11話
すっかり暗くなった公園の街灯が、武人とその男を照らす。
武人は誰かに見られてないか、ということを気にしていたが幸い…と言っていいのだろうか。公園に訪れる人の影はなかった。
「それじゃあ早速ーーー」
男は右手を正面の地面へ向けた。
その瞬間、地面の土がボコボコと音をあげながら隆起する。武人はその異様な光景に驚きを隠せなかった。
「どうなってんだ…。」
やがて隆起した地面はあるものを形作るようにどんどん成長していく。それは、ちょうど武人と同じ大きさで、頭があり、四肢があるーーーそう、ヒトの形であった。
「試すとしようか。」
男は地面でできたオブジェクトへ向けて、先ほど武人にやった指差しをする。すると、オブジェクトはメキメキと音を立てながら震え、地面との接合部であった足の底を切り離した。
「動いた…!!」
武人は自分と同じのスケール大を持った土の人形に目を丸くしながら唖然とするしかなかった。
「今からこいつと戦ってもらう。センスの使い方は…」
「待って!戦うってどうすりゃいいんだよ!」
戦う…よく耳にしたり口にしたりはする言葉だが、実際に自分が本当の意味で 体験したことはない言葉。それに武人は敏感に反応した。
「だから、お前はもうタダの人間じゃない。センスを使って戦え。」
センス…これもよく聞いたりする言葉だったが、本質的な意味は?と聞かれれば咄嗟に答えが出てくるものではなかった。それに、彼が言うにはその“力”の呼称らしい。
「で、使い方はとにかくイメージだ。頭の中に自分がセンスで使うビジョンを描く。」
「イメージ…。ビジョン…?」
イメージするもなにも、彼はそのセンスとやらを使ったことがない。どうイメージすればいいのかわかるはずもなかった。そんな武人を置いてけぼりにして、状況はどんどん進んでいく。
「じゃあ、いくぞ。」
男がその言葉を言い終えた瞬間、土の人形が右足で大きく地面を踏み込んだ。それは人形の体を大きく宙へと舞い上がらせ、一瞬にして武人の目の前へと跳躍させる。
そして右手の拳を握り、右肘を屈折させ、大きく後ろへ引く。所謂「パンチ」の構えだ。
「……!!」
(殴られる…!!!)




