遠い月を見上げて
いつからか、君がそこにいるのが当たり前になっていた。
いつでもそこにいるから、僕はそれを当たり前だと思い込んでいた。
けれどそれは当り前なんかじゃなかったんだよね。
ほんの少し、夢に近付いたはずなのに。
君とはとっても離れたみたい。
近いけれど遠い距離。
おかしいね。
君は何も変わっていないのに。
僕は何も変わらないのに。
距離だけがどんどん遠くなっているみたいだよ。
会いたい。
会いたくない?
ねぇ、君はどう思っているの?
僕は会いたい?
僕は誰に会いたい?
僕の気持ちが分からなくなっていく。
思い浮かべるのは君だけだったはずなのにね。
今では君を含めた想い人だけ。
初恋の人。
好きと言ってくれた人。
そして君。
どうして僕は君だけを思い出せなかったんだろうね。
君はここにいるのに。
君は僕を想ってくれているのに。
僕は君が分からなくなっている?
僕は君が……好き?
不意に思い出すは君。
願いをかけるは初恋の人。
笑えるのは僕を好きと言ってくれた人。
心からの願いが形になれるのは君だけだったはずなのにね。
想いが穏やかなのがこんなにも怖いことだなんて知らなかった。
君への想いが消えてしまったみたいだ。
小さな炎はまだ消えていないのにね。
暖かな光はまだそこに在るのにね。
どうしてこんなにも君を思い出さなくなってしまったのだろう。
君に会いたい。
でも会ったら余計に淋しくなる。
どうしてかな?
君の事、考えなくなってきたのに。
君と会うととっても淋しいんだ。
おかしいよね。
君はそこにいるのに。
君は傍にいて笑っているのに。
君は確かに僕と一緒に居るのに!
どうしてこんなにも淋しいのかな。
君の笑顔が辛いよ。
君の声が聞きたいよ。
君がすごく憎らしいよ。
君がすごく羨ましいよ。
ねぇ、どうして僕だったの?
どうして『私』を選んだの?
どうして『俺』にしてしまったの?
僕は、
『私』は、
『俺』は、
君を思い出して辛いよ。
君は僕を選んだから、
僕は『私』でなくちゃいけなかった。
僕は『俺』でなくちゃいけなかった。
君は優しすぎるよ。
僕の全てが好きだと言ってくれた。
僕は、選んでほしかったよ。
僕が『私』でいればいいのか。
僕が『俺』でいればいいのか。
僕は、『僕』のままで良かったのか。
分からなくなったよ。
君への想いと一緒に迷子になってしまったみたい。
ねぇ、どうしたらよかったのかな……?