9話
太陽が沈み、辺りは徐々に暗闇が支配していく中、小さな街にある丘の上の公園で武人とその男は出会った。
「…あんた、誰ですか?」
様々な試行錯誤を経たのちに口から出た言葉であった。言葉通りの意味も含んでいたが、武人が知りたいのは“何をしているのか”ということと、“どうしてここにいるのか”といったニュアンスも兼ねていた。
武人の率直な質問にひとつ間を置いたあと、その男は口を開く。
「俺の声が聞こえるか?言葉がわかるか?」
男から発せられた最初の言葉。それはあまりにも意外すぎて武人は動揺を隠せなかった。
自分が予想していた返答とは全く違う言葉が返ってきたからである。まるで意識を失いかけている怪我人にかけるような言葉だ。もちろんそのシチュエーションのような必死さなどはなかった。男は表情を変えることもなく、ただ武人の顔をしっかりと見据えながらその言葉を発したのだ。
武人はどう答えていいかわからなかった。もちろん、彼の言ってる言葉は聞こえているし、理解もできる。しかし彼の発する異様な雰囲気により、隆人や龍真と会話するときのようなふざけた物言いはできないとすぐに判断がで きた。
ここは素直にありのままのことを言おう。そう考え、武人は口を開く。
「あんたの言ってることはちゃんと聞こえてるし、頭でもわかるよ。」
「わかった。それじゃあ早速本題に入らせてもらう。」
武人が話の流れについていけないにも関わらず、男は淡々とした口調で続けた。その冷たい話し方から彼は武人が自分の話についていけているのかどうかなどは関係ないようだった。
「まず最初に、謝らせてくれ。すまない」
冷徹な男から“まず最初に”と告げられた言葉、それは謝罪の言葉だった。思わず武人もえっ?と声を漏らした。なぜ自分に謝るのか見当もつかない。しかし、その冷たい態度の中には確かな謝罪の意が感じ取れた。
「これからお前に力を与える。」
謝った時の態度を切り替え、また無表情になった男が最初に発した言葉がそれだった。