10話
「えっ?」
またしても驚きの声が漏れた。
そして、この時武人は思った。この男は明らかにおかしい、と。変質者や頭の狂った奴らに使うおかしいではない。こいつの存在自体がおかしい、と体で感じた。
「力の名前はセンス。俺のいる世界じゃそう呼ばれてる。」
男はゆっくりと右腕を上げる。そして、地面と平行になるように、武人の顔へ向けて指差しをした。
「この世界じゃ…お前が初めてだ。」
「うっ…!!」
彼に指を刺された瞬間、武人の脳裏に衝撃が走った。それと同時に頭の中を凄まじい痛みが襲う。そして無意識に膝からガクッとその場に崩れ落ちた。
「うあぁぁぁぁ!!!痛えぇぇ!!!!!!」
抑えきれないような頭の痛みに思わず声をあげて悶絶する。
「……。」
武人が痛みに悶えるのを男は表情ひとつ変えず、彼の頭上を見下すような形で眺めていた。
「あぁぁぁぁ、あ、あ…。」
武人の頭が痛みに襲われてから1分が経過しそうになった時、ぴたりとその激痛は治まった。
「…ハァ……ハァ…。」
武人は約1分間の激痛による断末魔ですっかりと体力を使ってしまい、息が途切れ途切れになっており、肩で呼吸をしていた 。
「…ハァ…謝っておくっつーのはよ、こういうことかよ…」
やっと呼吸が整ってきて、地面から立ち上がりながら武人は男に参ったような口調で言った。
「違う。とりあえず力は使えるようになったハズだ。」
男は武人の言葉をはっきりと否定した。それに対して武人はじゃあなんだよと聞き返したくなったが、力が使えるようになったという言葉に非常に好奇心をそそられた。
先ほど自分を襲ったわけのわからない激痛が彼の仕業だとすれば、今更この男の言ってることが“有り得ない”だとか考える必要は無くなったからだ。
コイツは普通の人間じゃない。
自分の常識は役に立たない。
頭と体ですぐに理解ができた。




