌なら下りてもいいですけど、どうせ他の奴らにも断られちゃったんですよねェかわいそうに~。まあこれが終わったらまた信者からたくさん吸い上げればいいだろ先生?」

「く、・・・・この」


教主は怒りに震えていた。しかしこの話を飲まざるを得ない。性格は最悪だがこの男の実力は本物でありその手で何度も邪魔な異教徒共が信じる勇者共を葬ってきたのだ。


「さあ、俺が最後の砦だよ先生?」

「・・・・・・・・・・・・・・よ・・・、宜しく・・・頼・・・む・・・ジャック・・・!」


教主は震える身体に耐えながら目の前の男に頭を下げた。男はその様子を楽しそうに嬉しそうに見つめた後ソファからゆっくりと立ち上がった。


「早速仕事に取り掛かりますよ。諸々の手引きは宜しくお願いしますね。あ、お金は明日中に指定の口座にお願いしますね」


ジャックと呼ばれるその男は軽やかな足取りで出入り口のドアまで歩いていく途中で何かを思い出したのか教主に振り返った。


「ああ、忘れてたけど魔王は殺さなくてもいいのか?」

「殺す・・・?口を慎め。魔王が存在するおかげで今の教会があるのだぞ。・・・我々は試練を辞退した身だ。ここで魔王を倒したとしても民衆は喜んでもナミカミ様の怒りを買う恐れがある。そんな事になれば教会と神の関係はおしまいだよ。今はとにかく他の勇者達が魔王を倒すような事が起きなければ良い。そのために他の人間がどうなろうが構わん。」

「あ~、あははははそうですか!流石は俺が敬愛する教主様だ。そんなお方と仕事が出来て俺は嬉しいですよ」

「ふんっ!分かったならとっとと行け!!ジャック、分かっていると思うが時間はあまり残されていないのだ、早々にケリを付けろ。任せたからには完璧にこなしてもらうぞ」

「ええ、分かってますよぉ。まあ任せて下さい」

不機嫌そうな怒りの教主の顔とは対照的にジャックは満面の笑みで答えた後そっと部屋から出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ