第一章 green of sign
パレット・サイン
「君は何色かなぁ?」
「僕はただの白さ。」
「うわぁ、こんなにも綺麗な白、生まれて初めてみたなぁ。」
「そうかい。少し照れるな。」
「君ならあるいはーーーできるかもしれない」
「一体何を?」
「なぁに、じきにわかるさ。君がなぜ白なのか。ここはーーーいや世界は、君の手にかかっているーーー」
4月。僕は私立藍染高校に入学した。
なんの変哲もない、家から近かったから選んだ、ただそれだけの学校だ。
きっとなんの変哲もない、
楽しくも楽しくなくもない三年をここで過ごすんだろう。
そんな考えを巡らせていると、前方で大きな音がした。
女の子が、何かに足を引っ掛けて転んだらしい。
綺麗な栗色の髪をした可愛げな女の子は、顔を真っ赤にしながら
周りを見回した。
幸いにも周りにいるのは僕だけだったから、高校生活初日で
転んだ女の子ってゆうレッテルははられないだろう。僕の中以外では。
そんな事を微笑みながら考えていると、女の子がずんずんと近づいて来る。
「見ました?」
「あぁ、見たよ。」
「私が転んだこと、誰にも言わないで下さいね?」
「あぁ、わかった。僕の中にとどめておくよ。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
「まぁ、僕が約束を守るとは限らないけれど。」
「えぇっ、守ってくださいよ。」
「わかったわかった。守るよ。」
「ふふっ、約束ですよ?あれ、あなたって藍高の生徒ですよね?」
「あぁ、そうだよ。君も?」
「はい、私もです!あ、そうだ。お名前はなんて言うんですか?」
「突然だね。僕の名前は....... 明白 染。......君は?」
「私は、七色 緑っていいます。よろしくお願いしますね?」
「あぁ、よろしく。」
ささやかに通り抜ける春の緑の風が、僕に春の訪れを告げた........ような気がした。